22 / 66
#21 運命的な出会い
しおりを挟む
そう思った時、
「ゴブーーッ!」
あの違和感満載のゴブリンの断末魔が聞こえてきた。それと同時にユリアを引っ張る力も無くなった。
「シエルさん! 今なら進めます!」
一体何が起こったんだ? ユリアが倒したわけではないだろうし、もしかすると他のプレイヤーが助けてくれたのか?
「誰だか知らないけど、ありがとう!」
とりあえずお礼だけ言って、急いで奥へと進むことにした。
匍匐前進で細い通路しばらく進むと、赤い宝箱の置いてある広場に出た。どうやらここが最終地点らしい。
「一時はどうなるかと思ったよ」
「危なかったですね……。でも何が起こったのでしょう」
「きっと後から来たプレイヤーが助けてくれたんだよ。ここに来たらちゃんとお礼言おう。お目当ての宝箱、先に開けてしまおうぜ」
「はい!」
2人で宝箱を開け、中にあったのは2つの電球みたいなものが付いたナンセンスな指輪。
――――――――――――――――――
【アイテム名】閃きリング
【レア度】C
●アクセサリー……スキル習得率が常時0.08%アップする。
―――――――――――――――――――
「これがアクセサリーなんだ……同じ指輪でもワープリングとは違うものみたいですね」
「ワープリングは重要アイテムだからな。装備品扱いではないんだよ」
と言っている内に、背後から物音が聞こえてきた。もしかしたらさっき助けてくれた人が来たのかもしれない。俺たちはお礼を言うため、後ろを振り向く。
「え……」
思わず声が漏れてしまった。相手に聞こえたかは分からない。
そこに居たのは見覚えのある顔。ふわっとした茶髪の髪に、ぱっちりとしたオレンジ色の瞳。
俺の初恋の人であり、初めての彼女。
アリサがそこに居た。
「あ、2人ともパーティ組んでいたんですね。大丈夫でしたか?」
そう言って俺たちににっこりと微笑むアリサ。俺の心臓がバクバク言っている。馬鹿な、こんなことってあるのかよ……。一体どんな確率だ。
「はい、おかげ様で。助けていただきありがとうございました」
驚きで戸惑っている俺に代わってユリアが答える。
落ち着け。今の俺はスカイじゃなくて、シエルなんだ。俺がスカイだってことはアリサは分かるはずがない。なんとかこの場をやり過ごすんだ。
「2人とも始めたばかりだよね? 初心者用サーバーがあるのに、どうして一般サーバーへ?」
客観的に見てもアリサは強プレイヤーの部類に入る。そんなプレイヤーが俺たち初心者とこうやって話すこと自体珍しいことだ。少々計画が前倒しになったが、これはある意味チャンスなのかもしれない。……そう考えると、少しずつ落ち着きを取り戻してきたような気がする。
「えっと、それは……」
言い淀むユリア。ここは俺が助け舟を出さなければいけないな。初心者風のキャラを作って演じてみせよう。
「ちょっとした冒険心だよ。一般サーバーのプレイヤーってどんな人がいるのか見てみたくなったんだ」
「みんな強そうだったでしょう?」
「うん! 街には強そうな装備のプレイヤーがたくさんいたし、ユリアの後ろにゴブリンが来たときは何も対処出来なかった。俺もまだまだだなぁって実感したよ。アリサはすごいなぁ」
「そんなことないよ。シエル君もレベル上げしていけばこれくらいすぐになれるって」
なんだかアリサの顔を見ていると憎悪の感情が湧いてきた。愛と憎は表裏一体って言葉を思い出す。そんな愛の感情なんてもう無いけどね。
アリサ、お前の優しさは俺が良く知っている。だが今度はその優しさを利用させてもらおう。
「でも、DOMはなかなかレベルが上がりづらくて困ってしまうよ……。アリサとここで会ったのも何かの縁だと思うんだ。良ければフレンドになってくれないかな?」
始めたばかりの純粋な瞳でアリサを見つめる。純粋な瞳ってどんなのか分からないけど、とにかく見つめてみた。
「うん、いいよ! 色々教えてあげるね!」
フッ……。ちょろいな。
【“アリサ”とフレンドになりました】
予想通り、フレンド申請を断らない。お前は断れない女だもんな。だからあんなネカマのおっさんも受け入れてしまうんだよ。
浮気女とフレンドになることに抵抗が無いわけではないが、俺の復讐を遂げる為にもアリサは十分利用価値のあるプレイヤーだ。初心者が強いプレイヤーと知り合いになるチャンスなんてそうそう無い。俺はシエルという別人の仮面を被り、お前の強さとセレスティアスのメンバーとしての立場、存分に利用させてもらうぞ。
「フレンド登録ありがとう。アリサはとっくにこのダンジョンクリアしていてもおかしくないのに、どうしてこんな洞窟に居たんだ?」
「んー、ちょっとした思い出巡りかな」
「思い出巡り?」
「昔は良かったなぁってね」
そう言ってアリサは笑顔を見せたが、その笑顔は無理矢理作られた表面だけの笑顔だった。それは、これ以上この話題は話したくないという意思表示でもある。いじわるをしてやりたい気持ちもあるけど、ここは我慢して話題を変えてやった。
「なあユリア、お前もアリサとフレンドになったらどうだ? 初心者の俺たちに色々教えてくれるってさ」
「いいんですか? アリサさん」
「もちろんだよ。よろしくね!」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
さて、アリサとフレンドになったことだし、これ以上ユリアが居る状態で立ち話をする必要もない。とっととこの洞窟から抜け出して、一人でこれからの計画でも考えるとしよう。
「じゃあ俺たち、お宝もゲットしたし一旦街に戻るね。今日は助けてくれてありがとう」
「アリサさん、ありがとうございました」
「どういたしまして。私に出来ることがあればなんでもするから、いつでも声を掛けてね!」
なんでもする……ね。言われた通りそうさせてもらうさ。それはもうボロ雑巾のようにな! 俺を裏切ったことに対する罰。楽しみにしているがいい。
「ゴブーーッ!」
あの違和感満載のゴブリンの断末魔が聞こえてきた。それと同時にユリアを引っ張る力も無くなった。
「シエルさん! 今なら進めます!」
一体何が起こったんだ? ユリアが倒したわけではないだろうし、もしかすると他のプレイヤーが助けてくれたのか?
「誰だか知らないけど、ありがとう!」
とりあえずお礼だけ言って、急いで奥へと進むことにした。
匍匐前進で細い通路しばらく進むと、赤い宝箱の置いてある広場に出た。どうやらここが最終地点らしい。
「一時はどうなるかと思ったよ」
「危なかったですね……。でも何が起こったのでしょう」
「きっと後から来たプレイヤーが助けてくれたんだよ。ここに来たらちゃんとお礼言おう。お目当ての宝箱、先に開けてしまおうぜ」
「はい!」
2人で宝箱を開け、中にあったのは2つの電球みたいなものが付いたナンセンスな指輪。
――――――――――――――――――
【アイテム名】閃きリング
【レア度】C
●アクセサリー……スキル習得率が常時0.08%アップする。
―――――――――――――――――――
「これがアクセサリーなんだ……同じ指輪でもワープリングとは違うものみたいですね」
「ワープリングは重要アイテムだからな。装備品扱いではないんだよ」
と言っている内に、背後から物音が聞こえてきた。もしかしたらさっき助けてくれた人が来たのかもしれない。俺たちはお礼を言うため、後ろを振り向く。
「え……」
思わず声が漏れてしまった。相手に聞こえたかは分からない。
そこに居たのは見覚えのある顔。ふわっとした茶髪の髪に、ぱっちりとしたオレンジ色の瞳。
俺の初恋の人であり、初めての彼女。
アリサがそこに居た。
「あ、2人ともパーティ組んでいたんですね。大丈夫でしたか?」
そう言って俺たちににっこりと微笑むアリサ。俺の心臓がバクバク言っている。馬鹿な、こんなことってあるのかよ……。一体どんな確率だ。
「はい、おかげ様で。助けていただきありがとうございました」
驚きで戸惑っている俺に代わってユリアが答える。
落ち着け。今の俺はスカイじゃなくて、シエルなんだ。俺がスカイだってことはアリサは分かるはずがない。なんとかこの場をやり過ごすんだ。
「2人とも始めたばかりだよね? 初心者用サーバーがあるのに、どうして一般サーバーへ?」
客観的に見てもアリサは強プレイヤーの部類に入る。そんなプレイヤーが俺たち初心者とこうやって話すこと自体珍しいことだ。少々計画が前倒しになったが、これはある意味チャンスなのかもしれない。……そう考えると、少しずつ落ち着きを取り戻してきたような気がする。
「えっと、それは……」
言い淀むユリア。ここは俺が助け舟を出さなければいけないな。初心者風のキャラを作って演じてみせよう。
「ちょっとした冒険心だよ。一般サーバーのプレイヤーってどんな人がいるのか見てみたくなったんだ」
「みんな強そうだったでしょう?」
「うん! 街には強そうな装備のプレイヤーがたくさんいたし、ユリアの後ろにゴブリンが来たときは何も対処出来なかった。俺もまだまだだなぁって実感したよ。アリサはすごいなぁ」
「そんなことないよ。シエル君もレベル上げしていけばこれくらいすぐになれるって」
なんだかアリサの顔を見ていると憎悪の感情が湧いてきた。愛と憎は表裏一体って言葉を思い出す。そんな愛の感情なんてもう無いけどね。
アリサ、お前の優しさは俺が良く知っている。だが今度はその優しさを利用させてもらおう。
「でも、DOMはなかなかレベルが上がりづらくて困ってしまうよ……。アリサとここで会ったのも何かの縁だと思うんだ。良ければフレンドになってくれないかな?」
始めたばかりの純粋な瞳でアリサを見つめる。純粋な瞳ってどんなのか分からないけど、とにかく見つめてみた。
「うん、いいよ! 色々教えてあげるね!」
フッ……。ちょろいな。
【“アリサ”とフレンドになりました】
予想通り、フレンド申請を断らない。お前は断れない女だもんな。だからあんなネカマのおっさんも受け入れてしまうんだよ。
浮気女とフレンドになることに抵抗が無いわけではないが、俺の復讐を遂げる為にもアリサは十分利用価値のあるプレイヤーだ。初心者が強いプレイヤーと知り合いになるチャンスなんてそうそう無い。俺はシエルという別人の仮面を被り、お前の強さとセレスティアスのメンバーとしての立場、存分に利用させてもらうぞ。
「フレンド登録ありがとう。アリサはとっくにこのダンジョンクリアしていてもおかしくないのに、どうしてこんな洞窟に居たんだ?」
「んー、ちょっとした思い出巡りかな」
「思い出巡り?」
「昔は良かったなぁってね」
そう言ってアリサは笑顔を見せたが、その笑顔は無理矢理作られた表面だけの笑顔だった。それは、これ以上この話題は話したくないという意思表示でもある。いじわるをしてやりたい気持ちもあるけど、ここは我慢して話題を変えてやった。
「なあユリア、お前もアリサとフレンドになったらどうだ? 初心者の俺たちに色々教えてくれるってさ」
「いいんですか? アリサさん」
「もちろんだよ。よろしくね!」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
さて、アリサとフレンドになったことだし、これ以上ユリアが居る状態で立ち話をする必要もない。とっととこの洞窟から抜け出して、一人でこれからの計画でも考えるとしよう。
「じゃあ俺たち、お宝もゲットしたし一旦街に戻るね。今日は助けてくれてありがとう」
「アリサさん、ありがとうございました」
「どういたしまして。私に出来ることがあればなんでもするから、いつでも声を掛けてね!」
なんでもする……ね。言われた通りそうさせてもらうさ。それはもうボロ雑巾のようにな! 俺を裏切ったことに対する罰。楽しみにしているがいい。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
恋人を寝取られた挙句イジメられ殺された僕はゲームの裏ボス姿で現代に転生して学校生活と復讐を両立する
くじけ
ファンタジー
胸糞な展開は6話分で終わります。
幼い頃に両親が離婚し母子家庭で育った少年|黒羽 真央《くろは まお》は中学3年生の頃に母親が何者かに殺された。
母親の殺された現場には覚醒剤(アイス)と思われる物が発見される。
だがそんな物を家で一度も見た事ない真央は警察にその事を訴えたが信じてもらえず逆に疑いを掛けられ過酷な取調べを受ける。
その後無事に開放されたが住んでいた地域には母親と自分の黒い噂が広まり居られなくなった真央は、親族で唯一繋がりのあった死んだ母親の兄の奥さんである伯母の元に引き取られ転校し中学を卒業。
自分の過去を知らない高校に入り学校でも有名な美少女 |青海万季《おおみまき》と付き合う事になるが、ある日学校で一番人気のあるイケメン |氷川勇樹《ひかわゆうき》と万季が放課後の教室で愛し合っている現場を見てしまう。
その現場を見られた勇樹は真央の根も葉もない悪い噂を流すとその噂を信じたクラスメイト達は真央を毎日壮絶に虐めていく。
虐められる過程で万季と別れた真央はある日学校の帰り道に駅のホームで何者かに突き落とされ真央としての人生を無念のまま終えたはずに見えたが、次に目を覚ました真央は何故か自分のベッドに寝ており外見は別人になっており、その姿は自分が母親に最期に買ってくれたゲームの最強の裏ボスとして登場する容姿端麗な邪神の人間体に瓜二つだった。
またそれと同時に主人公に発現した現実世界ではあり得ない謎の能力『サタナフェクティオ』。
その能力はゲーム内で邪神が扱っていた複数のチートスキルそのものだった。
真央は名前を変え、|明星 亜依羅《みよせ あいら》として表向きは前の人生で送れなかった高校生活を満喫し、裏では邪神の能力を駆使しあらゆる方法で自分を陥れた者達に絶望の復讐していく現代転生物語。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~
くろの
ファンタジー
毎日更新!
葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。
職業 : 引きこもりニート。
親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。
異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。
しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。
だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。
そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い――
果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。
サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる