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ぷふっ!? 王太子のクセにばっちいもの扱いされてやんのっ!

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「ま、待って! あの、アーリーお兄ちゃんにお礼をしたいの! だから、ちょっとお部屋でお茶を飲んで行かない?」
「え?」
「そ、その……実は、お父さんとお母さんが仲が悪くて。今日はあたし達だけでホテルに泊まってるの。だから、ちょっと寂しくて……」

 実際は、仲悪いどころの話じゃないんだけどねー?

「そうだったんですか……わかりました。ご迷惑じゃなければ、少しお邪魔してよろしいでしょうか?」

 寂しそうな顔に絆されたのか、躊躇う様子もなくOKするアーリー。

 よっしゃ! ひとまずの保護成功♪

「勿論♪それじゃあ、準備してもらうから待っててね! シェンお兄ちゃん、グレインお兄ちゃん。アーリーお兄ちゃんの相手をお願い」

 と、蒼に任せてアーリーを部屋へ招き入れ、あたしはあたしで使用人と話をする。

「ネロ様……」

 深刻な顔であたしを見下ろすのは、おじさま執事。

 探検を見守っていた護衛によると、やっぱりあの灰色髪、アッシュブルーの瞳の傲慢そうな顔をした男は隣国王太子のクラウディオで間違いないそうだ。

 アストレイヤ様の外交に付いて行ったことのある人が、クラウディオの顔を知っていた。それで、大慌てで執事に報告に来ていたらしい。

 無論、アストレイヤ様に大至急の報告案件発生。

 ついでに、あたしの手を払ったクラウディオに対し、「あの野郎許さんっ!!」と、探検するあたし達を見守って尾行していたネロリン信者がキレていたのだとか。

 仮にも隣国の王太子である為か、「クラウディオあの野郎の守りは固そうなので、やめておきなさい。ネロ様の守りを疎かにすることはできません。今は耐えるのです。いつか確実に仕留る為に、情報を集めるのです」と、侍女長に説得されたとのこと。

 なので、即行でクラウディオの情報収集に務めたみたい。まあ、町中にもあちこち護衛が点在していたからなぁ。当然、ホテル内にも護衛はいることだろう。姿が見えなかったのは、クラウディオがアーリーを部屋へ連れ込む為にあらかじめ追い払っておいたからかもしれない。

 ちょ~っと、ネロリン信者のクラウディオに対する殺意的な憎悪を感じるような気もするけど・・・ぶっちゃけ、お忍びとは言え王太子が他国で事故に遭ってなにかあったら国際問題持った無しになるのは明確。

 下手なことはしないで正解だ。

「危ない真似はしないでくださいね?」

 と、言っておいた。感激の顔で、

「はい! これからもネロ様に尽くします!」

 という大変元気なお返事。

 ホテル従業員からの情報収集(めっちゃ聞き耳立てたらしい)によると・・・なんつーか、アレだわ。

 ガチで、クラウディオ爆散しやがれっっ!!!! な気分になった。

 なんでも、この町に滞在すること数日で・・・既に数人の美少年を部屋に連れ込んでいるそうだ。

 クッ……遅かったか。もう数名の見知らぬ美少年がクラウディオの毒牙にっ!?

 過ぎたことはしょうがないけど。もうちょっと早く来てれば、間に合ったかもしれないわね……

 そして、さっきのアーリー連れ込み未遂事件に、ホテルの従業員はげんなりしていたのだとか。仮病を使っての手口を見たことがあるのなら、さもありなん。

 最初は客としてクラウディオのことを心配して医者を手配したそうだけど、邪険にして追い払われたのだとか。けれど、お部屋の清掃で事情を察した、と。

 普通に、滅茶苦茶厄介な客だな!

 さっきの今という短時間でよく調べたわねー? と感心していたら……奴がまた同じことをしてあたしがホテルの人を呼んだので、けんもほろろに追い返されていたそうで。従業員の人が小さくぼやいていたという。

 ホテルマンとしてはちょい迂闊だけど、こちらとしてはラッキー。ま、クラウディオは従業員が思わずぼやいちゃうくらいに厄介で、ホテル側に嫌われている客だという見方もできるわよねー。

「幾らネロ様が傷病人を放ってはおけないお優しい方だとしても、アレは絶対に仮病です。なので、あのような穢らわしくてばっちいものは、二度と触っていけません! ネロ様が穢れてしまいます!」

 と、クラウディオのセクハラからアーリーのお尻を守る為に奴の手を握った両手を取られて、侍女にめっちゃ丁寧に消毒された。

 ぷふっ!? 王太子のクセにばっちいもの扱いされてやんのっ!

 ま、普通の感性を持ってる女の人からしたら、婚約者いるクセに浮気する野郎は嫌に決まってるわよねー。

 やっぱ、スパダリは一途に限るもの! 浮気や遊びで純情な男の子達に手を出すだなんてもってのほかっ!! ちなみに、女の子に手を出すのも言語道断っ!! 絶許っ!!

 お姉ちゃん、ヤンデレは大好物だけど愛の無いBLは反対よっ!!

「ネロ様、このままではあの少年の身が危険かもしれません」
「そうですね。断定はできませんが、隣国の王太子……かもしれない人物に目を付けられるのは、非常に厄介ですからね。誰か、彼のご両親へ連絡を。迎えに来てもらいましょう」

 とは言え、おうちに帰したところで安心できない! というのがあたしの本音ではあるけど。なにせ、お忍び旅行中でもクラウディオの奴は隣国王太子だからなぁ。騒ぎを起こしたくはないだろうけど、犯罪紛いのことをしないとは言い切れない。

 ほら? 犯罪って、発覚しなきゃ問題無いとか思ってるような『倫理観? なにそれ美味しいの?』的なやべぇ輩は存在するし。

 王家の影的な? 暗部と称されるような存在も、いたりするかもだし。さすがに、色ガキ王太子の性癖だか色欲を叶える為に国の裏組織が動くとは思いたくないけど・・・でもアイツ、国王になったらシエロたんを自国に連れてく為に割と手段を選ばないからなぁ。

 うん。全く信用できねぇっ!!

「彼の家は商家だそうです。どうせなら、商談込みで彼ら一家を物理的にこの地から離れさせましょうか。王都へ向かうよう、仕向けてください」

 王都に行けば、さすがにクラウディオも手を出せない筈。アーリーの保護&ここの領主がアストレイヤ様の離宮に卸している食料品に対する、横領疑惑の足掛かりにもなるだろう。これぞ、一石二鳥♪

「了解しました。では、早速交渉へ行って参ります」
「はい。お願いしますね」

 さて、使用人達との密談も終わったことだし、お待ちかねのアーリーたんとティータイム♪

――――――――――――


 侍女「いいですか、ネロ様。あんなばっちいもの、もう触っちゃ駄目ですからね」( ・`д・´)

 ネロ(茜)「ぷふっ!? 王太子のクセにばっちいもの扱いされてやんのっ!」(((*≧艸≦)ププッ

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