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ヴァンパイア編。
67.ということで、カイル。オレは今から雪君をぶん殴る!
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「さぁて、雪君。ぶん殴らせてもらおうか」
食堂に来たアルが、ニヤリと笑いながら言った。
「おう。いいぜ? 掛かって来い」
同じく、ニヤリと応じるミクリヤさん。
「え? は? なに? いや、起きたの? アル」
「ああ、おはよカイル」
「あ、うん。おはよう…じゃなくてっ! いきなりなに? ミクリヤさんと喧嘩? アルっ?」
おろおろと、好戦的な笑みを交わす二人を見る。
「ま、そんなとこだね」
「一応聞いとくが、調子は?」
「好調」
「そりゃ良かったな」
「ああ。だから、ぶん殴らせろ?」
「おう。少し待ってろ」
と、甲板でミクリヤさんを待つことになったアルに、付いて来たんだけど・・・
「え~と、アル?」
「ん? なに? カイル」
「その、具合い悪いってクラウドが言ってたけど、もう大丈夫なの?」
「うん。もう平気。心配してくれてありがと」
にこりと微笑むアル。後ろで括ったそのプラチナブロンドが、サラリと揺れる。そして、陽光に反射して煌めくプラチナブロンド・・・
「? どうかした? カイル」
「・・・アルってさ…」
駄目だ…もうっ、我慢できないっ!?
「ん?」
キッと、銀色の浮かぶ翡翠を見上げて言う。
「アルって、髪形変えないのっ!?」
「へ? 髪形?」
「そう! 髪形っ! そんな綺麗なプラチナブロンドっを、後ろでただ括るだけなんて勿体無いよっ!?」
「え? カイル?」
「そんなっ、全く傷んでない潤艶サラサラな、しかもロングのプラチナブロンドをっ!? ただ括るだけとかっ? そんなのホンっト信じらんないっ!? 女の子のクセにどういう神経してるのさっ!?」
「カイル? どうした?」
「どうしたもこうしたも無いよっ!? 太陽光に煌めく淡い色のプラチナブロンドだよっ!? 光の加減で極淡い金色を帯びたハニーブロンドにもっ、純銀の色味を帯びたようにもキラキラ輝くプラチナブロンドっ!? アルの髪の毛はまさしく白金のプラチナなんだよっ!? わかってるのっ!?」
「は? いや…」
「銀髪も珍しいけどっ、どっちにも見える、まさしく白金と称するのに相応しいプラチナブロンドがどれだけ稀少なのかアルはわかってるのっ!?」
「あ~…カイル?」
「そんな美しい髪の毛を、アレンジもせずにただ後ろで括るだけなんて、全てのブロンドへ憧れるヒトへの冒涜だと常々思ってたんだっ!!」
「冒涜とまで・・・髪フェチか?」
「だからっ、そのプラチナブロンド僕にアレンジさせてっ! 今すぐにっ!!」
「・・・いや、断る」
「なんでっ!?!?」
「や、なんかコワいし」
「なにがっ!?」
「カイルが?」
「どこがっ!?」
「え? 目の色変わってンだけど?」
「太陽の下だからねっ!」
「そういう意味じゃないって」
「じゃあ、まずは髪を梳こうかっ?」
「なあ、その櫛とブラシどっから出した? 持ってなかったよな? それ」
「なに言ってるの? 櫛とブラシは、常時携帯してるものでしょ? あ、鋏も持ってるから安心してね? ちゃんとヘアカット用のやつだからさ?」
「お前はどこぞの美容師か?」
「切らせてくれるのっ!?」
「…あ~、それは駄目だな。勝手に切ると、リリや姉さん達が悲しむ。あと、すごく、コワいヒトが・・・」
アルは若干迷うような素振りの後、怯えたような顔をして髪のカットを断った。けど…
「それわかるっ! こんな綺麗な髪、長くなってるなら兎も角、短くなってたらそれは当然誰でも惜しむに決まってるよねっ! すごく悲しいよねっ! けど大丈夫っ! 長さを変えないで毛先だけカットするからさっ! まずはもっと艶が出るまで髪を梳いてから毛先を整えようかっ!」
「や、オレ断ったよな?」
「え? なにを?」
「色々と」
「大丈夫だから、僕に任せてっ!」
「ヒトの話聞いてねー」
「さあアルっ、どんな髪形にしようかっ?」
ああ、楽しみだなっ♪
「わー、瞳孔開いてるー…」
「ふふっ、あはははっ…」
「イっちゃってンなぁ・・・大丈夫か? これ…」
「大丈夫だよっ!」
「うん…全然大丈夫じゃないやつだ」
※※※※※※※※※※※※※※※
「なにしてンだ? お前ら」
瞳孔が開いてちょっとヤバい感じに笑っているカイルに、かなり引き気味のアル。
髪の毛がどうとか言っている。なんだ?
「おお、雪君いいところにっ! ということで、カイル。オレは今から雪君をぶん殴る!」
逃げるようにカイルから離れ、どこからか取り出した帽子に髪の毛を纏めて突っ込むアル。
「ああっ、そんな・・・太陽光に煌めき靡くプラチナブロンドが・・・っ!?」
ガクリと崩れたカイルの悲しげな悲鳴。
「? なんなんだ? あれ」
「・・・髪フェチ、かな?」
困ったようにアルが首を傾げる。
「髪フェチ?」
「多分ねー……」
「触らせてやれば?」
「やー、頭触らせンなちょっと覚悟が必要だからなぁ…後ろからならまだ少しはマシだが・・・前から頭触られたら、多分吐くぞオレ。よくて、吐く」
靴を脱ぎながらアルが言う。
「お前も難儀だな? 悪かったら?」
自分も靴脱ごう。裸足になる。
「理性飛んだら半殺しとか? 昔、髪切ろうとした美容師半殺しにしたことがあってさ。吸血鬼のヒトだったから刻んでも死ななかったけど・・・」
刻んだとは、ナイフでだろうか?今のアルは刃物をあちこちに仕込んでいるからな。
「気付いたら腕落としちゃっててさ? 謝ったら一応許してくれたけど」
・・・昔より物騒になったことは間違いない。
「・・・カイルには後でよく言って聞かせる」
「頼む」
「つか、謝って済んだのか? それ」
「エレイスのヒトだったからね。アンデッドだったし。腕もちゃんとくっ付いたよ」
だった、に突っ込むべきか・・・
いや、やめておこう。
「そうかよ。だから伸ばしっ放しなのか? 髪」
カイルが騒いでいた帽子に突っ込まれたアルの髪の毛は、腰に届くくらいに長い。
「いや、偶に姉さんが切ってくれるよ。後ろはな?つか、前髪以外自分で切らせてくれねぇ」
お互いに軽く準備運動。
「椿さん?」
「ああ、リリと二人して勿体無いってさ」
「ま、お前昔から女子供に甘いからな」
「そうか?」
「そうだろ」
「なら、そうかもな。さあ、やるか」
「おう。いつでも掛かって来い」
瞬間、ダン! と、甲板を強く蹴る音が響いた。
「ぐっ!?」
次いで、左頬へ拳が当たる。
「あれ? マジで食らった…」
「当てた方がそんなに驚いてンじゃねぇよ。一応悪ぃと思ってンだ。自分も。それに…」
口ン中は軽く切れたが…
「お前の拳は軽いからな? 昔から」
「うわ、ムカつく。蹴っていいか?」
「おう。来いよ」
「ンじゃ、遠慮無く」
ヒュッと白い爪先が顔面に向かって来た。のを、
「いきなり顔面かよ?」
体を反らして躱すと、
「来いって言ったじゃん、よっ!」
躱した足が戻って来て首に絡んだ。
「なっ、ぐ…えっ?」
膝裏でぐいっと首を挟まれ、体が浮いた。
「おらっ!」
それを背中からドンと甲板に叩き衝けられる。
「っ!?」
「とうっ!」
更に、追撃。ニヤリと笑ったアルが跳ね、空中で身を捻り、腹へと踵落としをしようと足を振り上げる。
「誰が食らうか!」
ゴロンと転がると同時に、甲板の床板にダンっ! と落ちる白い踵。を、踏み締めたアルの、
「だよなー」
反対側の蹴りが更に飛んで来る。その足を、
「?」
伸ばした尻尾でするりと絡め取り、蹴りの向かう方向へと引っ張り、更に振り切って尻尾を放す。
「のわっ!?」
と、アルが飛んで行く。さっきの膝での変則的な首投げのお返しだ。
「尻尾ズルい」
ゴロンと受け身を取ったアルが言う。
「いいだろ? 羨ましいか?」
くねりと軽く尻尾を振って聞く。
黒い毛並の尻尾は、先がちょこんと白い。
「別に? 羨ましくないしっ」
不満げに返すアルト。
「そうかよ?」
そして、暫くアルとじゃれ合いを続け…
※※※※※※※※※※※※※※※
数時間後。
「はぁ・・・疲れたー!」
「ったく、自分はまだ飯の仕込み残ってンだぞ!」
二人共息を荒くして甲板に倒れてへばっている。
カイルは見てるのに飽きたのか、もういない。
「ご飯がんばれー、雪君」
気怠げな応援の声に顔を顰める。
「ああクソっ・・・手首やった!」
しかも、右手だ。
「オレは肘やった。あと、足首」
お互い、あちこちに青アザやら捻挫を作った。
そして、アルに肩を貸して・・・
「・・・なにしてるの君達はっ!? こんなに怪我してっ!!」
医務室でジンに仲良く怒られている。
二人して治療されながら…
「ミクリヤっ!! 病み上がりの、それも女の子に怪我させていいと思っているのか君はっ!?」
いや、自分だけ余計に怒られそうだ。
しかも本気で・・・よし、逃げよう。
「あ~、自分。まだ飯の支度残ってるから!」
「あ、雪君ズルい! オレも行くっ」
「アルちゃんっ!! 君はまだ治療中なんだから動かないのっ!? 全く、女の子が顔に痣作っていいと思ってるのっ? ああもうっ、顔腫れて来てるっ!? ほら、顔冷やすんだから早く氷出して!」
「すまん、アル。お前の尊い犠牲は忘れないぜ…だからまあ、ガンバレっ」
「雪君の裏切り者~!」
と、アルの非難を浴びて厨房へ逃げて来たのに…結局、後でたっぷりとジンに説教を食らった・・・
食堂に来たアルが、ニヤリと笑いながら言った。
「おう。いいぜ? 掛かって来い」
同じく、ニヤリと応じるミクリヤさん。
「え? は? なに? いや、起きたの? アル」
「ああ、おはよカイル」
「あ、うん。おはよう…じゃなくてっ! いきなりなに? ミクリヤさんと喧嘩? アルっ?」
おろおろと、好戦的な笑みを交わす二人を見る。
「ま、そんなとこだね」
「一応聞いとくが、調子は?」
「好調」
「そりゃ良かったな」
「ああ。だから、ぶん殴らせろ?」
「おう。少し待ってろ」
と、甲板でミクリヤさんを待つことになったアルに、付いて来たんだけど・・・
「え~と、アル?」
「ん? なに? カイル」
「その、具合い悪いってクラウドが言ってたけど、もう大丈夫なの?」
「うん。もう平気。心配してくれてありがと」
にこりと微笑むアル。後ろで括ったそのプラチナブロンドが、サラリと揺れる。そして、陽光に反射して煌めくプラチナブロンド・・・
「? どうかした? カイル」
「・・・アルってさ…」
駄目だ…もうっ、我慢できないっ!?
「ん?」
キッと、銀色の浮かぶ翡翠を見上げて言う。
「アルって、髪形変えないのっ!?」
「へ? 髪形?」
「そう! 髪形っ! そんな綺麗なプラチナブロンドっを、後ろでただ括るだけなんて勿体無いよっ!?」
「え? カイル?」
「そんなっ、全く傷んでない潤艶サラサラな、しかもロングのプラチナブロンドをっ!? ただ括るだけとかっ? そんなのホンっト信じらんないっ!? 女の子のクセにどういう神経してるのさっ!?」
「カイル? どうした?」
「どうしたもこうしたも無いよっ!? 太陽光に煌めく淡い色のプラチナブロンドだよっ!? 光の加減で極淡い金色を帯びたハニーブロンドにもっ、純銀の色味を帯びたようにもキラキラ輝くプラチナブロンドっ!? アルの髪の毛はまさしく白金のプラチナなんだよっ!? わかってるのっ!?」
「は? いや…」
「銀髪も珍しいけどっ、どっちにも見える、まさしく白金と称するのに相応しいプラチナブロンドがどれだけ稀少なのかアルはわかってるのっ!?」
「あ~…カイル?」
「そんな美しい髪の毛を、アレンジもせずにただ後ろで括るだけなんて、全てのブロンドへ憧れるヒトへの冒涜だと常々思ってたんだっ!!」
「冒涜とまで・・・髪フェチか?」
「だからっ、そのプラチナブロンド僕にアレンジさせてっ! 今すぐにっ!!」
「・・・いや、断る」
「なんでっ!?!?」
「や、なんかコワいし」
「なにがっ!?」
「カイルが?」
「どこがっ!?」
「え? 目の色変わってンだけど?」
「太陽の下だからねっ!」
「そういう意味じゃないって」
「じゃあ、まずは髪を梳こうかっ?」
「なあ、その櫛とブラシどっから出した? 持ってなかったよな? それ」
「なに言ってるの? 櫛とブラシは、常時携帯してるものでしょ? あ、鋏も持ってるから安心してね? ちゃんとヘアカット用のやつだからさ?」
「お前はどこぞの美容師か?」
「切らせてくれるのっ!?」
「…あ~、それは駄目だな。勝手に切ると、リリや姉さん達が悲しむ。あと、すごく、コワいヒトが・・・」
アルは若干迷うような素振りの後、怯えたような顔をして髪のカットを断った。けど…
「それわかるっ! こんな綺麗な髪、長くなってるなら兎も角、短くなってたらそれは当然誰でも惜しむに決まってるよねっ! すごく悲しいよねっ! けど大丈夫っ! 長さを変えないで毛先だけカットするからさっ! まずはもっと艶が出るまで髪を梳いてから毛先を整えようかっ!」
「や、オレ断ったよな?」
「え? なにを?」
「色々と」
「大丈夫だから、僕に任せてっ!」
「ヒトの話聞いてねー」
「さあアルっ、どんな髪形にしようかっ?」
ああ、楽しみだなっ♪
「わー、瞳孔開いてるー…」
「ふふっ、あはははっ…」
「イっちゃってンなぁ・・・大丈夫か? これ…」
「大丈夫だよっ!」
「うん…全然大丈夫じゃないやつだ」
※※※※※※※※※※※※※※※
「なにしてンだ? お前ら」
瞳孔が開いてちょっとヤバい感じに笑っているカイルに、かなり引き気味のアル。
髪の毛がどうとか言っている。なんだ?
「おお、雪君いいところにっ! ということで、カイル。オレは今から雪君をぶん殴る!」
逃げるようにカイルから離れ、どこからか取り出した帽子に髪の毛を纏めて突っ込むアル。
「ああっ、そんな・・・太陽光に煌めき靡くプラチナブロンドが・・・っ!?」
ガクリと崩れたカイルの悲しげな悲鳴。
「? なんなんだ? あれ」
「・・・髪フェチ、かな?」
困ったようにアルが首を傾げる。
「髪フェチ?」
「多分ねー……」
「触らせてやれば?」
「やー、頭触らせンなちょっと覚悟が必要だからなぁ…後ろからならまだ少しはマシだが・・・前から頭触られたら、多分吐くぞオレ。よくて、吐く」
靴を脱ぎながらアルが言う。
「お前も難儀だな? 悪かったら?」
自分も靴脱ごう。裸足になる。
「理性飛んだら半殺しとか? 昔、髪切ろうとした美容師半殺しにしたことがあってさ。吸血鬼のヒトだったから刻んでも死ななかったけど・・・」
刻んだとは、ナイフでだろうか?今のアルは刃物をあちこちに仕込んでいるからな。
「気付いたら腕落としちゃっててさ? 謝ったら一応許してくれたけど」
・・・昔より物騒になったことは間違いない。
「・・・カイルには後でよく言って聞かせる」
「頼む」
「つか、謝って済んだのか? それ」
「エレイスのヒトだったからね。アンデッドだったし。腕もちゃんとくっ付いたよ」
だった、に突っ込むべきか・・・
いや、やめておこう。
「そうかよ。だから伸ばしっ放しなのか? 髪」
カイルが騒いでいた帽子に突っ込まれたアルの髪の毛は、腰に届くくらいに長い。
「いや、偶に姉さんが切ってくれるよ。後ろはな?つか、前髪以外自分で切らせてくれねぇ」
お互いに軽く準備運動。
「椿さん?」
「ああ、リリと二人して勿体無いってさ」
「ま、お前昔から女子供に甘いからな」
「そうか?」
「そうだろ」
「なら、そうかもな。さあ、やるか」
「おう。いつでも掛かって来い」
瞬間、ダン! と、甲板を強く蹴る音が響いた。
「ぐっ!?」
次いで、左頬へ拳が当たる。
「あれ? マジで食らった…」
「当てた方がそんなに驚いてンじゃねぇよ。一応悪ぃと思ってンだ。自分も。それに…」
口ン中は軽く切れたが…
「お前の拳は軽いからな? 昔から」
「うわ、ムカつく。蹴っていいか?」
「おう。来いよ」
「ンじゃ、遠慮無く」
ヒュッと白い爪先が顔面に向かって来た。のを、
「いきなり顔面かよ?」
体を反らして躱すと、
「来いって言ったじゃん、よっ!」
躱した足が戻って来て首に絡んだ。
「なっ、ぐ…えっ?」
膝裏でぐいっと首を挟まれ、体が浮いた。
「おらっ!」
それを背中からドンと甲板に叩き衝けられる。
「っ!?」
「とうっ!」
更に、追撃。ニヤリと笑ったアルが跳ね、空中で身を捻り、腹へと踵落としをしようと足を振り上げる。
「誰が食らうか!」
ゴロンと転がると同時に、甲板の床板にダンっ! と落ちる白い踵。を、踏み締めたアルの、
「だよなー」
反対側の蹴りが更に飛んで来る。その足を、
「?」
伸ばした尻尾でするりと絡め取り、蹴りの向かう方向へと引っ張り、更に振り切って尻尾を放す。
「のわっ!?」
と、アルが飛んで行く。さっきの膝での変則的な首投げのお返しだ。
「尻尾ズルい」
ゴロンと受け身を取ったアルが言う。
「いいだろ? 羨ましいか?」
くねりと軽く尻尾を振って聞く。
黒い毛並の尻尾は、先がちょこんと白い。
「別に? 羨ましくないしっ」
不満げに返すアルト。
「そうかよ?」
そして、暫くアルとじゃれ合いを続け…
※※※※※※※※※※※※※※※
数時間後。
「はぁ・・・疲れたー!」
「ったく、自分はまだ飯の仕込み残ってンだぞ!」
二人共息を荒くして甲板に倒れてへばっている。
カイルは見てるのに飽きたのか、もういない。
「ご飯がんばれー、雪君」
気怠げな応援の声に顔を顰める。
「ああクソっ・・・手首やった!」
しかも、右手だ。
「オレは肘やった。あと、足首」
お互い、あちこちに青アザやら捻挫を作った。
そして、アルに肩を貸して・・・
「・・・なにしてるの君達はっ!? こんなに怪我してっ!!」
医務室でジンに仲良く怒られている。
二人して治療されながら…
「ミクリヤっ!! 病み上がりの、それも女の子に怪我させていいと思っているのか君はっ!?」
いや、自分だけ余計に怒られそうだ。
しかも本気で・・・よし、逃げよう。
「あ~、自分。まだ飯の支度残ってるから!」
「あ、雪君ズルい! オレも行くっ」
「アルちゃんっ!! 君はまだ治療中なんだから動かないのっ!? 全く、女の子が顔に痣作っていいと思ってるのっ? ああもうっ、顔腫れて来てるっ!? ほら、顔冷やすんだから早く氷出して!」
「すまん、アル。お前の尊い犠牲は忘れないぜ…だからまあ、ガンバレっ」
「雪君の裏切り者~!」
と、アルの非難を浴びて厨房へ逃げて来たのに…結局、後でたっぷりとジンに説教を食らった・・・
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