【R18】クリーチャー狂騒曲～人外と寝取らせと異形嗜好の饗宴～

３３．気付きたくなかった Side ヘルマン ※

　
　Side　ヘルマン

　先生の家で迎えたミリはどことなく静かに見えた。
　首輪を付けたあと、俯いていた顔を上げて穏やかに微笑んだ顔に、後ろ暗さを見透かされたようでドキリとした。

　イーヴォが奴隷になったことに、ミリがそれに感激したことに、ハンスとダニエルは悔しそうにしてた。僕は眺めていただけだ。僕にはできないことだから。
　僕が奴隷になったって喜ぶとは思えない。そもそもなろうとは思わない。5人の内の1人だけど、主なんだからそれで充分だ。今でさえ、あとで悪いことが起きるんじゃないかと不安になるのに。

　僕の番を静かに待ち、先生の家に行く。ミリの作った食事を食べながら僕の実家の話をした。
　ミリがゆっくりと聞いてくれるし自分の好きなことの話だから、いつもより話せた。お茶のときも同じ。自分の好きなものの話を聞いてもらえるのは嬉しかった。

　兄は家業があまり好きじゃないけど、他の仕事について見習いからやるのは御免だという理由で家業を継いでいた。僕は家業が好きだし、新しい味付けを考えるのが楽しい。小さい頃は兄が家業を継がないと言っていたから、僕が継ぐと言って張り切って手伝いをしていた。
　兄が継ぐと決まると、自分より仕事に慣れている僕が目障りだから家を出ろと言われた。揉めて家の中の雰囲気を壊したくないから、実家から離れてるうえに手っ取り早く仕事に就ける兵団に入った。

　ミリの話す『ヘルマン印』は、子供の頃の夢を思い出させて懐かしい気持ちになった。それに、案外本当にいい考えかもしれない。そう思えるのは楽しい気分だった。

　ミリは笑って僕の体を優しく洗う。僕はミリの体を洗った。僕の手の下のなめらかな体。

　首輪のことを謝った。
　首輪を外してもミリがここにとどまってくれるなんて思えない。結局外すことなんてできやしない。そう思いつつ、自分の後ろめたさを誤魔化したくて謝った。

　ミリは気にしないと言い、僕に口付けをする。楽しそうに笑い6個の目に口付けを。初めてのときと同じ動作が、僕とミリの儀式みたいに思えて胸が高鳴る。
　僕を抱き口に舌を入れてきたミリに、いつ絡ませていいのか迷っていたら舌で誘われた。僕を誘う。僕は誘われる。ミリに舌を吸われて頭が沸騰しそうだった。

　僕の口に入ったミリの指を迷ってから舐めると、ミリから熱い息が漏れて僕に頬ずりをした。

　ミリの体を触りたい。今度は僕が捕食したい。
　背中を撫でると声を上げた。お尻を揉む。ずっと触ってみたかった女性のお尻。つい目で追ってしまって慌てて目を逸らしてた。遠くから眺めることしかできなかった。
　手で揉むと弾力があって気持ち良くて、軽く広げると隠れてる場所が露になって、やらしい。

　我慢できずに舌を這わせる。触りたくても触れなかったお尻を揉んで舐めてると思うと、堪らなく興奮した。口に含みたくて、軽く食いついたらミリが凄く反応する。ミリも気持ち良いのかと思うとますます興奮した。

　ミリが僕の方を向いて座り、足を軽く開く。
　なんて、なんて、こんな格好をするなんて、こんな格好で僕を待つなんて。

　ミリが足を広げて僕の挿入を待つ姿を目に焼き付けた。挿入するとミリが仰け反って懇願する。今度は僕がミリを捕食するんだ。
　ミリが腰を振って僕を飲み込む。やっぱり僕が食べられてるみたいだ。

　僕が出すと、ミリも達したようだった。僕を追いかけて達してるように思えて、胸がジンとする。
　ミリに触れたい。
　僕を信頼して好きにして良いと言った。彼女の体、全部をさわれる。

　今度は僕からミリに口付けをする。ミリの唇に触れると柔らかくて、舌を差し込むとすぐに絡みついてきた。
　口付けを交わしていると、僕のペニスがウズウズし、ミリの中がピクピクしてきた。

　腰を動かしながら、目をつぶり気持ち良さに揺蕩っているようなミリを見る。目を開けたミリの潤んだ目が僕を見る。
　ミリが僕を欲しがる。僕を男として見てる、

　血が沸き立つような喜びと陶酔。腰を滅茶苦茶に振ってミリの中を掻き回し、また2人で絶頂した。

　ミリに抱きしめられてじっとしていると、胸が暖かくなる。ミリが気に入ってくれたこの体も悪くないと思えた。

　あまり遅くなるのも悪いので体を起こし、体を洗いに行くとミリが手を繋いできた。
　体を洗うと僕を拭いてくれる。
　僕を優しく、甘やかしてくれる人。僕を男にしてくれる人。口付けをくれる、僕と舌を絡めて抱き合う人。


　ダニエルがミリの体を傷付けた。
　あの柔らかくて優しい体を傷付けるなんて、なんでそんなことができるんだろう。同意があったって酷いことに変わりない。大事な気持ちを踏みにじられた気分だ。

　ミリはやっぱり笑ってるのだろうか。ダニエルを許すのだろうか。傷付いているなら優しくしたい。そうしたら僕のことを少しでも好きになってくれるかもしれない。

　僕はどうしたらミリに振り向いてもらえる？　ミリはお金を貯めて自分を買い取るんだろうか。買い取ったらいなくなる？　みんなを捨てて、僕を捨てて。

　僕を側に置いてくれないかな。
　5人のうちの1人で良い、他に誰がいたって構わない。たまにでいい、僕に振り向いて触らせてくれるなら。

　僕の手の下で声を上げる柔らかな体を思い出して、次に会える日を楽しみに待つ。こんなふうに楽しみを待つのは子供のとき以来だ。浮き立つような幸福も。またミリに触れられることを思うとゾクゾクした。

　ミリは僕の今の体が好きみたいだ。肉の感触が気持ち良いと何度も言う。もし、解呪されて元の僕に戻ったらどうなるかな？　彼女の好きな体がなくなった僕はどう思われるんだろう。元の僕の小さな目は好きになってもらえるだろうか。僕はまた、石ころに戻ってしまう？

　悪い想像に寮の布団の中で震えた。
　解呪師はこない。来る話なんて聞かない。まだ大丈夫。僕は彼女の獲物でいられる。どうか彼女との関係が長く続きますように。

　呪い付きでも呪い付きじゃなくても、彼女の首輪を外すことはできない。僕はそんなことできない。

　ダニエルと同じだ。ダニエルは体を傷付けて僕は気持ちを傷付ける。

　こんなこと気付きたくなかったのに。