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ヴァンパイア編。

74.天気が荒れそうだ。

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 先程、スティング達の戦闘地点で爆発と強い魔力の放出があった。

 スティング。クレア。レオンハルト。

 彼らが無事であることを祈りたい。

 そして、準備を進める。
 奴を、ほふる為の準備を。

※※※※※※※※※※※※※※※

 移動する為に飛んだけど・・・
 なんだか、空模様が不穏だ。
 分厚い雲が空を覆って来ている。
 生ぬるい風と冷たい風とが渦巻く空気。

 天気が荒れそうだ。

 まあ、天気が荒れたとしても、雲の上を飛んで行けば問題無いんだけどね。
 雲の上は晴れてるし。

 問題は・・・

 さっきの戦闘の影響かどうか、だ。
 意識が飛んだから、どの程度まで影響を及ぼしたのか把握ができてない。

 とりあえず、炎を出さなかった僕は偉いと思う。炎を出していたら・・・軽く焦土を作っていただろうからね。そんなことをしたら、アークに嫌われちゃうかもしれない。

「はぁ…アーク…」

 どこにいるのかな?
 まあ、この辺りにいないのは判ってるけど。

 狼共め・・・

「それにしても・・・」

 なんかこう、身体の中に違和感がある。
 あの弾けた弾丸、あれがまだ身体の中に入って・・・いや、出てないのかな?

「取り出すの、面倒だな・・・」

 自分で自分の身体開いて掻き回すとか・・・再生力が高いと、身体に異物が入ったときに面倒だ。
 身体の中に手を突っ込んで、取り出せるまで『それ』を探して身体を自分で、ぐちゃぐちゃと掻き混ぜる。あれって相当痛いし、心底気持ち悪いんだ…
 異物が小さければ、位置を特定して血液操作で出せないこともないけど・・・どっちみち、身体に穴を空けないといけない。
 痛いことに変わりないし。

 しかも、頭とか・・・いや過ぎる。
 想像するだけで、ぞっとする。

 なんかもう・・・色々と憂鬱ゆううつだ。

 本当に、今回は調子が悪い。
 運も悪い気がする。

 悪いことが重なるというか・・・

 起きてから、ときどき胸が痛む。
 身体に問題は無い筈なのに・・・原因不明だ。
 幻痛げんつうか? それもなにか違う気がする。
 昔の、ふとしたことが思い浮かぶ。
 混血のガキとか・・・
 攻撃に切れがないような気がする。
 道に迷うし、どこに行きたいかわからない。
 ぼんやりするし、モヤモヤする。
 とっさのときの判断力の低下。
 やる気が起きない。無論、アーク探しは別で。
 基本的に食事の必要が無いのに、喉が渇く。
 更には、ルージュエリアルに出会でくわすし。

 運が悪いのもあるけど・・・

 もしかしたら、アレかもしれない・・・

 突然の動悸や目眩めまい
 認知力、判断力の低下・・・
 食事の必要が無いのに食事をせびるようになる。
 そのうち、自分がなにをしているのかもわからなくなって、徘徊するという・・・

 老化現象に、僕は直面しているというのか?
 僕は、老いているのか?

 なんか、へこむ・・・

 昔の、元仲間だった奴が老いて逝ったのを見たことがある。僕を殺そうと躍起になっていたクセに、歳を経って行くごとに耄碌もうろくして、僕が誰かも、自分がなにであったのかさえも忘れて、段々と動かなくなって風化して、やがて大地と一体になったモノ。

 そんな奴を、思い出す。

 僕も、いつかはあんな風になるのだろうか?

 早く安全な場所探そう。

 そして・・・もう、寝ようかな。

 今回は、ダメージを負い過ぎた。
 なんか、一番のダメージは老化疑惑・・・
 精神的に、一番キた・・・

 そんなことを考えていたとき。

 カッ!! と、空に走った閃光せんこうを、当たる前に炎で流す。炎は、電気を通すからね。遅れて轟音ごうおんが鳴り響き、ビリビリと大気が震える。

「雷・・・ホント、嫌な奴だな。君は」

 振り返ると、

「手前ぇ程じゃねぇ。糞爺クソジジイ

 背中に翼膜を生やした銀色の髪、銀灰色ぎんかいしょくの瞳の男が、敵意のった低い声で言う。

「ローレル・・・」

 ここ千年程の付き合いになる・・・僕を殺そうとする、僕の子孫。
 まあ、僕もコイツを殺そうとしているからね。互いに互いを目障りだと思っている…敵だ。

「くたばれ」

 バヂィィッッ!! と、電撃をまとったナイフが空中に数十本現れ、僕へと飛んで来た。
 それを、避ける。と、やっぱり簡単には行かない。案の定、追尾して来た。

 叩き落として…も、無駄だな。
 よく見ると、ナイフに深紅の石が付いている。
 ローレルの血だろうな。
 アイツの血、乗っ取るのが面倒なんだ。
 何度もやり合っているうちに、生意気にも僕の操血そうけつに抵抗できるようになりやがった。

 飛んで来るナイフを避けて高速で飛んでいると、雷がゴロゴロと僕を狙う。

 それを炎で散らし、ついでに業火でナイフを蒸発させる。溶かすだけじゃ、まだ向かって来るかもしれないから。ナイフを減らして行くことにする。が、蒸発させて減らして行くも、ナイフが追加されてなかなか減らない。

 バリバリ、バチバチ、ゴロゴロと・・・

 雷の刺すような閃光と轟音とで、目と耳が痛い。
 耳が馬鹿になっている。
 鼓膜が破れては再生する痛み。
 何度も何度も、鬱陶うっとうしい。

 炎の熱と、上空の冷気との気温差で対流が激しくなって、益々雲が活性化する。
 そして、ローレルの武器かみなりが増えて行くワケだ。かといって、防がないワケにはいかない。
 雷は、当たると痛いんだ。直撃すると血液が沸騰して、筋肉や内臓が焼ける。

 僕でも、ダメージを食らう。

 炎で散らして、なんとか直撃は避けているけど…実は少しビリビリと感電している。

 炎は、電気を通すんだ・・・
 腕がビクビクと痙攣している。痛い。

 場所が悪い。
 上空では、ローレルの方が有利だ。
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