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「それでは、僕達はこれで失礼しますね。ケイトさん、決着はまたいずれ」
「まだやるのっ!? あの不毛な言い合いをっ!?」

 と驚くわたしに構わず、

「わかりました」

 静かに頷くセルビア嬢。

「ああ、そうです。ケイトさん」
「はい、なんでしょうか?」
「小さい子が小さいままでいるのは、存外短い時間なんですよ? 今のうちにリヒャルト君と目一杯一緒に遊んで、たっくさん可愛がって過ごすことをお勧めします」

 柔らかく微笑んで、リヒャルト君を見詰めるセディー。その表情は、どこか寂しげで……

「もっと一緒に過ごしたかったと、後でどんなに悔やんでも遅いですからね」
「セディー……」

 わたしがリヒャルト君くらいの年齢のときには、セディーと遊ぶどころか、長時間一緒に過ごすことも少なかった。

 普通の兄弟みたいに一緒に過ごせなかったことを、やっぱり後悔しているのか・・・

「ご忠告、肝に銘じておきます」

 寂しそうに微笑むセディーを見据えて、しっかりと頷くセルビア嬢。

「それでは、失礼します」
「ええ。ごきげんよう、セディック様。ネイサン様は、また学園でお会いしましょうね」
「はい。セルビア嬢もリヒャルト君も、お元気で」
「リヒャルト、お兄様方へご挨拶は?」
「またおあいしましょうね、おにいさまたち」

 ばいばいと笑顔で手を振るリヒャルト君に、

「ど、どうしようネイト! ぉ、お兄様って……っ!?」

 顔を赤くして口元を手で覆うセディー。

 「……か、 かわいい ……」

 どうやら、リヒャルト君の『おにいさま』呼びと屈託の無い無邪気な笑顔が、セディーのツボにハマったみたいだ。

「ま、また会いましょうね。リヒャルト君」

 と、慈しむような優しい笑顔でリヒャルト君へと手を振るセディー。

 そんなセディーを見て、勝ち誇った顔をするセルビア嬢。まぁ、いいですけどね・・・

 できれば、今度この二人が顔を合わせる場には、居合わせたくないなぁ・・・

 あの勢いでセディーに誉められ捲ったら、滅茶苦茶恥ずかしいからっ!? あんなの、聞いてるわたしの方がダメージを食らうよっ!!

 そして、お茶会からの帰り道は・・・セディーに構い倒された。

「安心してね! リヒャルト君のことは確かに可愛いと思っちゃったけど、僕が一番可愛いと思っているのはネイトだからね! リヒャルト君を抱っこしてみたいって思ったのも確かだけど、僕が一番愛してるのはネイトだからね!」

 ぎゅ~っとハグをされながら、熱く語るセディーの背中を宥めるように叩く。

「ぁ~、はいはい。わかってるわかってる」
「あらあら、今日はいつになくセディーが暑苦しいわねぇ。どうしたのかしら?」

 と、おばあ様に笑われましたけど・・・

 そんな印象的なことがあった長期休暇でした。

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰



 浮気じゃない。セディーの可愛いの対象が、ちょっと広がっただけ。(笑)
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