最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第4章 ホルムス共和国

ジール大公の思惑

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一つ疑問が湧いたので、僕はウルエル次長に尋ねた。

「避難民認定というのは、もっと厳しい物かと思ってたんですが?」

ウルエル次長は僕に答えた。

「そうですね、通常ならとても難しいです。ですが今はモンテリーノ国境ゲートが封鎖状態です。そして恐らく一番大きいのは、ジール公国でアグトリアからの避難民を、たくさん雇っているからですね。結果としてホルムス共和国を目指すアグトリアの避難民の人数が激減しています。」

更にウルエル次長が続けた。

「しかもジール公国はアグトリアの人々に、かなり高い給料を払っているようで、うち(ホルムス共和国)に来るメリットが小さくなっているからだと思います。」

僕はウルエル次長に尋ねた。

「でもなぜジール公国では、アグトリアからの避難民の人達に高い給料を払っているんですか?」


ウルエル次長は僕に答えた。

「そこが我々にも分からないのです。労働力確保で受け入れるにしても、避難民へ支払う給料は普通なら安くなるはずです。魔法のスキルや特別な技術を持っているなら、当然支払われる給料は高くなりますが、アグトリアからの避難民の人達は、魔法のスキルや技能を持っていない人達がほとんどです。」



ウルエル次長は僕に話を続けた。

「ですがアグトリアからの避難民の人達には仕事をすれば、どの仕事でも高給が支払われているらしいのです。どうやらジール大公の指示のようですが。」

僕はウルエル次長に尋ねた。

「つまりジール大公が、意図的にアグトリアからの避難民達を遇していると?ジール大公には何か目的があるんでしょうか?」

ウルエル次長が僕に答えた。

「さあ?我々にもジール大公の思惑までは分かりません。ただジール大公には何か考えがあるのかもしれません。彼はなかなかのやり手ですから。」


ジール大公か。

勇者狩りの発案者でジール公国のトップだ。

まあ普通に考えるなら、ジール公国の人口を増やして国力の増強を図っているって所だろう。

まあどうでもいいか。別にそれ自体は悪い事では無いし。

僕自身もジール公国では、臨時の配達人の仕事をやって給金が貰えて助かった。

まだジール公国にいるバルガス達には、むしろ嬉しい事だろう。

さてとでは用事も済んだし、そろそろ帰ろうかな。

僕はウルエル次長に言った。

「今日はありがとうございました。」

ウルエル次長は、僕に言った。

「いえ、是非ともこの国で頑張ってください。」

僕はウルエル次長にお辞儀をして、出入国管理部を後にした。
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