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「や、まずは管理人の許可と、狩猟の準備が先でしょ」

 思わずツッコミを入れると、

「え? なに? もしかしてハウウェルも乗り気かっ?」

 ぎょっとしたような顔が向けられた。

「別に乗り気ってワケじゃないけどね? あとキアン」
「ん? なんだ? 同志よ」
「エリオットは君の勢いに押されただけだから。まだ行くとは決まってないよ」
「そうなのか?」
「えっと、狩りをしていいか聞いて来ますね? だから、呉々も勝手に森には入らないでくださいね? キアン先輩」
「よかろう、では小動物よ。さっさと許可を捥ぎ取って来るがいい!」
「はいっ」

 と、エリオットがパタパタとリビングを出て行った。

「え? これ、マジで狩りする系な感じ?」
「……そのようだな」
「俺、狩りとかしたこと無いんだけどっ?」
「ふっ、案ずることは無い。俺は狩りのプロだ。お前らの面倒を見つつ、どんな猛獣とて狩ってみせようではないか!」
「や、駄目でしょ。素人連れて猛獣狩りに行くとか、危険極まりない。せいぜい採集くらいなもんじゃない?」
「なにを言う。素人に狩りを教えるのもまた、先達の務めであろう?」
「……そもそも、危険な猛獣は避けるべきだろう。俺は嫌だぞ、熊を狩りに行くなど」
「そうか? しかし、この人数の食料確保なれば、大物を仕留めた方が手っ取り早い」
「そんな熊に拘らなくても、鹿とか猪でもよくない?」
「まあ、それでもよかろう」
「あ、あとキアンはキノコ採取は禁止ね」
「なぜだ?」
「それは、君の方がよくわかってるでしょ」
「ふっ、俺の見分けが不安なれば、皆で見分ければいいのだ!」

 そうやってわちゃわちゃと話していると、

「うん? なにを見分けるんだ?」

 低い声が割り込んだ。どうやら風呂を出たらしい。

「キノコだ!」
「ふむ……キノコの見分けは、料理人に任せればいいのではないか?」
「だ、そうだぞ? 麗しき同志よ」
「まぁ、最終的な見分けは料理人に任せるにしても、毒キノコは極力持ち込まないに限るでしょ」
「うむ」
「ああ、そうだ。これも言っとくけど、蛙とかゲテモノ関係も拾わないでよね。そこまで食料が逼迫しているワケじゃないし。料理人にも捌けないようなものは採らないこと、いい?」
「ふむ……蛇は駄目か?」
「却下」
「うえっ!? 蛇食うのっ!?」
「ん? まぁ、かなり骨が多いから食うのが多少面倒な上、太い蛇でないと身が少なくて食いでがないが、普通に食えるぞ? 味は……そうだな。しっかりめの白身魚と似ているな」
「毒とかはっ!?」
「ああ、口の毒腺に気を付ければ特に問題は無い。身に毒は無いからな」
「マジでっ!?」
「……蛙だけでなく、蛇まで食うのか……言っておくが、俺は絶対に食わんぞ!」
「そう毛嫌いすることもなかろう。食わず嫌いはよくないぞ?」
「そういう問題じゃないと思うけどね? とりあえず、蛇も無し」
「狐や狼は……臭いな。狸や穴熊はどうだ?」
「ま、その辺りまでじゃない? 鳥とか、兎はOK」
「ふむ……帰らずに狩りをするということか」
「まあね。一応その方向で話はしてるけど、管理人の許可待ちってとこかな」
「成る程。武器はなにを持っている?」
「わたしはショートソードと短銃」
「ほう、俺は短剣を数本と刀子、ナイフ、吹き矢。目潰しに痺れ薬と眠り薬、麻酔薬。遅効性と即効性の毒が幾種類か……と言ったところだな」
「なんか物騒なんだけどっ!?」
「ん? 狩り・・をするときには色々あった方が便利だぞ?」

__________


 穴熊は熊と名前が付いていますが、イタチ科の動物でムジナとも呼ばれるそうです。

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