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先程も『サファイラお姉様と一緒にお会いしませんか?』とお誘いしたのですが、『女装で会うのは嫌だ』とお断りされてしまいまして。
しおりを挟む「では、カモミールミルクティーをお願い致します」
ふわりと甘く香るカモミールティーに、ミルクと蜂蜜をたっぷり。
「ああ、いい香りですわね。それに、甘くて美味しい……」
「それはよかったです。カモミールは女性と子供のハーブと言われるくらいに優しいハーブで、心を落ち着ける効果や美容にもいいんですよ」
免疫向上やアレルギー症状を落ち着かせる効果もあるし。まあ、菊科植物にアレルギー持ってる人には逆効果だけど。
ちなみに、菊科植物は意外なものもあったりする。春菊は有名だけど、レタスやゴボウ、フキ、菊芋なんかも実は菊科植物だったりするのよねー。春菊やレタスの臭みが苦手で、食べると吐き気がするという人は、一度菊科アレルギーを疑った方がいい。
「そうなのですか?」
「ええ。蜂蜜も、他の甘味料よりは健康にいいんです。お砂糖の代わりに蜂蜜を食べるようになって、痩せたという人もいますし」
「まあ! 知りませんでしたわ」
「ふふっ、でもお砂糖より健康にいいからと言って、食べ過ぎは禁物ですけどね? 何事も程々が一番ですわ。それに、蜂蜜は原料の花によっては身体に合わないどころか、いきなりショック症状を起こしてしまうこともあるので、気を付けませんと」
「え?」
「蕎麦の蜂蜜やナッツ類の花の蜂蜜は特に気を付けなければいけませんのよ。蕎麦やナッツ類を食べると、呼吸困難や蕁麻疹が出てしまう方は、蕎麦やナッツ類の花から採れた蜂蜜も危険ですの。そういう意味では、百花蜂蜜にも注意が必要ですわ。なにせ、百花蜂蜜はその名の通り、様々な花から採取された蜜ですもの」
蕎麦やナッツ類は、アレルギーが強烈に出ることで有名だし。蕎麦やナッツ類の加工品も厳禁。無論、蜂蜜とてそれは変わらない。昔、探偵物であったのよねー。蕎麦アレルギーの人にメープルシロップを装った蕎麦蜂蜜を摂取させてアナフィラキシーショックで殺すってトリックが。それから、蜂蜜の原料でもアレルギーが起こるってことが有名になった感じかしら?
「ネロ殿下はとても物知りなのですね」
「ふふっ、大抵が本の受け売りですわ。ああ、そうです。一つ、言い忘れてしまいました」
「なにをでしょうか?」
「実は、カモミールミルクティーにはちょっと困った副作用がありまして」
「副作用、ですか?」
「ええ。実は、カモミールミルクティーは飲むとリラックスし過ぎて眠くなってしまうのですわ。眠れないときに飲むと、人によってはすぐにうとうとして、ぐっすり眠ってしまうらしいのです。わたくしも、夜寝る前に飲むとあっという間に朝が来てしまうのです」
まあ、子供だからあんまり遅くまで起きてられないってのもあるだろうけど。
「あらあら、可愛らしい副作用ですわね」
クスクス笑うフィーラちゃん。
「ふふっ、そうです、サファイラお姉様。お姉様は、いつまでこちらへ滞在なさるおつもりでしょうか?」
「そうですわね……お父様に確認してみませんとなんとも」
「そうですか。わたくしとお兄様達も、あと数日はこちらに滞在する予定ですの。サファイラお姉様さえ宜しければ、明日もわたくしとお話してくれませんか? あ、サファイラお姉様や公爵様に他のご予定があるのでしたら、勿論そちらを優先させてくださいませね?」
「その……わたくしも……ネロ殿下が宜しければ、もっとお話してみたいですわ」
「わぁ! 本当ですか? 嬉しいです♪それで、ですね……あの、サファイラお姉様が嫌じゃなければ、わたくしのお兄様も同席しても宜しいでしょうか?」
「ネロ殿下のお兄様、ですか?」
「はい。あの、お兄様と言っても、うんと年が離れているワケではなくて、シエロお兄様とは数ヶ月しか変わらなくて同じ年齢なんです」
「まあ……ネロ殿下と同じお年のお兄様ですか」
「はい。実は、先程も『サファイラお姉様と一緒にお会いしませんか?』とお誘いしたのですが、『女装で会うのは嫌だ』とお断りされてしまいまして」
蒼には、「ぁ~……まあ、状況聞くとお嬢さんが男苦手になる気持ちもわからなくはないけどさ? お前は俺に女装強要すんな、ネロ。ってことで、パス。普通の格好でOKなら会うわ」と、断られた。グレンも、「シエロ様が行かないなら俺も」と、断られた。まだ女装で、とは言ってなかったのに~。
「ええっ!? ネロ殿下はお兄様にも女装のお誘いをしたのですかっ!?」
「はい♪シエロお兄様は女の子みたいに可愛らしいお顔をされているので、女の子の格好がとっても似合うと思うのですが。至極残念ですわ。ちなみに、シュアンにも断られました」
そして、アーリーたんの女装はなんかこう、ガチで洒落にならなさそうなので自粛。まあ、無理にお願いしたらやってくれそうではあるんだけど……涙を飲んで自重したあたし偉くないっ!?
「当然です。ネロ様やシエロ王子のような……まだお子様が女装するなら兎も角、なぜわたしまで女装しなければいけないのですか」
もう、そんなに嫌がらなくてもいいのにー。
「ふっ、それは当然サファイラお姉様への気遣いですわ!」
「どのようなお気遣いですか、それは……全く、ネロ様は偶にとんでもないことを言い出して困ります」
「ふ、ふふふふふふふっ……ウェ、ウェイバー様にまで女装をお勧めしたのですか? ネロ殿下は」
口許を押さえ、上品に笑いを堪えようとして、けれどクスクスと笑ってしまっているフィーラちゃん。
「大丈夫です。シュアン、可愛いは作れるのですよ? 普通のお顔でも、お化粧すればあらビックリ! 美人さんへと化けられるのです! そう、シュアンは素材がいいんですもの! きっと化けられる筈!」
「ふふふふふふふっ……た、確かに。お化粧したお顔と素顔が別人という方は、偶に、よく、いらっしゃいますものね……うふふふふふっ……」
「ですわよね?」
「わたしがシュアン・ウェイバーだと判らなければ、サファイラ様にお会いする意味が無いのでは?」
と、ちょっとムッとしたような視線。
「と、まあ。シュアンが嫌そうだったので、本日のシュアンは普通の格好なのです!」
「ふふふふふふふっ……ウェイバー様が、ネロ殿下と良好な関係をお築きのようで安心致しましたわ」
「ご心配をお掛け致しました」
「悪いのはどこぞのクズな元王太子なんですけどね?」
「く、クズだなんて……そん、な……うふっ、ふふふふふっ……」
「ふっ、クズのやったことはクズの所業ですもの!」
「……サファイラ様、申し訳ありません。ネロ様は偶に口が悪くなるもので」
「い、いえ……うふふっ……」
「ちなみに、本人に直接言うのは憚られる言葉でも、心の中で大いに罵倒するのはセーフです。まあ、口に出さないよう気を付けなければいけませんけれど。でも、心の中で『このクズ野郎が!』って思うだけでも、多少はスッキリしますわよ?」
「サファイラ様になんてことを教えているのですか、ネロ様は」
「ふふっ、皆さんには内緒ですわよ? サファイラお姉様」
「はい」
「では、そろそろサファイラお姉様をお帰ししませんと。この辺りは治安が悪くないとは言え、あまり遅くなっては大変ですものね」
「ぁ……その、わたくしがお見苦しいところを」
申し訳なさそうな顔をするフィーラちゃんを遮って言い募る。
「いえいえ、サファイラお姉様とのお話が楽しくて、少々時間が経つのが早かっただけですわ。それに、またサファイラお姉様とお話できるなら嬉しいですもの」
「ええ。公爵閣下にも、ネロ様がまたサファイラ様とお話がしたいとお伝え願いますか?」
「はい、本日はありがとうございました」
「では、また後日。あ、わたくしは明日でも全然構いませんよ? 公爵様にわたくし達の連絡先はお伝えしているので、お姉様の気が向いたらいつでも連絡くださいな?」
きゅるるんおめめで言うと、フィーラちゃんは瞳をキラリと輝かせて頷いた。
「はい、父に伺ってみますわ。では、長々と失礼致しました」
と、帰って行くフィーラちゃんを見送った。
うん、感触としては悪くないわね♪
「……ネロ様は、次回もサファイラ様と女装でお会いするつもりで?」
「ふふっ、さあ? どうでしょうねぇ……シュアン。心に負った傷とは、目には見えないものなんですよ? 先程のサファイラ嬢がシュアンと接するのが平気だったからと、他の若い男性と接することに苦痛を覚えないとも限りません」
「……若い男性、ですか。若いどころか、ネロ様はお子様の範疇なのでは?」
「まあ、その辺りはお気になさらず。というか、幾ら子供とは言え、次回はシエロ兄上にグレンさんも同席します。場に女性一人より、わたくしがいた方がサファイラお姉様の気が楽になるのではなくて?」
「……ですから、わたしにまでその口調はおやめください」
「はいはい。それじゃあ、次はどのドレスにしましょうかねー?」
「全く、ネロ様は……」
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
サファイラ「ええっ!? ネロ殿下はお兄様にも女装のお誘いをしたのですかっ!?」Σ(*゜Д゜*)
ネロ(茜)「はい♪シエロお兄様は女の子みたいに可愛らしいお顔をされているので、女の子の格好がとっても似合うと思うのですが。至極残念ですわ。ちなみに、シュアンにも断られました」(*´艸`*)
シュアン「当然です。ネロ様やシエロ王子のような……まだお子様が女装するなら兎も角、なぜわたしまで女装しなければいけないのですか」( ・`д・´)
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