上 下
123 / 135
一章

神域回避

しおりを挟む
7月16日の午前0時になっていた。

晴南達は二実の運転する車に乗って明井田市内にある下瀬の警察署までやって来ていた。

二実は下瀬の警察署の駐車場に一旦車を止めたのだった。

同じ車に乗っている晴南が二実に言った。

「とりあえず下瀬まではスムーズに来れましたね。」

二実が晴南に言った。

「下瀬までのルートは大体把握してたからね、でも問題はここからよ。」

すると二実は車の天井に備え付けられているモニターを晴南達が見えるように広げてモニターのスイッチを入れたのだった。

「みんなこれを見て。」

二実はそういうと車の天井付近に備え付けれらているモニターに画像を映し出した。

その画像はグールルマップの検索画面だった。

モニターにはグールルマップから明井田市内の地図が表示されていた。

二実が説明を始めたのだった。

「ここが今私たちのいる明井田市の東側にある下瀬地区よ。」

すると明井田市のマップの右側の部分が青く点滅した。

「それでこの地図に明井田市内にある神社を赤い点で表示して重ね合わせてみるわ。」

すると明井田市のマップ上にすごい数の赤い点が表示された。

モニターを見ていた拓也が驚いた様子で二実に尋ねた。

「これ全部明井田市内にある神社なんですか?」

二実が拓也に言った。

「ええ、そうよ。明井田市内には969か所の神社があるわ。」

晴南が二実に尋ねた。

「この赤い点全部を避けて進んでいかなくちゃならないんですか?」

二実が晴南に言った。

「そうよ、しかも優斗君が言ってたように規模の小さい祠やお地蔵様なんかは地図に載ってないからね。赤い点で表示されているのはあくまで地図に載ってる大きな神社だけね。小さい祠やお地蔵様の数を合わせれば合計の数はもっと多くなるわ。合わせれば1600ぐらいの数字にはなると思うわ。」

三緒が二実に尋ねた。

「つまりこの地図以上に大変になるという事ね。」

二実が三緒に言った。

「そういう事。」

すると優斗が二実に尋ねた。

「神社に近づいてはダメっていうと具体的にはどのくらいの距離なんですか?」

二実が晃太に言った。

「境内から200メートル以内に近づくのは危険だと思うわ。」

優斗が二実に言った。

「となると300メートル以上は近づかない方が賢明ですね。」

三緒がモニターを厳しい表情で見ながら二実に言った。

「うーん、このマップを見る限り下瀬から健太君の家がある美並里(みなり)地区まで直進で進んでいくのは無理そうね。」

二実が三緒に言った。

「ええ、下瀬から西側は神社がすごく密集しているわ。ここまで密集しすぎていると神社を避けて進む事じたいがたぶん無理ね。」

晴南が二実に尋ねた。

「それじゃあどうするんですか??」

二実が晴南に言った。

「明井田市の南部は農地や山地が多いうえに人口密度も低いからそっちから進もうと思っているわ。」

三緒が二実に言った。

「確かに赤い点は明井田市の南側は少ないみたいだけど?それだと遠回りになるんじゃない?」

二実が三緒に言った。

「突っ切って進めない以上は遠回りになるのは仕方ないでしょう。」

優斗が二実に言った。

「健太がいる場所を都度確認しいるんですが、たぶん健太達も明井田市の南側を進んでいるみたいです。」

拓也が優斗に言った。

「なら途中で追いつけそうだな。」

三緒が二実に尋ねた。

「それでどうするつもりなの?街灯ぐらいはついてるだろうけどかなり暗い道を進む事になるわよ。しかも進みながら地図にも載ってない祠やお地蔵様を見つけなければならない。二実が言ってた便利グッズっていうのを早く出してよ。」

二実が三緒に言った。

「ええそうね。それじゃあ便利グッズを出しましょうか?」

すると二実は車を降りて車の後方にあるトランクからある物を取り出したのだった。

すぐに二実は車の運転席に戻ると晴南達にその物を見せたのだった。

そのアイテムを見た晴南が二実に尋ねた。

「これカメラですか?」

二実がみんなに言った。

「そう、カメラよ。正確に言うと高性能の暗視カメラね。」

すると二実はそのカメラの設定を調整するのだった。

そして調整が終わるとその暗視カメラを晴南に渡したのだった。

二実が晴南に言った。

「晴南ちゃん、ナイトモードにしてあるからこれで外を覗いてみて。」

晴南は二実に言われた通りにカメラで外を覗いてみた。

すると晴南が二実に言った。

「えっ??なにこれすごい!!暗い場所が昼間みたいに明るく見えます!!」

二実が晴南に言った。

「すごいでしょ。そのカメラ。月明り程度の明るさがあれば夜間でも昼間のような明るい映像に変換して見せてくれるすごいカメラよ。そのカメラには望遠機能もあるからこれで進行方向にある祠やお地蔵様も見つける事ができるって訳。」

二実が晴南に言った。

「それで助手席に座ってる晴南ちゃんにこのカメラで前方を確認してもらおうと思ってるだけど?」

晴南が二実に言った。

「はい、是非やりたいです。」

晃太が晴南に言った。

「視力のいい晴南なら確かに適任だな。」

二実が晴南に言った。

「晴南ちゃん、祠やお地蔵様の前には食べ物やお酒そして花が供えられている事が多いわ。それらに細心の注意を払ってね。」

晴南が二実に言った。

「分かりました。」

すると三緒が二実に言った。

「二実??いつも思うんだけど?よくヘンテコな物ばっかり持ってるわよね?」

二実が三緒に言った。

「巫女なら暗視カメラぐらい常備してるでしょ?」

三緒が二実に言った。

「そんなの普通持ってないから。」

二実が三緒に言った。

「だって真っ暗な場所が昼間みたいに明るく見えるのよ?そんなカメラが売ってたら巫女だったらそっこうでカマゾンで注文しちゃうでしょ?」

三緒が二実に言った。

「いやそこは巫女とは全然関係ないと思うんだけど。」

二実が三緒に言った。

「もう三緒?細かい事を気にしすぎよ。今はそんな事どうだっていいでしょう。」

三緒が二実に言った。

「まあね、今は健太君を追いかけないと。」

二実達は準備を済ませるとすぐに出発するのだった。

晴南が助手席に座り暗視カメラを覗きながら前方に注意を払いつつ二実が低速で車を運転して進んでいった。

対向車や歩行者などはまったくおらずにライトをつけた二実の車だけがゆっくりと進んでいった。

三緒が二実に言った。

「二車線道路なのに対向車が1台もこないわね。」

二実が三緒に言った。

「そうね、全然来ないわね。」

すると拓也が二実に尋ねた。

「二実さん??まさかこの辺りの人達も?」

二実が拓也に言った。

「うーん、でも午前0時を過ぎてるし人口密度も低い場所だからなんとも言えないわね。」

二実が拓也に言った。

「車を止めて近くの民家の玄関先を確認しにいけば分かるとは思うけど。それをする時間的余裕も精神的余裕もないから今は考えない方がいいと思うわ。少し余裕が出てから考えた方がいいと思うわ。」

拓也が二実に言った。

「はい、そうですね。」

二実達は明井田市南側を横切るルートを選択して進むのだった。

だがそれでも簡単に前進という訳にはいかなかった。

助士席に座っている晴南が二実に言った。

「二実さん!!この先にみかんがたくさん置いてあります!!」

「えっ??」

二実は晴南の言葉を聞くとすぐに車を停車させるのだった。

そして手元近くに置いていたもう一つの暗視カメラで前方を覗くのだった。

すると晴南の言う通り進行方向の道路の上にはたくさんのみかんがもお供えされていた。

二実が晴南に言った。

「あっ!!本当だね?これはこの先に祠かお地蔵様がたぶんあるわね。この先は進むのは危ないわね。」

三緒が二実に尋ねた。

「どうするの?」

二実が三緒に言った。

「さらに迂回して明井田ゴルフ場の所のルートで進みましょう。」

三緒が二実に言った。

「ねえ二実??さっきから遠回りばかりしてない?」

二実が三緒に言った。

「仕方ないでしょ?小さな祠やお地蔵様があったんだから前に進むわけにはいかないでしょ?無視して進んじゃったら元も子もなくなるし。」

三緒が二実に言った。

「でもこれで5度目よ。健太君との距離があんまり縮めれてないんじゃない?」

二実が三緒に言った。

「ええこの30分は縮めれてないでしょうね、だけど焦ってもどうにもならないわ。タイムリミットがくるまでに全力を尽くして追いつくしかないでしょう?」

三緒が二実に言った。

「ええそうね。ごめん。」

二実達は慎重に車を運転して進んでいくのだった。

その後はお供え物に鉢合わせる事もなく順調に進んでいくことができた。

二実がみんなに言った。

「よし牧之原(まきのはら)地区に入ったわ。」

二実が晴南に尋ねた。

「晴南ちゃん?なにか見える?」

晴南が二実に言った。

「大丈夫です。何もありません。」

すると大きなスマホのアラーム音が車内に鳴り響いたのだった。

すると晴南が尋ねた。

「なに?なんの音?」

すると後部座席に座っていた晃太が自分のスマホを取り出してアラーム音を解除したのだった。

晃太が晴南に言った。

「俺がセットしてたスマホのアラーム音だ。」

すると晃太が言いずらそうに二実に言った。

「二実さん、午前2時になりました。」

「そっか。」

二実も残念そうな表情で晃太に言った。

すると二実が残念そうな表情でこう言ったのだ。

「健太君、柚羽ちゃんごめんね。」

晃太も辛そうな表情で呟いた。

「健太、柚羽、本当にすまない。」

そして二実が車を停車させたのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

彼を愛したふたりの女

豆狸
恋愛
「エドアルド殿下が愛していらっしゃるのはドローレ様でしょう?」 「……彼女は死んだ」

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...