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ニュース
しおりを挟む「本日のニュースです。6日前より行方不明になっている橘優香さん(17歳)の消息は未だわかっておらず、警察は情報提供を呼びかけています」
「顔写真付きのチラシも配り探しているようですが見つからないみたいですね。心配ですね」
「はい。行方不明時の服装はわかりませんが、優香さんは丸い形のメガネをかけたショートボブの女の子だそうです」
「何か情報をお持ちの方はぜひ警察に連絡してください。しかし、心配ですねぇ」
「ええ、何か事件に……」
ぷつんっ
テレビの電源を消し、急足で玄関へと向かう。靴を履く前に一度立ち止まり、鏡でもう一度自分の身だしなみをチェックし、朱理は納得したように頷いて玄関のドアを開けた。
◇
「いらっしゃいませ」
大学卒業後、銀行に勤め始めた井上朱理26歳。毎日真面目に金融業務を行い、定時には帰る。
肩下までの黒髪を首の後ろで一つに結び、平凡な日本人顔で大人しい性格。決して目立つタイプの女性ではない。
「103番の方、お待たせしました」
受付番号を確認し、カルトンに通帳とお金を乗せて渡す。
客からの返事はなく、一方的な言葉と対応で淡々と業務をこなして行く。
「ありがとうございました」
地味で面白味のない女。朱理は自身でもそれを理解していた。
15時を過ぎ、窓口業務を閉めて現金を合わせる。
「課長、現金合いましたので検印お願いします」
「おう、ごくろうさん」
検印ももらい、一息ついた所で喉の渇きを覚え給湯室へ。するとそこには朱理が思いを寄せる小林大志が同僚とコーヒーを飲みながら立ち話をしていた。
「小林も結婚かぁ。いいなぁ」
「ば~か。結婚したら小遣い生活だぜ。俺、今月もう懐が寂しい…。小林ももうすぐこの思いを味わうのか」
「おいおい、俺は今から幸せ新婚生活を迎えるんだよ。そんな現実を言うなよ」
「はっはっはっ!悪りぃ悪りぃ。ラブラブ新婚さんは夢だけ見とけ」
男性職員3人が、仲良さげにしている何気ない会話。
はははっと笑いながら去って行く3人を、隠れて静かに見送る朱理の心は荒れに荒れていた。
「結婚…?大志さんが…?何故…?」
朱理と大志が付き合っているわけではない。ただ一方的に朱理が大志に思いを寄せているだけ。
それでも、朱理は大志が自分のことを好きになると信じていた。真面目で堅実。料理もする自分は結婚相手には向いているし、大志はいつも朱理に優しくしてくれる。ただ単に大志が女性に対して腰が低いタイプの男なだけで、朱理に特別に優しかったわけではない。それでも朱理は想ってしまった。夢想してしまった。大志との未来を。
朱理は自分から告白するタイプではない。朱理なりに努力し、大志に接触して向こうから告白するようしむけている……つもりだった。
(どうして…?私の大志さんが…)
自分のモノにならなかった…?いや、まだだ。とりあえず、相手の女を調べてみよう。
静かに、怒る朱理。
嫉妬、妬み、嫉み。それらが力になるのなら、今の朱理は人だって殺せる。そんな勢いだ。
許せない。こうなった朱理は最恐だった。
情報社会。個人の特定などネットですぐに晒されてしまう社会だが、銀行に勤める朱理にはそんな事をしなくても名前さえわかれば職場の端末で住所も生年月日もすぐにわかる。
(河野菜緒、25歳の看護師か)
この女が大志を誑かした女。どうする?どうすれば大志がこの女より私の方が良い女だって気づく?
「とりあえず、SNSに書き込むか」
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