上 下
90 / 179
ヴァンパイア編。

82.アレク様に、お逢いしたいのです・・・

しおりを挟む
 毎日毎日、フェンネル様が訊ねます。
 アレク様へお逢いしたくないのか?と…

 無論、聞くまでも無い質問ですわっ!?

 リリがっ、どれ程アレク様をお慕いしていることかっ!? アレク様を愛していますともっ!!!

 是非も無くっ!

 アレク様アレク様アレク様アレク様・・・♥️

 以前なら、最低でも月に一度はお茶をご一緒して頂いていたというのに・・・

 アレク様へお逢いできる機会が減って、とても…とても寂しく思っております。

 フェンネル様へアレク様の居場所を知られるワケには行かないので、お手紙のやり取りさえも、できません。我慢しています。

 人魚の海底ネットワークを使用すれば、お手紙のやり取りはできるでしょうが・・・それは自重しております。
 万が一、フェンネル様にアマラ様の船を特定されると、アレク様がお困りになられますから。

 リリは、アレク様がお困りになるようなことはしたくありません。

 けれど、近頃はお仕事にも全く張り合いが出ませんわ。

 以前は、アレク様へお逢いする為にお仕事を早く片付けていたのですが・・・
 今は単に、滞っていないだけです。
 無論、手を抜くことは致しませんけれど!

 ですが、リリは・・・

 今のリリのお仕事は、フェンネル様からアレク様をお守りすること。

 それが、こんなにつらいだなんてっ・・・

 アレク様をお守りする為にフェンネル様と闘うと決めたのに、このていたらくです。

 リリは、自分が情けなくなりますわ。

 フェンネル様の誘惑に負けそうになります。

 そんな弱い自分が、心底嫌になります。

 アレク様をお守りしたいのですっ!!!

 ですが…それ以上に、リリはアレク様にお逢いしたいと思ってしまうのです・・・

 銀色の浮かぶ神秘的な翡翠の瞳で、リリを優しく見詰めてほしいです♥️
 硬質な、けれど柔らかい響きのアルトでリリを呼んでほしいのです♥️
 白い手でリリの頭を撫でてほしいのです♥️
 温かい体温でリリを抱き締めてほしいのです♥️
 優しくリリに微笑んでほしいのです♥️
 リリに触れてほしいのです♥️
 アレク様に触れたいのですっ♥️♥️♥️

 一緒にお茶をして、撫でてもらって、「リリ。頑張っているね」と、誉めてほしいっ!

 アレク様、リリは胸が痛いのです。切ないのです。寂しいのです。お逢いしたいのです。

 思わず、アレク様をい慕う切ない想いの唄が喉から溢れてしまいそうで・・・

 それは本気で洒落にならないので自重しますが。

 以前、寂しさが募って歌った唄が、近くの船の乗組員達の感情を揺さぶり、危うく全員が入水自殺をしてしまうところでしたからね。

 人魚であるリリの唄声は、人間の…特に、殿方には毒となるのです。

 アレク様に唄を誉めてもらいたい・・・「リリの声は綺麗だね」「可愛いよ」「愛してる、リリ」そう言われて・・・ああっ…アレク様にぎゅっと強く抱き締めてほしい♥️

 アレク様の声、アレク様の匂い、アレク様の体温、アレク様の感触に包まれたいっ♥️♥️♥️

 けれどこの数ヶ月間、アレク様を感じられなくて・・・リリは、リリはっ…辛いですっ!!!

 けれど、フェンネル様にも負けたくありません!

 リリの心は千々に乱れているのです・・・

 ローレル様っ!!!

 リリは、一体いつまでフェンネル様を足留めすれば宜しいのでしょうかっ!?

 と、思っておりました。けれど・・・

 先日のことです。ローレル様がお倒れになられたとのおしらせが入りました。

 このことは当然、フェンネル様へも報せが入っていることでしょう。

 ローレル様、早くお目覚めくださいませ。

 そうでないと、リリはきっと…フェンネル様へ負けてしまいます。

 アレク様に、お逢いしたいのです・・・

 どうすれば宜しいのでしょうか・・・?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

現代ファンタジーは翠姉さんと共に

まきします
ファンタジー
姉の勧めもあり「拡張世界リビルド」というゲームを主人公、由紀は始めることにした。 これは景色を置き換える仕組みをしており、日本にいながらにしてファンタジー世界を楽しめるものだ。しかし世間では交通事故を起こしてしまうなどの問題があり、やむなく運営を終了する事になった。 サービス終了までのカウントダウンを、姉と共に過ごす夜。 ついにゼロとなった瞬間、二人の耳には聞き慣れぬ音声が響く。 《リビルドを開始しますか?》 その瞬間、彼らは確かに再構築(リビルド)を迎えた。 やがて、ゲームは現実を変えてゆく。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...