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遊び場。

※本編とはあんまり関係無いお正月企画。お遊び第十一段。

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 ある年の十一月、某日。

「・・・今年も、そろそろあの時期が来ますか」

 考えるだけで憂鬱ゆううつな気分になり、思わず溜め息が零れます。

 毎年毎年、十二月という時期は酷く忙しく、忙殺されていると言っても過言ではありません。

 なぜか、アンデッドの吸血鬼達の能力が著しく低下して弱体化する時期なのです。
 理由としてはおそらく、生前の宗教観の影響なのだと思われますが、個体に拠っては体力面で人間以下に成り下がるモノもいて、仕事になりません。

 なので、まずは仕事の割り振りの調整を考えなくてはいけません。

 そして、更にこの時期がクソ忙しくなる要因がもう一つあるのです。

 我が血統の始祖である真祖の君。

 の君対策で、エレイスの上位三人であるスティングさん、クレアさん、そしてハルト達一家が十二月の下旬から特別哨戒しょうかい任務に就くので、彼らのスケジュール調整と、その穴を埋める為の人事をどうにかしなければいけないのです。※狼一家のこの時期の過ごし方の詳細は、前回お遊び企画をご参照ください。この時点のフェンネルは、全く知りません。

 人外の犯罪者達を取り締まり、場合に拠っては始末する組織の、実質的なトップの三人が抜ける穴は大きく、その調整はとても難しいのです。

 しかも、人手不足の時期に!

 なので、犯罪者達や問題を起こすクソ共の実力の程度と状況、場合に拠っては、僕や父上が現場に出ることもあるのです。純血のヴァンパイアや、それに相当する厄介な連中を相手に・・・
 厄介なモノに実力の足りないモノを当てても、人手が減るだけなので、そういう場合には自分で出てさっさと始末した方が効率的ですからね。

 厄介なモノを相手取るのはそれなりに面倒なのですが、真祖の君対策というのならば、仕方がないのです。我が血統の根絶やしを狙うの君を、警戒してし過ぎということはないでしょうからね。

 全く、毎年頭の痛い時期です。

 というワケで・・・

「・・・ストレス解消を兼ねて、あのアクセルヘタレ野郎へ嫌がらせを仕込みましょう・・・」

 僕が忙殺されているあの時期に、椿達と一緒に過ごすなど、絶対にゆるしません!

 そして、十二月が終わると一月ですからね。

 ヤマト出身の椿は、新年を家族で祝う為にお節料理を作る筈なので、その為の食材を僕が用意すれば、椿と一緒に過ごせることでしょう! ロゼットも呼べば、愛する妹に囲まれた素晴らしい新年が過ごせることでしょうっ!!!

 その時に、あのヘタレがいなければ、椿はきっとあのヘタレに愛想を尽かすかもしれませんからね♪椿はあのヘタレと離縁して、僕の下へ帰って来てくれるかもしれません!

「ふ、フフフフっ、完璧な作戦です!」

 さあ、気合いを入れて、あのヘタレへの嫌がらせ計画を練りましょう!

 椿とロゼットとお正月を過ごす為にっ!!!

 こうして僕は、クソ忙しい十二月を椿とロゼットと過ごすことを目標にクリスマスシーズンを乗り切り、二十八日に椿の暮らすブライトの家へと向かったのです。

 しかし・・・

「椿様、ですか? ヤマトの方へ旦那様と里帰りなさっております」

 ブライト家の家令が出て来て、言いました。

「ヤマトへ、里帰り・・・」

 真っ白になった僕へ、

「ええ。そして、フェンネル様が来たら渡すようにと、お手紙を預かっております。どうぞ」

 渡された手紙には・・・

『フェンネルへ。

 みみっちい嫌がらせしてンじゃないよ。

 馬っ鹿じゃないの?

 あたしと旦那様はしばらく帰らないけど、その間、アレクに変なちょっかい出すんじゃないよ。
 ちゃんと、兄様に気を付けるようレオンハルトとシーフ、リリア達にも言っておいたからね。

 追伸、旦那様にあまり酷いことするようなら、アンタを父様に告げ口する。

 椿・ブライトより』

「っ、椿・・・」

 こうして僕の計画は、椿に拠ってあっさりと潰されてしまったのです。しかも、ブライトの名を名乗って、離縁するつもりは無いと僕へ示しています。

 更には、しっかりと釘まで刺して・・・

 お正月は一応、ロゼットと過ごせました。ハルトとフェイドとリリアナイト達の厳重な監視付きで、でしたけれど。

 どうせなら、ロゼットと二人切りがよかったのですがね? という言葉は、飲み込みました。
 言うと、益々警戒されてしまいますからね。これ以上、愛する妹達と過ごせる貴重な時間を削られては堪りませんし・・・

 無論、僕は椿のことを諦めるつもりは絶対にありません。けれど、ロゼットにまで、逃げられたくはありませんからね。

 焦りは禁物です。

 愛するロゼットを手に入れる為の計画は、もっともっと慎重に練らなくては・・・
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