最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第5章 アグトリア動乱

ビヘイブ攻防戦

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ヌエド軍は8月9日の午後2時にトリガードより出撃した。

先鋒のマグリオの部隊を先頭にしてビヘイブ村に向けて進んでいった。

ヌエド軍はワイツ砦周辺まで進んだ所でその日の夜は夜営を張った。

西岸に入ったのは8月10日の午前7時頃であった。

ヌエド軍はワイツ橋より西岸に侵入したが、ドロメ盗賊軍の攻撃を受ける事は無かった。

そのままヌエド軍は何の妨害も受ける事なく先鋒マグリオの部隊が午前10時にビヘイブ村の土塁に到達した。

後続部隊も続々と到着してビヘイブ村を包囲していった。

ヌエド軍の陣容は以下の通りである。

先陣のマグリオは1500人を率いていた。

第二陣のバギデが2000人を率いていた。

第三陣のブリンガフが1500人を率いていた。

第四陣のヌエドは2500人を率いていた。

第五陣のミレピオは1500人を率いていた。



第一から五陣の部隊でビヘイブ要塞を半包囲して、第六陣のメルクンガ1300人と第七陣のヴィスパの部隊3000人は後方に待機していた。

8月10日の夕刻となった。

ヌエドが指揮する部隊はビヘイブ村の南側に布陣していた。

ヌエドは陣地の中からビヘイブ村を囲むようにつくられた土塁を遠目にみながら呟いた。

「よくもまあこんな短期間にあれだけの土塁を造ったものだな。」

ヌエドの所にマグリオがやって来た。

マグリオがヌエドに言った。

「ヌエド様。」

ヌエドはマグリオに気がつくとマグリオに尋ねた。

「マグリオか?各部隊の状況はどうなっている?」

マグリオがヌエドに言った。

「はっ!全ての部隊が所定の位置に到着致しました。」

ヌエドがマグリオに尋ねた。

「そうか、ドロメに動きはあったか?」

マグリオがヌエドに言った。

「いえ、依然として動きはありません。攻撃を受けたとの報告も入っておりません。」

ヌエドがマグリオに言った。

「やはりドロメはビヘイブに籠城するつもりのようだな。」

そこにヌエドの部下がやって来た。

「ヌエド様、メルクンガ殿とヴィスパ殿が参られました。」

ヌエドが部下に言った。

「そうか、ご苦労。」

ヌエドがマグリオに言った。

「マグリオ、みなを集めてくれ。」

マグリオがヌエドに言った。

「はっ!」

ヌエドの指示によってヌエドの陣に諸将が集められた。

ヌエドの陣地の中に大きな机と人数分の木製の椅子が用意されており、諸将はそこに腰をかけた。

ヌエドは諸将が集まったのを確認すると大きな声でみなに言った。

「ドロメはあの高い土塁の中に籠って我々を待ち受けている。土塁の中に籠ってワイツの借りを返そうとしているのだ!」

マグリオがみなに言った。

「土塁は高く掘は想像以上に深い。あれだけ強固な造りですと力攻めは愚策ですな。ここはやはりメルクンガ殿の策でドロメを誘い出して叩くべきでしょう。」

ヌエドがマグリオに言った。

「うむ、そうだな。」

ヌエドがみなに言った。

「当初の予定通りメルクンガ殿の策でいこうと考えている。方々はいかがであろうか?」

するとマグリオがヌエドに言った。

「ヌエド様?一つ提案があるのですが宜しいでしょうか?」

ヌエドがマグリオに尋ねた。

「なんだ?」

マグリオがヌエドに言った。

「明日の戦いの先陣をバギデ殿にお任せしようと思うのですが?」

ヌエドがマグリオに言った。

「先陣をバギデ殿に譲ろうと言うのか?」 

マグリオがヌエドに言った。

「はいその通りでございます。」

ヌエドがマグリオに尋ねた。

「マグリオ?なぜ先陣を譲ろうと考えたのだ?」

マグリオがヌエドに言った。

「さきほどビヘイブ要塞の土塁を確認してまいりました。すると他の場所よりも土塁の高さが低くなっている場所がございました。」

ヌエドがマグリオに聞き返した。

「ほう?低い場所があるのか?」

マグリオがヌエドに言った。

「はい、南東にある土塁が他より低くなっておりました。」

ヌエドがマグリオに言った。

「なるほど。ちょうどバギデ殿に担当してもらっている場所の目の前だな。だからバギデ殿に先陣を頼もうと考えたのか?」

マグリオがヌエドに言った。

「はいその通りでございます。」

ヌエドがマグリオに言った。

「あい分かった。だが肝心のバギデ殿の意見を聞かねばなるまい?」

ヌエドがバギデに尋ねた。

「バギデ殿?この戦いを先陣をお任せしたいが宜しいか?」

バギデがヌエドに言った。

「もちろんでございます。先陣を務めさせて頂けるのならばこれほどの栄誉はございません。ですがマグリオ殿を差し置いて先陣を務めても宜しいのですか?」

ヌエドがバギデに言った。

「バギデ殿の勇猛さは聞き及んでおります。そのような事を気になさる必要はありません。」

バギデがヌエドに言った。

「身に余る光栄にございます。ヌエド様の名に恥じぬ戦いをしてまいります。」

ヌエドがみなに言った。

「ではバギデ殿を先陣とする。みなそれで宜しいか?」

諸将が賛成を表明した。

「構いませぬ。」

「意義ありません。」

だがヴィスパだけが反対をした。

「ヌエド様、承服できませぬ!!」

ヌエドがヴィスパに言った。

「賛成してもらえぬか?ヴィスパ殿?」

ヴィスパがヌエドに言った。

「無論です。このような奴を先陣にするなど許せませぬ!断じて反対でございます!」

ヌエドがヴィスパに尋ねた。

「もしやヴィスパ殿も先陣を望まれるのか?」

するとヴィスパが慌てて首を横に振りながらヌエドに言った。

「先陣などとんでもございません!!現在の後方の配置で満足でございます。我が部隊の配置場所については何の不満もございません。」

ヌエドがヴィスパに尋ねた。

「ではヴィスパ殿?どの点が不満なのだ?」

ヴィスパがヌエドに言った。

「つまりマグリオ殿のままで良いという事です。」

マグリオがヴィスパに言った。

「ヴィスパ殿?バギデ殿の方が私よりも勇猛な戦いをされる。そして私は先陣をバキデ殿にお譲りする事に納得しております。お気遣いは無用でございます。」

ヴィスパがマグリオに言った。

「バギデはなりませぬ!!」

ヌエドがヴィスパに尋ねた。

「ヴィスパ殿?マグリオは了解しているし、問題はないと思うのだが?何か他にバギデ殿ではダメな理由があるのなら教えて貰えぬか?」

だがヴィスパは理由を言わずにただバギデの先陣を拒否し続けた。

「バギデのようなガサツな奴に任せてはダメなのです。こんな奴では失敗するに決まっています!!」

するとブリンガフがヌエドとマグリオに言った。

「ヌエド様、マグリオ殿!!ヴィスパに深い思慮なんてもんはありません!どうせバギデ殿が武功を上げるのが気に食わないだけです。俺やバギデ殿はワイツの戦いに参加しておりますからな。これ以上武功で差がつくのが我慢ならんのでしょう。」

ヴィスパが慌ててブリンガフに言った。

「そんな事はないわ!」

ブリンガフがヴィスパに言った。

「だったらなぜ反対する?さっさとその訳を教えろ!!さっきからヌエド様も聞かれてるだろうが?バギデ殿に反対する理由をな!!」

ヴィスパは黙り込んでしまった。

ブリンガフがヴィスパに大声で言った。

「何にも言えないって事は図星って事か?!!」

少しの沈黙の後でヴィスパがブリンガフに言った。

「バ、バギデの部下達はみな腹を壊しておるのだ!!」

ブリンガフがヴィスパに大声で言った。

「はあっ???」

ブリンガフが笑いながらヴィスパに言った。

「みんな腹を壊してるだあ?なんだその理由はよ?!!テメエは腹を壊してる言えばなんでも納得して貰えると思ってんのか!!」

ブリンガフがバギデに尋ねた。

「バギデ殿?ヴィスパはこんな事を言っておりますが、その事実はございますか?」

バギデがブリンガフに言った。

「いや、先ほど部下達と会ってきたときは特に問題はなかった。」

ブリンガフが笑いながらヴィスパに言った。

「だとさ、いやー、頭が溶ろけてる奴は言う事が違うな!!すごいお溶ろけ具合だな!!壊れてんのはテメエの頭の方だろうが!!」

ヴィスパは怒りに震えていた。

ヴィスパがブリンガフに言った。

「バギデの奴が嘘を言っておるのだ!!そうだ!!そうに決まっている!!バギデの嘘つきめ!!」

バギデは何も言わずに黙って聞いていた。

ブリンガフがヴィスパに大声で言った。

「おい!!お溶ろけ野郎!!もうその辺にしとけ!!」

だがヴィスパは大声で言い続けた。

「バギデ!!この嘘つきめが!!私に恥をかかせた大嘘つきめが!!本当にどうしようもない奴だ!!」

ブリンガフがヴィスパに大声で言った。

「いい加減にしやがれ!!自分は先陣をする度胸もないくせに、バギデ殿を貶す事ばかり言いやがって!!くだらない嘘についた上にバギデ殿を嘘つき呼ばわりか!!お溶ろけ野郎!!テメエは頭がぶっ壊れてんだからもう何も言うな!!」

ヴィスパがブリンガフに大声で言った。

「お前こそ何なんだ!!!事あるごとに私の悪口ばかり言いおって!!私をいじめてそんなに楽しいか!!このひねくれ者が!!」

ヌエドがヴィスパとブリンガフに大声で言った。

「二人ともやめられよ!!!」

ヌエドがヴィスパに言った。

「ヴィスパ殿、こたびはお言葉が過ぎますぞ!!礼を欠いている言わざるおえません!!」

ヌエドがブリンガフに言った。

「ブリンガフ殿も落ち着かれよ。怒りに任せて発言していては話し合いなど到底できませぬぞ!」

ヌエドの発言によって二人とも矛をおさめた。

しばらくの沈黙が続き、二人は冷静さを取り戻した。

一方のバギデ自身は何も言わずにずっと冷静さを保っていた。

ヴィスパがヌエドに言った。

「申し訳ありません。ヌエド様?」

ブリンガフがヴヌエドに言った。

「失礼しました。ヌエド様。」

ヌエドが再びヴィスパに尋ねた。

「ではヴィスパ殿?改めて伺うが、先陣をバギデ殿にする事に異存ございますか?」

ヴィスパが諦めた様子でヌエドに言った。

「いえ、何もありません。承知しました。」

ヴィスパが折れた事で先陣はバギデが務める事となった。

ヌエドがみなに尋ねた。

「他に何か意見はありますかな?」

諸将は首を横に振った。

ヌエドがみなに言った。

「では軍議はこれで終了でございます。」

ヌエドがみなに言った。

「それでは皆様方!!お頼み申します!!必ずやドロメを討ち果たそう!!」

諸将がヌエドに答えた。

「おう!!」

諸将はすぐに自分の陣地へと戻っていった。

翌日の8月11日夜明けを迎えた。

こちらはバギデの部隊である。

先陣を任されたバギデが部下達に声を張り上げていた。

「良いか!我々が先陣を仰せつかった。我らの手でドロメを打ち倒すぞ!!」

部下達がバギデに言った。

「おおー!!」

バギデが大きな槍を振りかざして号令を出した。

「よしー!!行くぞー!!」

バギデを先頭にしてバギデの部隊が前進を始めた。 



バギデの部隊は南東にある土塁が低くなっている場所から要塞内に侵入を果たすべく土塁に向けて前進を開始した。

一方のドロメ盗賊軍の守備兵達は土塁の上で防衛態勢を取っていた。

土塁に近づいてくるバギデの部隊に対して弓を構えていた。

ドロメ盗賊軍の守備兵の一人が大声で言った。

「裏切り者共を土塁に近づけるな!!放て!!」

その守備兵の号令と共に土塁の上から激しい弓矢での反撃が始まった。

バギデの部隊は構わずに土塁にめがけて進んでいく。

そして土塁の上から矢の雨がバギデの兵士達の頭上に降り注いだ。

何人もの兵士達が矢が刺さり倒れていった。

だがバギデとバギデの部下達は矢の雨が降り注ぐ中を進んでいった。



バギデとその部下達は土塁の外に設けられている空堀まで接近すると、堀の中に下りていった。

すると土塁の上にいるドロメ盗賊軍の守備兵達は弓矢に加えて投石による攻撃も始めた。

土塁の上にいるドロメ盗賊軍の兵士が空堀の中にいるバギデの部下達にめがけて容赦なく大きな石を落としてった。

落とされた石が直撃した兵士は次々に倒れていった。

堀に下りたバギデの部下達が怯え出した。

するとバギデが大声をあげた。

「みな臆するな!!一気に土塁の上まで駆け上がるぞ!!」

バギデの部下達が大声で答えた。

「おおーー!!」

バギデが先頭に立って土塁を登り始めた。

バギデの部下達も急斜面の土塁を登り始めた。

すると土塁の上にいるドロメ盗賊軍の兵士達が上から油を流し始めた。

かなりの量の油が流されて、土塁の斜面はすぐに油で覆われてしまった。

ただでさえ登りにくい急斜面に大量の油がまかれて、土塁の上まで登るのは困難を極めた。

バギデは先頭に立って土塁の急斜面を登ろうとしていたが、大量の油によって手足が思うように動かせずにその場で止まってしまった。

そして上からの投石をかわそうとした時に足を滑らせて堀の下まで転げ落ちてしまった。

バギデはすぐに立ち上がり、再び油まみれになった土塁の急斜面を登ろうと試みた。

だが結果は同じだった。

バギデは何度も急斜面を登ろうと試みたが、その都度油に阻まれて空堀の下に転げ落ちてしまうのだった。

バギデが土塁の斜面に悪戦苦闘している間にも、土塁の上から絶え間ない弓矢と投石の攻撃が続き、どんどんバギデの部下達が倒れていった。

時間だけが流れていった。

するとバギデの元に部下がやってきた。

「バギデ様、この急斜面は想像以上に厄介です。このままではこの斜面を突破する前に我々が全滅してしまいます。ここは一旦引くべきかと?」

これを聞いたバギデが大きく悔しがった。

「ええいー!せっかくヌエド様より先陣の栄誉を頂いたというのに!!」

バギデの部下がバギデに言った。

「バギデ様!名誉挽回の機会ならば、いずれ訪れましょう。ですがここで全滅してしまってはその機会すら無くなります!どうか後退のご命令を!」

バギデが周囲を見渡した。

そこには動かなくなったバギデの部下達の屍が何人も転がっていた。

バギデは冷静になり部下に言った。

「そうだな、分かった!ここは引く。あとはヌエド様にお任せするとしよう!」

バギデが大きな声で指示を出した。

「みな引くぞ!!」

バギデはビヘイブ要塞の攻略を諦めて後退命令を出した。

バギデの号令と共にバギデの部下達が後退していった。

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