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【失礼な人】
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・【失礼な人】
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村、と言われれば村のような気がする。
そんな雰囲気のあるところに僕は連れられて来た。
コンクリートのような道は勿論、道というような場所も無く、全て雑草が生い茂った地面。
建物はまだ木でしっかり作っているイメージだけども、周りには庭というか畑の類は無くて、この地で人が永住しているようには感じられなかった。
まるで登山のキャンプ地のように、一過性でここにいます、みたいな感じがした。
でも確かに結構な人がそこにいるみたいで、木陰で寝ている人や闘う練習をしている人などがちらほらいる。
しかしながら全体的に活気は感じられず、唯一活気があるのは、看板にベッドのマークが描いてある、多分宿屋さんだけだ。
そんな村の様子をしっかり観察できるようになったのも、ナッツさんがその場に立ち止まったからだ。
ナッツさんは村をキョロキョロし、何か困った顔をしている。
どうしたのだろうか、と聞きたいところだけども声が出ない。
変なことを言ってナッツの機嫌を損ねたら大変だと思ってしまって。
僕の腕を引っ張りながらまた歩き出したナッツさんは、新しい家を建てている人たちのところへ近寄っていって、家を建てている一人の男性、僕よりはだいぶ年上だけどもまだ十代くらいの男性に、
「クラッチさんはどこですか?」
と聞くと、その家を建てている一人が、う~んと悩みながら、
「今日はクラッチ見ていないな、どこ行ったんだろう?」
そう答えるとナッツさんはあからさまにショックを受けたような顔をし、
「どうしよう! クラッチさんがいないとケガが治らないよ! 痕になっちゃうよ! 背中!」
どうやらそのクラッチさんは医者らしく、ケガを治してくれる人らしい。
その家を建てている男性が僕のほうを見ながら、
「誰だこのヒョロヒョロな雑魚は、もしかするとデカ蜂に刺されたのか? ハッハッハ! ドンクサいバカだなぁっ!」
と言って笑った。
あまりにも失礼なことを言われたので、落ち込んでいると、ナッツさんが僕の肩を叩きながら、
「ドンマイ!」
満面の笑みでそう言った。
いやどうせならもっといろいろ慰めてほしいけども、とか思った。
家を建てている男性はさらにこう言った。
「まあ痕になるだけで、それ以外の害は無いし、まあバカの証ってことでいいんじゃないか?」
何でこの人はこんなに嫌なことをハキハキと言うのだろうか……どうなっているんだ、僕の夢は。
夢って自分の写し鏡のようなモノだから、僕は人に対してこういうことを言いたいってことなのかな?
そんなことを考えていると、ナッツさんはまた僕の腕を引っ張って、
「ここにいても嫌なこと言われるだけだから、私の家に行こう」
と言うと、すかさず男性が、
「男の子連れ込んで何する気だよ! バカなことはするんじゃねぇぞ!」
そう下品に笑った。
周りの、一緒に建物を建てている人たちも笑っている。
良く分からないけども何か嫌な感じだなぁ、と思いつつも、僕はナッツさんに引っ張られるまま、歩いていった。
そして多分ナッツさんの家だろうというところに二人で入っていった。
どうやら靴は玄関で脱がないらしく、そのまま家の中へ。
テーブルのほうに促されて、イスに座った。
「さてと! 私はナッツ! 君は誰なのっ? どこから来たのっ?」
僕と対面する席に座ったナッツさんは不可思議そうな顔をしながら、僕に質問してきた。
名前を言うだけ、名前を言うだけなら、と、心の中で強く念じて僕は
「タケル……」
と答えた。
するとナッツさんはすごく嬉しそうに口角を上げて、
「タケルね! よろしく! タケル! 私はナッツ!」
そう言って手をチョキにして、僕のほうに手を出してきた。
そういう握手なのかなと思って、僕も手をチョキにして手をナッツさんのほうに出すと、
「いやそんなチョキチョキ握手なんてないよ! これは私からのジョークの花束!」
そう言うと僕のチョキを優しく手で包んで握手のような揺れをした。
あっ、ボケだったんだ、とその時に分かった。
というかこのナッツさんって、すごくボケてくるなぁ。
全部ツッコめればいいんだけども、でも僕は引っ込み思案で、とか考えていると、
「で! どこから来たのっ? ヒガシーン? キッタク? ニシシ? それともミナナミン?」
どれも知らない地名? いやもう地名なのかどうかも分からない。
というか、えっと、どう答えればいいのかな、夢だろうから……いや、本当に夢なのかな。
このズキズキじんじんする背中に、嫌なことを言われた時の心のモヤモヤ感。
どれも現実のような痛みを感じている。
でも夢じゃないのならば何という話だ。
もしかすると僕はファンタジー・ゲームの中に入り込んだということ?
いやそんなことあるはずない。
あるはずない、と思いたい。
だって。
だって。
と思っていると、段々僕は頭がクラクラしてきた。
あぁ、眠るんだと思った、否、目覚めるんだと思った。
ここで夢がボヤけていって、朝になって、ベッドの上で目覚めるんだ、と思った。
やっぱり夢だったんだ。
変な夢だったなぁ。
・【失礼な人】
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村、と言われれば村のような気がする。
そんな雰囲気のあるところに僕は連れられて来た。
コンクリートのような道は勿論、道というような場所も無く、全て雑草が生い茂った地面。
建物はまだ木でしっかり作っているイメージだけども、周りには庭というか畑の類は無くて、この地で人が永住しているようには感じられなかった。
まるで登山のキャンプ地のように、一過性でここにいます、みたいな感じがした。
でも確かに結構な人がそこにいるみたいで、木陰で寝ている人や闘う練習をしている人などがちらほらいる。
しかしながら全体的に活気は感じられず、唯一活気があるのは、看板にベッドのマークが描いてある、多分宿屋さんだけだ。
そんな村の様子をしっかり観察できるようになったのも、ナッツさんがその場に立ち止まったからだ。
ナッツさんは村をキョロキョロし、何か困った顔をしている。
どうしたのだろうか、と聞きたいところだけども声が出ない。
変なことを言ってナッツの機嫌を損ねたら大変だと思ってしまって。
僕の腕を引っ張りながらまた歩き出したナッツさんは、新しい家を建てている人たちのところへ近寄っていって、家を建てている一人の男性、僕よりはだいぶ年上だけどもまだ十代くらいの男性に、
「クラッチさんはどこですか?」
と聞くと、その家を建てている一人が、う~んと悩みながら、
「今日はクラッチ見ていないな、どこ行ったんだろう?」
そう答えるとナッツさんはあからさまにショックを受けたような顔をし、
「どうしよう! クラッチさんがいないとケガが治らないよ! 痕になっちゃうよ! 背中!」
どうやらそのクラッチさんは医者らしく、ケガを治してくれる人らしい。
その家を建てている男性が僕のほうを見ながら、
「誰だこのヒョロヒョロな雑魚は、もしかするとデカ蜂に刺されたのか? ハッハッハ! ドンクサいバカだなぁっ!」
と言って笑った。
あまりにも失礼なことを言われたので、落ち込んでいると、ナッツさんが僕の肩を叩きながら、
「ドンマイ!」
満面の笑みでそう言った。
いやどうせならもっといろいろ慰めてほしいけども、とか思った。
家を建てている男性はさらにこう言った。
「まあ痕になるだけで、それ以外の害は無いし、まあバカの証ってことでいいんじゃないか?」
何でこの人はこんなに嫌なことをハキハキと言うのだろうか……どうなっているんだ、僕の夢は。
夢って自分の写し鏡のようなモノだから、僕は人に対してこういうことを言いたいってことなのかな?
そんなことを考えていると、ナッツさんはまた僕の腕を引っ張って、
「ここにいても嫌なこと言われるだけだから、私の家に行こう」
と言うと、すかさず男性が、
「男の子連れ込んで何する気だよ! バカなことはするんじゃねぇぞ!」
そう下品に笑った。
周りの、一緒に建物を建てている人たちも笑っている。
良く分からないけども何か嫌な感じだなぁ、と思いつつも、僕はナッツさんに引っ張られるまま、歩いていった。
そして多分ナッツさんの家だろうというところに二人で入っていった。
どうやら靴は玄関で脱がないらしく、そのまま家の中へ。
テーブルのほうに促されて、イスに座った。
「さてと! 私はナッツ! 君は誰なのっ? どこから来たのっ?」
僕と対面する席に座ったナッツさんは不可思議そうな顔をしながら、僕に質問してきた。
名前を言うだけ、名前を言うだけなら、と、心の中で強く念じて僕は
「タケル……」
と答えた。
するとナッツさんはすごく嬉しそうに口角を上げて、
「タケルね! よろしく! タケル! 私はナッツ!」
そう言って手をチョキにして、僕のほうに手を出してきた。
そういう握手なのかなと思って、僕も手をチョキにして手をナッツさんのほうに出すと、
「いやそんなチョキチョキ握手なんてないよ! これは私からのジョークの花束!」
そう言うと僕のチョキを優しく手で包んで握手のような揺れをした。
あっ、ボケだったんだ、とその時に分かった。
というかこのナッツさんって、すごくボケてくるなぁ。
全部ツッコめればいいんだけども、でも僕は引っ込み思案で、とか考えていると、
「で! どこから来たのっ? ヒガシーン? キッタク? ニシシ? それともミナナミン?」
どれも知らない地名? いやもう地名なのかどうかも分からない。
というか、えっと、どう答えればいいのかな、夢だろうから……いや、本当に夢なのかな。
このズキズキじんじんする背中に、嫌なことを言われた時の心のモヤモヤ感。
どれも現実のような痛みを感じている。
でも夢じゃないのならば何という話だ。
もしかすると僕はファンタジー・ゲームの中に入り込んだということ?
いやそんなことあるはずない。
あるはずない、と思いたい。
だって。
だって。
と思っていると、段々僕は頭がクラクラしてきた。
あぁ、眠るんだと思った、否、目覚めるんだと思った。
ここで夢がボヤけていって、朝になって、ベッドの上で目覚めるんだ、と思った。
やっぱり夢だったんだ。
変な夢だったなぁ。
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