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「え? レイラ姉様?」
「ルリアはとっても賢い子だもの。エリーにできて、ルリアにできないことなんかないわ。レイラ姉様が保証する」

 驚きに目を丸くするルリア嬢に、にっこりと笑うフィールズ嬢。

「それに、もし万が一、ルリア一人では難しいことでも、エリーが……エリオットがルリアの隣にいれば安心よ。こう見えても、エリーってば結構頼りになるんだから。ね、エリー」
「ふぇ?」
「ふふっ……レイラ姉様には敵いませんね」
「当然じゃない。なんたってわたくしは、ルリアのお姉様ですからねっ」

 クスクスと笑い合う姉妹。

「ああ、エリー。ルリアのことを泣かせたら、わたくしがあなたを泣かせるから覚悟なさい」
「ひぅっ!?」

 ギロリと鋭い視線に睨まれ、息を飲むエリオット。

「ま、エリーにルリアを泣かせる度胸があるとはこれっぽっちも思ってないけど……でも、約束だからね? 絶対に忘れないでね、エリオット」
「ふぁいっ!?」

 フィールズ嬢は、妹思いのいいお姉さんのようだ。

 まぁ、ルリア嬢の言う通り。ちょっと残念さは漂っていて、この二人の力関係も透けて見えるけど。

 でも……なんだかんだフィールズ嬢もエリオットのことを認めているみたいだし。

 と、いい感じの雰囲気ではあるけど・・・ケイトさんが言ったのは、男に頼るなってことの筈なんだけどな?

 まぁ、対外的にはルリア嬢がフィールズ公爵家当主候補という話は出ていないから、もしかしたら予定通りにエリオットが公爵を継ぐのかもしれないけど。

 ああでも・・・やっぱり、エリオットが公爵というのは想像が付かないな? ルリア嬢が公爵になった方がいいと思う。

「では、以上のことを踏まえまして、ダンスレッスンを再開致しましょうか」

 クスリと笑うケイトさん。

 それから再開したレッスンでは、ステップなんか関係無く、各々好きなダンスを選んで踊った。

「ぼくも、ケイトねえさまとくるんってしたかったです……」

 と、不満そうな顔で大きめのくまのぬいぐるみとパートナーを組んでくるんと回しながら呟くリヒャルト君。

「わたしもリヒャルトと一緒に踊りたかったのですが……ああ、この身長差が憎いっ」

 どうやらリヒャルト君は、リードが腕を高く上げて、パートナーを潜らせてくるりと回るのを、ケイトさんにしてあげたかったようですが、如何せん身長差が・・・

 最初は、くまと踊るリヒャルト君を可愛い、尊いと言って喜んでいたのに。今はリヒャルト君よりも悔しそうな顔をしているケイトさん。

「ふむ……リヒャルト」
「はい、なんですか? レザンにいさま」
「くまを置いて、こっちに来るといい」
「? はい」

 きょとんとした顔でくまを置き、レザンの方へ寄って行くリヒャルト君。そして、

「わーっ、たかいですっ!」
「よし、セルビア部長」

 ひょいとリヒャルト君を抱き上げ、ケイトさんを呼ぶレザン。

「はい」
「リヒャルトと手を」
「え? はい?」
「? レザンにいさま?」
「これで、姉上とクルンができる」
「! ありがとうございますっ! ねえさまっ、くるんしてくださいっ!! くるんっ!」
「ふふっ、ありがとうございます、クロフト様」

 レザンが高く抱き上げたリヒャルトと手を繋いだケイトさんは、その腕の下を潜ってクルリと回る。

「わーっ♪」

 きゃっきゃと上がる喜びの声。それをみんなが、微笑ましく見守り――――

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