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しおりを挟む「……なに勝手なこと言ってんの?」
「……そんなことは思っていなさそうだな」
「ええっ!?」
「はぁ……もう、アホ言ってないで行くよ」
「はい!」
と、異様にウキウキしているエリオットと踊ることになった。
後でまた、おばあ様に笑われそうだ。
ざわざわと保護者達から注目を浴びながらフロアへ移動し、エリオットとホールドを組む。生徒達からは、また面白いことをやってる、という期待と好奇の視線。黄色い悲鳴がした。
「思いっ切り楽しみましょう!」
「まぁ、ヤケクソでいいなら」
と、開き直ってステップを踏み出す。
「ふふっ、なにげに、僕が女の子のパートでハウウェル先輩と踊るのは初めてですね♪」
「ああ、そう言えば……そうだね」
エリオットとは何度か踊っているけど、考えてみればセディーのダンスレッスンに付き合うときにわたしが女性パートで踊ってリードされた。そして、後はお互いにセディー、テッド、レザンのパートナーとして女性パートを踊っていたから、わたしがエリオットをリードするのはこれが初めてとなる。
まぁ、なんだ。ぶっちゃけ、レイラ嬢と踊るよりも踊り易いかも。
男同士だからか、女性に気を遣いながら踊るよりもぞんざいな扱いをしても気が咎めないし。組手のときにはいつもぶん投げているということもあり、ターンのときに思いっ切り振り回しても、エリオットは楽しげに付いて来る。
おばあ様やケイトさん、偶に踊る他の女性を相手にするときよりも大股で大胆なステップ。ターンで遅れて翻る髪の毛。にこにこと笑顔のエリオット。体力配分も考えないで、全力を出す。
そうやって、一曲を踊り切ると――――
カツン、とヒールが鳴り、パチパチと拍手をしながらこちらへ向かって来るフロアクイーンの彼女。
「ブラボーっ!! 大胆で思い切った力強いステップ! されど荒々しさは感じられず、鋭くも気品を忘れない優雅さを兼ね備えた素晴らしいワルツでしたわ!」
その一言の後、盛大な拍手の音が響いた。
「さすが、ハウウェル様とフィールズ様! やはり、そのように麗しい容姿をされていてもハウウェル様は殿方なのですね! パートナーとして踊るよりも、リードをしているときの方が輝いていましてよ!」
いや、わたしは元から男なんですけどね?
「まぁ、前回のあれがイレギュラーなだけで、基本的にわたしは普段は男性パートを踊るのが当たり前ですからね」
嬉々として女性パートに名乗り出るエリオットは、どうか知らないけど。
「ふっ、今回でそう言った固定概念も覆ることでしょう! お二人のワルツはそのくらいに素晴らしいダンスでしたもの! けれど、わたくしも負けませんことよ!」
ビシッ! と、指を指され、
「ということで、わたくしと踊って頂けますでしょうか? ハウウェル様」
そのまま手を差し出された。
「え?」
「フィールズ様と『フロアクイーン』を競う公正さを期する為、わたくしもハウウェル様と踊るべきだと思うのですが?」
と、圧の強い眼差し。
「成る程です! 大丈夫ですよ、ハウウェル先輩が踊っている間、リヒャルト君は僕が責任を持って見ていますから! 安心してください!」
「ご協力感謝致しますわ、フィールズ様」
なんでこう、この二人は微妙に息がぴったりなんだろう・・・
「・・・わかりました」
「では、行きますわよ!」
と、『フロアクイーン』の彼女と踊ることになった。
「では、失礼します」
「遠慮は無用でしてよ!」
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