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それ、絶対偶々じゃないやつ。ねーちゃん、確実にストーキングされてね?

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「なにげにガチの視察だったっ!!」

 ふっ、なにせお姉ちゃん、実はこの視察団の全権を任されてますから!

 アストレイヤ様もホント、思い切ったことするわよねー? 普通は、王子(名ばかり責任者)とは別に名代を決めて、責任の割り振りするでしょうに。ネロたんの第三王子としての権限の他に、正妃の名代としての権限をあたしに貸し出すだなんて――――

 アストレイヤ様ったら、ものっそいギャンブラーじゃないかしら? ま、あたしとしても、失敗するつもりはさらさら無いし・・・クソ親父の派閥のおっさん共の勢力削ぐ気満々だけどっ☆

「ええ。それに、孤児院や救貧院の待遇があまりにも酷い場合には、彼らを買い取ってうちの農場や牧場へ送ることも考えています」
「それ、人身売買になるんじゃ……」

 蒼が顔を引き攣らせる。

「そうですね。金銭で人が売買されるということが横行しているのであれば、それは立派な犯罪行為ですね? アストレイヤ様に報告です」
「それは……ネロ様が犯罪に問われるようなことはありませんか?」
「ええ。囮捜査の一環と見倣されるかと」
「ぅわ……どっちみち、訴える気満々」
「不正をしていなければ、なにも問題ありません。違いますか?」
「そりゃそうなんだけどなー……って、もしの話だが。その、買い取るつもりの人達はどうすんだよ? このままぞろぞろ連れてけるワケねぇだろ」
「ああ、その辺りについても考えがあります」
「え? どうするおつもりですか? ネロ様」
「実は、偶々休暇中のうちの使用人を見付けたので。彼らにお願いしようかと思いまして」
「は?」
「え? ネロ様の使用人、ですか?」
「ええ。休暇中にこのようなことを頼むのは心苦しいのですが、視察団の方は基本的にアストレイヤ様の指揮系統の方々なので。持ち場を離れるワケにはいかないでしょうし」

 まあ、ぶっちゃけ……アレだ。視察中に、あたし達を凝視していた不審者として、護衛のおじさま達に声掛けをされた人が数名程いた。

 そして、その身分を確認したら……なんとびっくり! 「わたしはネロ様にお仕えしている者です」と、側妃宮うちの使用人だと堂々主張したので、同行している別の使用人に確認取ったら、マジでうちの使用人だったそうです。

 なんでも、「ネロ様視察旅行に置いて行かれたっ!!」と、ショックを受けたお留守番組の中から、「だったら……休み取ってプライベートで追い掛けりゃいいんじゃね?」「お前、天才かっ!!」という風な会話があったとかなかったとかで――――

 実際、ここに数名いるんだから、なんとも言えないわよねー?

 ほら? 「プライベート中です」って言われたら、文句は言えないし。

『それ、絶対偶々じゃないやつ。ねーちゃん、確実にストーキングされてね?』
『ふっ、今更ね。王族なんて堅苦しいものに生まれちゃったからには、影から見守る護衛という名目のストーキング&スニーキング行為もある程度は許容しなきゃいけないと、常々覚悟はしていたわ』

 多分、第一王子であるライカ程には厳重に守られてはいないと思うし。

『や、ねーちゃん……っつーか、ネロリンの場合は信者だったか』

 蒼はドン引きしている。

『そうとも言う。あと、どうせいるなら扱き使っちゃえばいいと思って。ちなみに、喜んで使われてくれるそうよ?』

 お願いします、とありがとうございます、を笑顔で言っときゃ、喜んで言うこと聞いてくれるし? さっすが神秘的美幼児なネロたんのエンジェリックスマイルね♡効果は抜群! プライスレス♪

『ぅっわ……マジか』
『マジね』

 コクンと頷くと、

「あの、シエロ様? ネロ様? お二人でなんのお話を?」

 遠慮がちにグレンが割り込む。

「ぁ~……いや、なんでもない」
「ふふっ、お休みの方々を使っても、本当にいいのか? と。シエロ兄上が」
「そうでしたか。シエロ様はお優しいですからね」

 どこか自慢そうに微笑むグレン。

 ま、実際はネロリン信者にドン引きしている、の図なんだけどね!

 というワケで、あたし達をストーキングしているネロリン信者へ孤児院や救貧院の調査、そして調査結果によっては孤児達をライカ農場(仮)へ送るというミッション。オマケにアストレイヤ様への報告書の作成も任せた。

 一応、側妃宮うちの使用人達だけじゃ信用に欠けると思うので、後でアストレイヤ様のとこの誰かが呼ばれる予定だ。

 で、諸々の対応を任せた上で、あたし達は先に進む。

 やー、やっぱ予算が適切に使われてるとこばかりじゃないのねー? ちみっ子達を劣悪な環境に置き、要らないというのであれば、あたし達が貰って貴重な労働力として大切に育ててあげるんだから!

 そして、あとでバッチリ国家権力でお仕置きされちゃうがいいわ!

 そして後々、彼らを買い取るときに支払った代金も返してもらう予定だ。懐も痛まない上、お子様達の保護として労働力も増えて、これぞまさにウィンウィンというものよ♪

 フハハハハハハハハハハっ!!

 こんな風にして、道々の町で買い食いやら道草を食いながら、どこからともなく湧いて出て来るネロリン信者を使って視察旅行の名目を果たして――――

 やって来ました! クソ親父ことレーゲン国王派閥の貴族領!

♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘


 蒼「信者なストーカーとかマジ怖いんだけどっ!!」(ll゚Д゚)怖ァ

 茜「あら、二十四時間密着粘着ストーカー近衛騎士も似たようなもんだと思うわよ?」ꉂ(ˊᗜˋ*)

 蒼「だ、大丈夫だ。た、多分……あと十年以上も猶予があるんだっ!! 絶対、グレンルートには入らねぇからっ!!」( º言º; )"


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