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【13 ガガくんのこと】

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・【13 ガガくんのこと】


 体力測定の七不思議を探すため、私たちはとりあえず外に出ることにした。
 体力測定の七不思議は神出鬼没だけども、必ず外、つまり校舎の周りにいるらしい。
 玄関へ行くまでの道中はみんな少しゆっくり歩いている。
 まあ体力回復もしないといけないからね。
 そうだ、ゆっくりついでにちょっと聞いてみたいことがあるから、私はガガくんに質問することにした。
「ガガくんって何で自分磨きしているのっ?」
「元々は後悔からだぜ! 人間の時は自分のこと好きになってあげられなかったから、こうあやかしになったらもう自分磨きしまくろうと思ったからだぜ!」
「そっか、元々は自信の無い子だったんだね」
「そうだぜ! でもそれは昔の話だぜ! 今の我は最高潮だぜ! 常にクライマックスだぜ!」
 壁太郎くんは何だか感心しながら、
「そんなに自信あるの羨ましいべ」
 それに対してガガくんが、
「自分を愛せば意外と簡単だぜ! だって我はカッコイイし、鍛えているから能力も高いし、客観的に見て最強だぜ!」
「それが言えないんだべ」
「まあ確かに自信の無いヤツは何でも劣って見えてるだろうと思うぜ、自分自身に対して、だぜ? でも壁太郎の瞬発的な壁の作りは最高だったぜ。あんなんされたら難しいぜ! まっ、三対一だったからだぜ! 一対一なら負けないぜ!」
 そう自信満々に言い放ったガガくん。
 この強気はすごいと思うけども、私だって負けられない。
 私もあの日以来、ずっと強気でいくことにした人間だから。
 気の強さでは負けない!
「私だって最強なんだから! 何だかガガくんとは話がより合いそうだよ! 勿論壁太郎くんともトースくんともだけどね!」
 すると壁太郎くんが俯きがちに、
「そんな気を回さなくていいべ」
 と言い、トースくんは首を優しく横に振ってから、
「いいや! 俺は二人と同じ強気組に入りたいと思います!」
 と高らかに宣言した。
 壁太郎くんは少々慌てながら、
「僕だけやっぱり馴染めないかもしれないべ……」
 と言ったので、私は壁太郎くんの肩を叩いて、
「大丈夫! いろんな個性があることがいいことだから! その壁太郎くんの自分を疑いながら進むこともいいことだと思うよ! そもそも自分のことを疑うからこそ努力できるという一面もあるからね!」
 それに対しガガくんは「おっ」と驚いてから、
「なるほどだぜ! 自分を信じる努力も自分を信じない努力もあるというわけだぜ! ということは我と対極にいる壁太郎こそ実は最大のライバルかもしれないぜ!」
 トースくんは挙手しながら、
「いいや! 自分が好きな俺とライバルかもしれないですよ!」
 ガガくんはチッチッチッと人差し指を揺らしながら、
「我が一番自分自身のことが好きなのは百パーセント確定だぜ! つまりナルシスト派閥の頂点は我だからその路線は我の圧勝だぜ!」
 私は「あっ」と口に漏れ出てから、
「ハッキリとナルシストって口にするんだっ」
 と言うと、ガガくんはニカッと笑ってから、
「当然だぜ! ナルシストは最高だぜ!」
 そう言い切るガガくんは確かに最高だった。
 するとトースくんが、
「俺だって自分最高派閥の頂点を目指しますよ! 少なくても発想分野なら負けません!」
「なるほどだぜ! 分野ごとに勝負されると確かにまだ分からないぜ!」
 ガガくんって自分自分と思いきや、結構柔軟に認めてくれるなぁ、と思った。
 それこそも最強である自分の余裕といった感じがしてカッコイイと思った。
 玄関にも着いたので、靴に履き直して、外へ出た時に、あっ、靴底磨いてくれなくても良かったと思ったけど、まあまた校舎の中に入るかもしれないしっ、とも思った。
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