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相手へ好意を持っているからこそ食べさせたいということです! つまり、愛情表現の一種!

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 視点変更。

――――――――――――

 積み上がった書類の山に最初はライカがちょっと泣き入ってたけど、なんだかんだねーちゃんに転がされていいように働かされている。

 不意打ちでお菓子を無理矢理食された後、ライカも無理矢理あ~ん攻撃を食らっていた。恥ずかしそうだったが、どことなく嬉しそうにも見えた。

 ネロリン信者の侍女(過激派)がねーちゃんにお菓子をあ~んしたいと言って、食べさせた後に真っ赤になってぷるぷるしてたが、あれ大丈夫か?

 そして、お菓子の屑を書類に零されては困るとシュアンに注意された。もっともだぜ。

 そんなシュアンにもあ~んするかとねーちゃんが聞くと、侍女の顔が一瞬で真顔になってシュアンには必要無いと鋭く言い切った。ちょっと殺気とか出てなかったか? アレ。

 シュアンは引き攣った顔で断っていたが、ねーちゃんはちょっと残念そうだった。

 それから、テーブルを移動してアストレイヤ様も入れて休憩。

「随分と仲が良さそうだな」

 珍しく柔らかい表情でライカと俺達を見詰めるアストレイヤ様。

「勿論、わたし達は仲良しですからね!」

 ふふんと胸を張って答えるねーちゃんに、ライカは照れているようだ。

「あ、アストレイヤ様もあ~んします?」
「ククッ、わたしにそんなことを言うのは君だけだぞ。では、君のお勧めを頂こうか」
「はーい。あ、なにか苦手な食べ物とかありますか?」

 うっわ、アストレイヤ様にまであ~ん攻撃かますのかよっ!?

 今ちょっと、アストレイヤ様の使用人達の空気がめっちゃピリッとしたぞ! 全く気にした様子のないねーちゃんは図太いぜ。多分、な~んも考えていないか、女子会的な『これ食べてみない? 美味しいよ♪』の、ノリなんだろうなぁ。

「いや、大丈夫だ」

 アストレイヤ様の言葉で、部屋のピリ付きが多少緩和される。

「それじゃあ、ベリーのタルトなんかは如何でしょう? 甘酸っぱくて美味しいですよ♪ブルーベリー、クランベリーは目にいいし、苺は美容にいいんですよ」

 ねーちゃんはアストレイヤ様の使用人が差し出したお菓子の中からにこにことベリーの一口タルトを選び、

「はい、あ~ん♪」

 アストレイヤ様の口元へ持って行く。

「それは知らなかったな。ありがとう」

 そう言って、パクリとタルトを口へ入れるアストレイヤ様。

「ん、美味しい」

 美女が美味しそうに食べる姿……いい! 中身がねーちゃんだと思えば、ちょい百合っぽいってとこもナイスポイントだな! ネロも美幼女に見えなくもないし。目の保養になるぜ。そう言や、さっきの過激派侍女のあ~んも百合っちゃ百合か。

 一応、他にも侍女とかいるんだけど……だがしかし、女の子がただ並んでいるだけでは百合とは言えない! いや、百合フィルター的なもので見る分には見えるかもしれんけど。

 だが、俺的には、百合にはなんらかの情が必要不可欠だと思っている!

 そう、百合ップル好きには美味しい恋愛感情は無論のこと。友情や姉妹愛、先輩後輩の関係、慈しみ、ときには妬み嫉みなどの嫉妬という負の感情。それらが女の子同士の百合には必要!

 だというのに、城で働いてる……俺が見えるとこにいる女性使用人達はこう言ってはなんだが、プロフェッショナルなんだ。隣にいる女の子のことをどう思っているか、なんて表情を表に出してくれない! そこが残念だぜ!

 な~んてことをぼんやり考えながらねーちゃん達を見ていると――――

「なんです? シエロ兄上もまたあ~んしましょうか?」

 にっこり……いや、ニヤニヤとねーちゃんがお菓子を持って近付く。

「それは要らん。他を当たれ」
「え~? だって、あんなに羨ましそうにじ~っと見てたじゃないですか? ね、ライカ兄上」
「へっ? え? あ、うん」

 サッと顔を赤くするライカ。

「や、俺というより、ライカ兄上の方が羨ましそうな顔してたんじゃないですか?」
「っ!?!? なっ、なに言ってるのシエロっ!?」

 おお、これは図星か。これは……あ~んしてたねーちゃんが羨ましいのか、それともアストレイヤ様にあ~んをしてもらいたいか、もしくは両方羨ましいか、だな。

 ねーちゃんと俺がアストレイヤ様に付く前は忙し過ぎて、ライカはあまり構ってもらえてなかったっぽいし。寂しい思いも沢山していたんだろう。

「なんだ、ライカも食べるか?」
「えっ!? そ、その、母上? 僕は食事の介助が必要な、もうそんな小さい子じゃありませんよ!」

 おお、照れての拒否か。だが、言った後で寂しそうな表情してるのが諸バレなんだが?

「そ、それに……」

 うん? チラッと俺とねーちゃんを伺うような視線。ああ、気ィ遣ってんのか。シエロは母親死んでるし、ネロねーちゃんは実母に育児放棄ネグレクトを受けていた。

 そういうとこ、ライカは割と繊細だよなぁ。

「ふっ、ライカ兄上はわかってませんね」

 ふふんとねーちゃんが口を開く。

「へ? なにを?」
「小さい子ばかりがあ~んをするワケじゃありません! 誰かにあ~んをしたいと思うのは、相手に美味しい物を食べさせてあげたいだとか、食べ物を共有したいという気持ちの表れ! 相手へ好意を持っているからこそ食べさせたいということです! つまり、愛情表現の一種! まあ、偶~に不味い食べ物を食らわせてやるという悪乗りなどもありますけどねっ☆」
「あ~、仲間内でクソ不味いもの食わせ合いすることはあるよなー。この不味さをお前も味わえ! ってやつ。偶~に悪乗りが過ぎて拷問になるのな」
「え? ご、拷問っ!?」
「つっても、それもある意味仲がいいからできるふざけ合いなんだけど」
「そう、食べさせ合いっこは仲良くないとできないことなのです! というワケで、ライカ兄上もあ~んしましょうよ♪」
「ええっ!? で、でも、その……」
「あ~んしてもらうのが恥ずかしいなら、あ~んする方になればいいのです! されるより、する方が比較的恥ずかしくない筈! 多分ねっ☆」
「ククッ……成る程。では、わたしに食べさせてくれるか? ライカ」
「ぅ、ぁ……では、そ、その、母上はなにが、食べたい……ですか?」

 あ、ねーちゃんに言い包められてやっちゃうんだ。しかも、めっちゃ真っ赤な顔して恥ずかしがりながらとか素直かっ!

「では、ライカのお勧めをもらおうか」

 アストレイヤ様も嬉しそうだし。

 ん~……もしかしてこれ、『ライカ健全育成計画』の一環か? 確か、幼少期に自分は誰かに愛されていたという実感を持つのは、大事なことだっていうし。まあ、『あたしが楽しいから♪』という理由の方が大きそうな気もするが。

 照れっ照れの真っ赤な顔で選んだお菓子をどうぞとアストレイヤ様へあ~んするライカ。そして、

「し、シエロも母上にあ~んするっ?」

 なぜか俺を巻き込もうとするし。

「あ、俺はいいです。見てる方が楽しいので。な、ネロ?」
「はい、すっごく楽しいです♪」
「っ!?」

 と、真っ赤になったライカを見て、みんなでによによしていた。

 まさか、これが若干面倒なことになるとは思ってなかったぜ。

 ねーちゃんの計画を詰められるだけ詰めて離宮うちに戻ると・・・

「シエロ様、あ~ん」

 夕食のとき。なにをとち狂ったか、グレンがめちゃくちゃイイ笑顔で嬉しそうに俺に人参の刺さったフォークを向けて来た。

「あ、そういうの要らんから。自分で食べるし」

 そうスルーしようとしたら、

「くっ!? ネロ様からのあ~んは食べたのに、俺からのあ~んは食べられないって言うんですかっ!?」

 顔を歪めてグレンが言った。

 なんかめんどくさい絡み方されてんなぁ・・・ねーちゃんめ!

「じゃあ、お前。今日の夕食、自分のお母さんに全部食べさせてもらって来い。そしたら考えてやる」

 尚、コイツがそんな羞恥プレイをしたからと言って、俺がコイツから食わせてもらうとは一言も言ってない。考えてやると言っただけだ。無論、普通に断る。まあ、最悪、怪我や病気でもして起き上がれないとか手が動かせない事態にでもならん限り、コイツの世話にはなりたくない。

「っ!?」

 チラリと逡巡するように自分の母親を見やるグレン。

「グレン、自分でお食べなさい」

 おお、バッサリと断られたな。

「……はい」
「シエロ様へお食事を給仕するのは、わたくしの役目ですからね」

 まあ、俺の世話が乳母であるグレンの母親の仕事だもんな。

「くっ……」

 うん? なぜか悔しげに自分の母親を見やるグレン。

「早くお食べなさい。片付かないではありませんか。シエロ様、新しいフォークをどうぞ」

 と、グレンに奪われていたフォークの替えを持って来てくれた。

 ふぅ……これで普通にめしが食えるぜ。

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 グレン「シエロ様、あ~ん」(*´∇`*)

 シエロ(蒼)「あ、そういうの要らんから。自分で食べるし」(꒪꒫꒪)

 グレン「くっ!? ネロ様からのあ~んは食べたのに、俺からのあ~んは食べられないって言うんですかっ!?」((ヾ(≧皿≦メ)ノ))

 シエロ(うっわ、めんどくさっ!?)Σ(`Д´ )

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