上 下
87 / 135
一章

覚えていない

しおりを挟む
午後2時を過ぎたところになっていた。

二実達はとある場所へと向かっていた。

結局二実達は何の情報も得る事ができなかった。

ただ得体のしれない恐怖が増しただけであった。

晴南が二実に尋ねた。

「彩乃さんは大丈夫だったんですか?」

二実が晴南に言った。

「ええ気を失ってただけみたい。」

晴南が二実に言った。

「良かった。」

勇雄が晴南に言った。

「吉崎警部補が彼女を自宅まで送ってくれている。」

二実が三緒に言った。

「けど結局、彩乃(あやの)さんに何もしてあげられなかったわね。」

三緒が二実に言った。

「これといって新しい情報を得る事もできなかったしね。」

拓也が二実に尋ねた。

「さっきのは何だったんでしょうか?」

二実が拓也に言った。

「分からないけどあれだけの浮遊霊達が一気に消えるなんてありえないわ。」

晃太が二実に尋ねた。

「それじゃあさっき彩乃(あやの)さんが九木礼に戻って、ここにいてはダメって言ってたのは?」

二実が晃太に言った。

「それも分からないわ。」

三緒が二実に言った。

「最近本当に分からない事だらけね。何がどうなってるのかしら?」

晴南が二実に尋ねた。

「ところで今からどこに行くんですか?」

二実が晴南に言った。

「明洋の実家に行くのよ。数日前に寿恵(すえ)さんから明洋の遺留品を借りてたのよ、それを返しにいくの。」

晃太が勇雄に言った。

「そして寿恵(すえ)さんに明洋さんが明井田大規模火災に関与しているのを伝えに行く。違いますか勇雄さん?」

勇雄が晃太に言った。

「晃太君、君はなかなか鋭いな。」

明洋が明井田大規模火災に関与している事は明洋の両親にはまだ伝えていなかった。

すると三緒が勇雄に言った。

「勇雄さんお願いします。寿恵さんには明洋が疑われている事を黙っておいてもらえませんか?」

勇雄が三緒に尋ねた。

「三緒君?その理由を聞いていいかね?」

三緒が勇雄に言った。

「寿恵さん、明洋が犯人なんて知ったら絶対に耐えられないと思うからです。寿恵さん明洋がいなくなってから体調を崩してるようでした。よく眠れてなさそうでした。」

勇雄が三緒に言った。

「残酷な真実を伝えなくてはならないからな。」

勇雄が三緒に言った。

「そうだな分かった。まだ明洋君が犯人だと正式に決定したわけではなし今日はその話は控えておこう。それでいいかな?」

三緒が勇雄に言った。

「ありがとうございます。」

二実達は明洋の実家へと到着したのだった。

二実が明洋の実家のインターホンを鳴らした。

すると寿恵が玄関から姿を現した。

「あら二実ちゃんそれにみんなも久しぶり。元気にしてた??」

そこにはとても明るい顔の寿恵の姿があった。

二実は笑顔の寿恵に少し困惑しながら尋ねた。

「今日は元気なんですね?」

すると訝しげに寿恵が言った。

「えっ??いつも元気だと思うけど??」

二実が寿恵に尋ねた。

「いやだいぶ明るくなられたと思うんですけど?もう立ち直れたんですか?」

寿恵が二実に尋ねた。

「立ち直る????えっ??何から立ち直るの?」

二実が寿恵に言った。

「何って??明洋(あきひろ)が行方不明になってるじゃないですか。」

寿恵が二実に尋ねた。

「明洋(あきひろ)??誰の事?」

二実が寿恵に言った。

「寿恵さんの息子さんです。私は息子さんの明洋君と仲良くしてましたよね??」

寿恵が二実にきょとんとした顔で言った。

「私に息子なんていないわよ?」

二実は訳が分からない様子で寿恵に言った。

「寿恵さんどうされたんですか?」

寿恵は困った顔で二実に言った。

「いやどうもしてないんだけど。それより二実ちゃん今日はどうしたの?」

二実が寿恵に言った。

「遺品をお返しにきました。明洋の双眼鏡です。」

寿恵が二実に尋ねた。

「こんな高価そうな双眼鏡を貰っちゃっていいの?」

二実が寿恵に言った。

「私のじゃなくて明洋の物なんです。それを返しにきました。」

寿恵が二実に尋ねた。

「さっきから二実ちゃん何言ってるの?」

二実が寿恵に言った。

「寿恵さん本当に忘れちゃったんですか??明洋(あきひろ)って名前の息子さんがいたんですよ!!」

寿恵が二実に言った。

「ええ二実ちゃん、私には息子なんていないわよ?もしいたら忘れるわけないでしょ??」

二実が寿恵に言った。

「いたんですよ!!明洋って大学生の息子さん!!」

寿恵が二実に言った。

「分かった、ドッキリか何かね。もう二実ちゃんも三緒ちゃんも人が悪いわね。」

寿恵が二実に尋ねた。

「それで二実ちゃん後ろの人は?」

二実が寿恵に言った。

「九木礼警察署の人です。今日はいろいろと立て込んでたんで。」

すると勇雄が寿恵に向かって一礼をした。

寿恵も勇雄にお辞儀をした。

寿恵が二実に言った。

「へえーそうなの、二実ちゃんはいろんな人とお知り合いなのね。」

寿恵が言った。

「そうだせっかく来たんだから上がってってよ。みなさんもどうぞ??」

二実達は明洋の家の中へと通された。

すると廊下には中年の男性が立っていた。

二実がその男性に言った。

「あっ!!哲郎さん??」

この中年の男性は明洋の父親で白焼哲郎(しらやきてつろう)という名前だった。

哲郎(てつろう)が二実に言った。

「おや??二実ちゃんと三緒ちゃんだったかな?いらっしゃい??」

哲郎が寿恵に尋ねた。

「そちらの方々は??」

寿恵が哲郎に言った。

「二実ちゃんのお知り合いなんですって、せっかくだからみんな家にあがってもらったわ。」

哲郎が言った。

「そうなのか?せまい家ですがゆっくりしていってください。」

すると二実が哲郎に尋ねた。

「あのう??哲郎さんは明洋を知ってますよね??」

哲郎も何の事か分からない様子で二実に言った。

「えっ??明洋って誰の事だ?」

二実が哲郎に言った。

「哲郎さんの息子さんです。覚えてませんか??」

哲郎が二実に言った。

「俺達には子供はいないよ。」

すると寿恵が哲郎に言った。

「あなたここは笑わなきゃダメですよ?」

哲郎が寿恵に言った。

「どういう事だ?」

寿恵が哲郎に言った。

「きっと若い人たちの間で流行ってる遊びみたいなものなのよ。」

哲郎が寿恵に言った。

「なんだそうなのか。」

哲郎と寿恵は大声で笑った。

「はっはっはっ??」

二実達は明洋の家の中のリビングへと通された。

この状況に全員が困惑していた。

二実が三緒に尋ねた。

「一体どういう事よ??寿恵さんも哲郎さんもなんで明洋の事忘れちゃってるの??」

三緒が二実に言った。

「私も分からないわ。」

拓也が三緒に尋ねた。

「二人とも満子さんみたいに現実逃避してるんじゃ?」

すると勇雄が拓也に言った。

「いや、あれはたぶん現実逃避ではないと思う。本当に明洋君の記憶がない、そんな感じだったな。」

すると三緒が困惑した様子で二実に尋ねた。

「ねえ??本当に明洋君が存在しなかったって事はないよね?」

二実が三緒に言った。

「そんな事あるわけないでしょ。って言いたいけど、なんか私も自信がなくなってきたわ。」

二実が三緒に言った。

「なら確かめに行きましょうか。」

三緒が二実に言った。

「確かめるって?」

二実が三緒に尋ねた。

「2階に明洋の部屋があるでしょう??」

三緒が二実に言った。

「そっかもし本当に明洋君が存在しないなら2階の明洋君の部屋も存在しないって事ね。」

二実が三緒に言った。

「そういう事。」

二実が大きな声で言った。

「寿恵さん、二階を見せてもらっていいですか?」

奥の部屋から寿恵の声が響いた。

「いいわよいいわよ。好きなだけ見て回ってくれて。」

二実が大きな声で言った。

「ありがとうございます。」

二実がみんなに言った。

「みんな上に行こう。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

彼を愛したふたりの女

豆狸
恋愛
「エドアルド殿下が愛していらっしゃるのはドローレ様でしょう?」 「……彼女は死んだ」

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

円満婚約破棄をしたらゆるい王妃様生活を送ることになりました

ごろごろみかん。
恋愛
死霊を祓うことのできる霊媒師・ミシェラは皇太子から婚約破棄を告げられた。だけどそれは皇太子の優しさだと知っているミシェラは彼に恩返しの手紙を送る。 そのまま新興国の王妃となったミシェラは夫となった皇帝が優しい人で安心する。しかもゆるい王妃様ライフを送ってもいいと言う。 破格の条件だとにこにこするミシェラはとてつもないポジティブ思考の持ち主だった。 勘違いものです ゆるゆる更新で気が向いた時に更新します

処理中です...