上 下
353 / 673

308

しおりを挟む


「嘘、だろ……アホの子じゃ、なかったのかっ……」

 零れるのは、ショックを受けたような呟き。

「え? 僕、アホだと思われていたんですか? 失礼ですよ? ね、ハウウェル先輩」
「まぁ、ほら? 言動のアホさと学力が比例しないこともあるからね。それにコイツ、本当に育ちは・・・いい・・んだよ。一応こんなんでも嫡男だし、家で質のいい教育を受けて来た結果じゃない?」
「ですよねっ。ちなみにですが、一体僕のどこを見てアホだと思ったんです?」
「ぁ~、まさに今?」
「??」

 残念なものを見るようなテッドの視線に、きょとんと首を傾げるエリオット。相変わらず、わかっていない感じだ。

「ま、それはおいといて。めっちゃ気になることがあるんだが、聞いてもいいか? フィールズ」
「あ、はい。なんですか?」
「なんでそんな育ちのいい坊ちゃんが、話聞くだけでもやべぇのがわかる騎士学校通ってたん?」
「そ、それはっ・・・」
「それは?」
「その……姉様達が、絶対に入れない場所だからです。寮制で、なるべく遠くの学校を探してたら、女性の全くいない学校の話を聞いて、すぐ入学を決めました。お父様には最初、かなり渋られたんですけど、姉様達におもちゃ扱いされるのが耐えられないって直談判したら、わかってくれました」
「ぁ~、ねーちゃん達が原因かー……」
「はい。あそこ、学校側に申請すれば家族の面会は認められているんですけど、若い女性の面会はなるべく控えるようにって保護者に通達があるんですよ」
「うむ。万が一の事態があってはいけないからな」
「へぇ、それは知らなかったな」
「え? 知らなかったんですか?」
「うん。まぁ……」

 わたしをあそこに入れた両親とは、まともに話したこと無いし。

「な、な、ハウウェルとはどうやって知り合ったん? さっき、弟子だとか言ってなかったか?」
「弟子じゃないんだってば」
「それはですね、騎士学校に入学当初、僕が同級生に女の子は出て行けって言われていじめられてて……コイツらの顔と名前を憶えて、お父様とお祖父様に報告してやるって思ってたときに」

 「……あれ?  フィールズ ってなんか、 結構腹黒い ?」

 話し始めたエリオットの言葉に、ちょっと引いた顔で零れる戸惑ったような呟き。

 だから、さっきから言ってるのに。エリオットは、公爵令孫で、伯爵令息。そして嫡男で、育ちが・・・いい・・って。言動は落ち着きが無くてすぐ泣くし、きゃんきゃんとウルサいけど、歴とした当主としての教育を受けている貴族子息だ。

 聞いての通り、権力でぶん殴ることを躊躇ためらう奴じゃない。こういうところは、ちょっとだけセディーに似ている。まぁ、エリオットは全然、これっぽっちもセディーの足元に及ばないけど。

 だから、言動の残念さなどでエリオットを舐めて掛かると、かなり痛い目を見ることになる。公爵令孫に手を出して、『知らなかった』では済まされない。

「ハウウェル先輩が通り掛かって、目障りだから失せろっていじめっ子達に言ってくれて」
「あれ? ハウウェルもなんか印象違くね?」
「ぁ~、あの頃はわたし、尖ってたからなぁ……」

しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」

みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」 ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。 「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」 王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

追放された令嬢は愛し子になりました。

豆狸
恋愛
「婚約破棄した上に冤罪で追放して悪かった! だが私は魅了から解放された。そなたを王妃に迎えよう。だから国へ戻ってきて助けてくれ!」 「……国王陛下が頭を下げてはいけませんわ。どうかお顔を上げてください」 「おお!」 顔を上げた元婚約者の頬に、私は全体重をかけた右の拳を叩き込んだ。 なろう様でも公開中です。

処理中です...