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序章

奇妙

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それから晴南はファッションの店キクヨでたくさん買い物をして自宅に帰ってきた。

晴南の自宅は木造二階建ての家だった。

庭先には赤い自家用車が停められていた。

午後6時を過ぎており、夕暮れ時になっていた。

晴南は玄関の扉を開けて靴を脱いで、家の中に入った。

晴南が大きな声で言った。

「お父さん、ただいま!」

だが家の中から声は返ってこなかった。

すると晴南が先ほどよりも大きな声で言った。

「お父さん、ただいま!!」

だが家の中から声は返ってこなかった。

再び晴南が大きな声で言った。

「お父さん、ただいま!帰って来たよ!!いないの??」

だが返事は返ってこなかった。

父の車が庭に止めてあったので、晴南は父が家にいると思っていた。

「変ねえ、さっき帰って来た時はお父さんいたのに?夕食作って待ってるよって言ってたのに?」

すると夕飯と思われるいい臭いが居間の方から漂ってきた。

夕食をつくるのに夢中になってるのかな?晴南はそんな事を考えてながら居間に向かった。

そして晴南は居間の扉を開けた。

するとすでに夕食の準備が完了しており、食器が並べられて盛り付けも終わっていた。

今日の夕食は肉じゃがとほうれん草のごま和えと味噌汁そしてご飯がすでに準備されていた。

ついさっき盛り付けたようでまだ味噌汁の湯気が少し上がっていた。

しかし肝心の父の姿を見つける事ができなかった。

あれそれじゃあ二階かな?

晴南はそんな事を考えながら、玄関前に向かった。

二階への階段は玄関先にあるからである。

晴南はふと玄関に並んでいた靴を目をやった。

そしてとある事に気がついた。

「あら?お父さんの靴があるわ?」

玄関には晴南の父が愛用している靴が綺麗に置かれていた。

玄関の靴棚も確認した。

靴棚にも晴南の父の靴が全て置かれていた。

それじゃあ二階にいるのね。

晴南はそう考えて階段をのぼり二階に上がっていった。

そして大きな声で言った。

「お父さん、ただいま!帰ってきたわ!!」

だが何の返事も返ってこなかった。

もう一度晴南が大きな声で言った。

「お父さん、ただいま!帰ってきたわよ!」

やはり何の返事も返ってこなかった。

晴南はすぐに二階の各部屋を見て回った。

だが父の姿を見つける事は出来なかった。

晴南は二階から一階に降りてきた。

晴南はトイレや風呂場など家中を探したが、父の姿を見つける事はできなかった。

晴南は居間に戻ってこの状況を考えていた。

「おかしいわね?お父さんは一体どこに行っちゃったのかしら?」

居間にはまだ暖かい料理が並んでいていた。

晴南の父の車は庭に置いてあったし、父の靴も玄関に全てあった。

それでも晴南は家の中で父を見つける事ができなかった。

近所に出かけているのであれば、靴が全て玄関にあるのはおかしかった。

外出するのであれば当然靴を履いていくはずである。

まるで父が夕食を作っている最中に忽然と姿を消してしまったようだった。

晴南はそう考えると気味が悪くなってきた。

そして晴南は不安を募らせていった。

「一体何なの?この状況は?」


    
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