俺にヒロインは訪れない

流風

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深夜の来訪者

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 昭和の日本。起源町という田舎町の少し郊外にある丘に希星すばるという青年が母親と一緒に住んでいた。 山師の仕事をしながら細々と暮らしていた希星すばるは、彼女いない歴=年齢という、青春を謳歌したくてたまらない24歳の青年だ。

 夜10時頃。そろそろ眠りにつく人達も出始める時間。
 周りに人家がないため、今日も静かな夜だった。田舎町の郊外に住む希星すばるの耳には、普段なら田んぼから聞こえる虫の音だけが聞こえてくるだけだ。


 ジーーーーーーーーーーーーーーーーー


 仕事も終え風呂も入り、肉体労働で疲れた体を休ませようと希星すばるが眠っている時だった…。
 今日も何の虫か未だにわからないが、ジーという虫の音を聞きながら希星すばるが寝ていると……………。


 ピカーーーーッ! ドーーーーンッ!!!


 凄まじい光と地面が揺れる程の轟音が響き渡り、希星すばるは飛び起きた。最初は近くで雷でも落ちたのかと思った。しかし、雨は降っていない。今日は晴天だった筈だ。

 慌てて外を見てみると、近くの山から細く煙が上がっている。

 母親に様子を見てくると伝え、希星すばるは麓の集落へと走った。そこでも住民が集まって情報交換が行われていた。そこで聞いた話によると、どうやら近くの山に隕石が落下したらしい。

 その隕石を見ようと、すでに何人かの住民が山へと向かっているようだ。希星すばるも隕石を見てみようと野次馬根性で山へ向かうが、役場の職員達が危険だからと山への入り口を封鎖しており、希星すばるは近づく事ができなかった。


 仕方なく家に帰り、再び眠ろうとした所で、ドアを『ドンドンッドンドンッ』と叩く音と『おい!希星すばる!』と叫ぶ声が響き渡った。
 希星すばるは心配顔で部屋から顔を覗かせている母に「大丈夫だから寝てて」と声をかけ、溜息を吐きながら玄関へと向かった。

 玄関には近所の龍太が怖い顔をして仁王立ちしていた。

「てめぇ!なんでとっとと出てこねぇんだよ!」

 小柄で童顔な希星すばると違い、縦にも横にも大きな龍太。希星すばるの幼なじみであり、起源町一の金持ちである龍太の父に、希星すばるの父は多額の借金をしていた。子供の頃はそれが原因で龍太の奴隷のような扱いを受けていた。3年前に借金は返済したが、今でも龍太の横柄な態度は続いており、また、希星すばる自身も龍太へ逆らう気力が湧かずにいた。

「おい!龍二が隕石を見に山に行ったまま帰ってこないんだ!お前、探しに行け!!」

 今は深夜2時前。丑三つ時と言われる時間帯だ。
 そんな時間に山に行け。いやいや、怖すぎるだろう。すでに山に様子を見に行ってた人達も帰宅している。断りたかったが、

「龍二が心配じゃないのか?!早く行けよ!!」

 ガンッと壁を殴る龍太。ガキ大将がそのまま大人になったような龍太を宥める事も諦めさせる事も難しい。このままだと、自分も母も眠る事ができない。
 仕方ないと諦め、希星すばるは山へと龍二を探しに行く事にした。
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