49 / 673
48
しおりを挟む知らなかったでは、済まされない。
本当なら、もう少し猶予はある筈だった。少なくとも、あと五年。余裕があれば七、八年程度は・・・
けれど、わたしも覚悟を決めようじゃないか。
「あぁ・・・お祖父様と、セディーと、よくよく話し合わなきゃ」
『セディーへ。
おばあ様が、「迎えはこちらから出すので、実家から迎えの馬車が来ても乗らないように」とのことです。
そして、重要な話があります。
ネイサンより』
そう簡潔に書いて封をして、手紙を出した。
セディーが帰って来たら、重要な――――父を追い落とす相談をしなきゃ、ね。
あの人は自分で社交もしないし、嫁の手綱も握れない……というか、そもそも握る気がなかった? かもしれないが……そんな風に我儘放題にさせている駄目嫡男という評価をされているけど、一応仕事だけはできるみたいだから、お祖父様が子爵位のままで置いていたというのに――――
「ごめんね、セディー……」
まだ存命で健康(特に大きな怪我や病気のない)で若い(四十手前)父を抜かして、更に若い十代のセディーがそのまま侯爵の後継にというのは、やはりそれなりに外聞が悪い。
仮令、既に高位貴族の間で「ハウウェル家の嫡男とその嫁は、アレな感じだからお付き合いは控えましょう」と、噂になっているとしても。
正式に後継から父を外すということは、家庭に問題があるということを公言するようなもの。
高位貴族の間だけで交わされていたその噂が、下位貴族や領民達にまで知れ渡ることだろう。
面白おかしく騒ぎ立てられるかもしれない。
おそらく、これからセディーにはかなりの負担を強いることになるだろう。
セディーの縁談だって、難しくなる。
年若い爵位持ちの貴族は、色々と大変だ。
他の貴族が恩着せがましく貸しを作ろうと近寄って来たり、ハニートラップ、身代を毟ってやろうという輩、弱味を握ろうとしたり、傀儡にしようと近付いて来る者、罠に掛けて貶めようという者もいるだろう。羨望され、嫉妬を買い、逆恨みだってされるかもしれない。
年若いというだけで、与し易いと侮られる。
だから、余程のことが無いと、十代で爵位を継ぐような事にはならない。
お祖父様やおばあ様の目も、常に行き届くワケではない。常に助けられるとは限らない。
だから、お祖父様はあんな父でも子爵位に留めていた。
「それでも、わたしは・・・」
この日、お祖父様とおばあ様は遅くまで帰って来なかった。
**********
11
お気に入りに追加
736
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は高らかに笑う。
アズやっこ
恋愛
エドワード第一王子の婚約者に選ばれたのは公爵令嬢の私、シャーロット。
エドワード王子を慕う公爵令嬢からは靴を隠されたり色々地味な嫌がらせをされ、エドワード王子からは男爵令嬢に、なぜ嫌がらせをした!と言われる。
たまたま決まっただけで望んで婚約者になったわけでもないのに。
男爵令嬢に教えてもらった。
この世界は乙女ゲームの世界みたい。
なら、私が乙女ゲームの世界を作ってあげるわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。(話し方など)
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる