最強勇者の物語2

第３章 逃亡生活

緊急調達

ベラクッドの店内は木製テーブルと木製の長椅子のテーブル席とカウンター席があり、広めの店だったが閑散としており、客は四人しか見当たらなかった。

僕はカウンター席に向かうと、マスターらしき黒い服を着た中年の男性に声をかけた。

「すいません、注文いいですか？」

するとマスターがこちらに歩いて来て、注文を聞いてきた。

「何にするんだ？」

僕はマスターに頼んだ。

「バングルとブラックモルカを一つづつお願いします。あとグルエルとかありますか？」

ああとマスターが答えたので、グルエル一つも注文した。

そしてマスターが僕に言った。

「合計で百五十ガルだ。」

僕は銀貨三枚をマスターに渡した。

マスターは調理場に行き、しばらくすると料理を持って来てくれた。

グルエルというのはクリームパンに近いものだった。

ただクリームがギッシリ入っているので、もはやこれはスイーツであった。

僕は美味しく料理を頂くと、皿をマスターに返して店を後にした。

そして、集合場所の騎士団の詰所前に戻った。

到着してから時計塔を見ると午後一時四十分だった。

午後二時になり全員が集まった。

だが騎士達が時間になっても現れなかった。

少し経ってようやく騎士達が出てきたが、少し慌てた様子に見えた。

騎士の一人が大声で話す。

「今日の出発は取り止めとなった。出発は明日に延期だ。」

皆の顔がきょとんとしていた。

僕は騎士に尋ねた。

「あのそれはなぜですか？」

騎士が皆に教えてくれた。

「それがだな。レグナス王国とホルムス共和国の両国から、緊急調達の要請が来たのだ。ああ緊急調達というのは、追加注文という事だ。」

僕が続けて尋ねた。

「つまり小麦の追加注文が来たって事ですね。それでなぜ出発が延期になるんですか？」

騎士が続ける。

「ああそれはだな。このところ運搬業務が全体的に遅れがちでな。国境近くの輸出用の備蓄倉庫の在庫が減っているだ。それで急遽このダルカスにある在庫の小麦を船に積んでレグナス王国に運ぶ事になったのだ。」

僕は続けて尋ねた。

「とういう事は配達人の仕事はここで終わりですか？」

しかし騎士は首を横に降って答えた。

「いやまだ続く。レグナス王国には水運のルートがあるが、ホルムス共和国への水運のルートが無い。よって陸路で運ばなくてはならない。」