最強勇者の物語2

第5章 アグトリア動乱

義賊

今日はパルゲア歴752年7月17日である。

首都アグトリアの北部にあるストレア教区は、アリエル・ジフロルが率いるジフロル盗賊団の勢力圏であった。

他の盗賊団と比較してジフロル盗賊団はかなり浮いた存在であった。

ジフロル盗賊団のトップであるアリエル・ジフロルが信義を重んじ、不要な殺生はせず過度な略奪もしなかったのだ。

またジフロル団長は部下にもこれを徹底させており、規律もしっかりしていた。

他の盗賊団がやりたい放題が当たり前であったのだから、珍しい盗賊団であっただろう。

ジフロル盗賊団は、廃墟と化していたスカレア城の修復を行い主要拠点として使用していた。

ストレア城はストレア教区の中央にあり、ストレア平原にある丘の上にあった。

ストレア城の敷地内には高い監視塔がいくつも建てられていた。

丘の中央に石造りの城が建てられており、周囲には10メートルを越える高い壁が城を囲むように設けられていた。

とある訪問者がこのストレア城へとやって来た。

中央広間には華麗な装飾などはほとんど無く、広間の奥に簡素な椅子と大きめの机が置かれているだけだった。

これは城内の他の場所も同様でどの場所も簡素な作りとなっていた。

するとその訪問者が中央広間にやってきた。

中央広間の最奥には大柄の男性が座っていた。

大柄の男性は年齢が50歳過ぎで、2メートル近い身長のがっしりとした体格で髭を伸ばした緑髪の男性だった。

大柄の男性はジフロル盗賊団の長アリエル・ジフロルであった。

そしてジフロル団長の手前にはジフロル盗賊団の側近達が控えていた。

すると訪問者の男性がジフロル団長に言った。

「ジフロル様。お初にお目にかかります。それがしはアゾットと申します。」

ジフロル団長がアゾットに言った。

「アゾット殿、良く来られました。ジフロル盗賊団の長を務めているアリエル・ジフロルです。それでどのような御用件ですかな？」

するとアゾットがジフロル団長に言った。

「実はそれがしはバトロワ村の住人なのです。逃げてきた者たちを代表してここに来ました。」

ジフロル団長と側近達が真剣な眼差しでアゾットの話を聞いていた。

アゾットが話を続ける。

「ご存知とは思いますが、バトロワ教区にドロメ盗賊団が侵攻してきました。奴らはいたる所から略奪を行い、たくさんの人々が奴らに殺さました。それがしも命からがら逃げてくるのがやっとでした。ジフロル様お願いします。どうかドロメ盗賊団からバトロワ教区を取り戻しはもらえないでしょうか？」

側近の一人として並んでいたレイドスが発言した。

「ドロメの連中好き放題してくれるな。」

今度は側近の一人のバルムスが発言した。

バルムスは細身で顔立ちの良い長身の若い男性だった。

「ドロメ盗賊団をこれ以上野放しにはできますまい。全軍でこれを討伐すべきと考えます。」

するとレイドスがバルムスに尋ねた。

「今ドロメの連中と戦うのは危険じゃないか？他から攻撃されたら大変だぞ？」

バルムスがレイドスに答えた。

「このストレア地方の南にアグトリア本教区、東にベレスタ教区があります。ですがどちらの僧兵修道会も資金難からしばらくは軍事行動は起こせないはずです。そして西にあるバトロワ教区がドロメ盗賊団に占領されました。ですので全戦力を西に振り向けても問題はありません。」

すると今度は黒仮面のアルガスがバルムスに尋ねた。

アルガスはいついかなる時も、頭に大きな黒い兜を顔面には黒い仮面を装着していた。

それで黒仮面のアルガスと呼ばれていたのだ。

「ふむバルムス、仮にドロメ盗賊団と戦うとして、いつから討伐を始めるべきだと考えておるのだ？」

バルムスがアルガスに言った。

「すぐに動くべきですな。早ければ早いほど良い。」

アルガスがバルムスに尋ねた。

「とはいえ、攻勢に出るなら時間をかけて準備をするべきではないか？食糧などの物資もたくさん必要だろう？」

バルムスがアルガスに答えた。

「いえ物資に関して問題はありません。こういう時に備えて備蓄は充分な量を常に確保してあります。こちらの準備はすぐに整うでしょう。ドロメ盗賊団に準備する時間を与えない為にもすぐに動くべきです。」

アルガス頷いた後でジフロル団長に尋ねた。

「おやっさん、どうします？」

するとジフロル団長が大きく目を開いて言った。

「これより直ちにドロメ盗賊団よりバトロワを取り返す。私を頼ってきた者をむげにはできん。皆良いな？」

側近達が一同に返事をした。

「おう！」

「やったるぜ！」

「腕がなりますな。」

するとジフロル団長がアルガスに言った。

「アルガス、先鋒を任せる。ここの者達を連れて先に出立してくれ。」

アルガスがジフロル団長に言った。

「お任せを！」

アルガスはそういう言うと大広間より出ていった。


アルガスは手早く準備を済ませると他の団員達と共にバトロワへと向かった。