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小さい頃から繰り返し見る悪夢。

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 グロ、流血注意!少しエグめです。

 苦手な人は読み飛ばしてください。

__________

 大きな手が、鈍く光るのこぎりを振り下ろす。

 ザリッ!という感覚がして、首に走る激痛。
 ブチブチと肉が切断されて行く感触に、首から熱い液体が溢れ出て行く。
 痛みに泣き叫ぶ声は、声にならない。
 ごぽりとせり上がって来る血が口の中に溢れ、ひゅーひゅーと掠れた笛のような音が漏れるだけ。
 ガッとその刃が骨に当たるが、構わずにゴリゴリと刃が上下して、骨が削られて行く。

 ああ、首が斬られて・・・

 冷たい雨の中、打ち捨てられる。

「っ!?・・・ハッ、ハッ・・・」

 ドクドクとうるさい鼓動。
 思わず首に触れると、冷たい汗に濡れているだけだった。これは血じゃないし、痛くもない。

「夢…か。いつもの・・・」

 いつもよりもざらついた自分の声が気に障る。

 そう。あれは夢だ。
 大丈夫。落ち着け。

 首は痛くないし、血も出ていない。
 疵痕きずあとは残っているが、首は落ちていない。

「はぁ・・・」

 ゆっくりと、深呼吸をする。

 今は、深夜。ここは、家の中。

 このまま寝直す気にはなれない。

 窓を開け、蒼い夜空を見上げる。

 夜空は暗いというのが常識らしいが、オレは夜を暗いとは思わない。
 昔から夜目が利く体質で、星明かりだけでもかなり見通すことができる。
 外から柔らかい月明かりが差す。
 こないだよりも円くなった月が傾く。

 冷たい夜風が身に染みて、さっきの悪夢の余韻よいんを緩やかにさらって行く。

 あれは夢。
 小さい頃から繰り返し見る悪夢。
 覚えていない筈なのに、なぜか物心付く前からずっと見続けている悪い夢。

 本当にあったことではない筈の・・・

 赤ん坊の肉と骨は柔らかい。ゴリゴリと削られるような感触など、しない筈だ。きっと、切り落とそうと思えば、簡単に落ちる。

 だからきっと、あれはオレの作った記憶なんだ。

 オレの想像で・・・
 本当にあったことじゃ、ない・・・

 あの、鋸の刃に肉が斬り裂かれ、ブチブチと千切られて行く激痛も、骨が削られて行くようなおぞましい感触も、全部全部・・・

 生々しい感触のする夢を見ただけで、あれが本当にあったことだは限らない。

 カチャリと、静かにドアが開いた。

「!」

 ぼんやりとした白い顔の・・・

 赤みを帯びた瞳でソイツは、ドアを閉める。

 柔らかく微笑んで腕を広げ、オレを抱き締める。

 ゆっくりと白い顔が寄せられ、そして・・・

 首筋をくすぐる吐息。そっと唇が触れ・・・

「っ・・・」

 そしてオレは・・・

※※※※※※※※※※※※※※※

 パチリと目を覚ますと、朝になっていた。

 窓もドアも、ちゃんと閉まっている。

 夢を、見ていたようだ。

「はぁ・・・」

 だるい。

 首には、いつものように傷跡が残る。

 起きると、軽く目眩めまいがした。

 夢見が悪くて、寝不足のようだ。

 起きるには、まだ少し早い時間。

 もう少しだけ、寝ていよう。
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