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ヴァンパイア編。
61.俺はそろそろお暇しようかな?
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アルがそろそろ起きる為の支度をするというので、部屋を出て甲板をぶらぶらしていたら、
「・・・で、手前ぇは何時までいやがる気だ」
じろりと不機嫌な猫の目が俺を睨み付け、低くドスの利いた声が言った。
「アルが起きたら、とっとと出てけ」
「全く、ヒドいな? 猫君は」
やれやれと溜息を吐く。
「うっせぇ、危険物。つか、アルもアルだ。なんで手前ぇみたいな危険物を擦り寄らせてンだ」
「そりゃあ勿論、相思相愛だから、かな?」
冗談めかして答える。
「ハッ、どうだかな? 手前ぇの魅了じゃねぇって証拠があンのかよ? クラウド」
「さぁ? どうだろうね。まあ、俺が本気なら、アルをどうにかできるかもしれないけど・・・」
実際、あの子には魅了が効き難い。全力なら、掛けられないことはないと思うけど・・・
「ねぇ、猫君。従順な人形なんて、量産しようと思えば俺には何時でもできるんだ」
にっこりと微笑むと、バッと後ろに跳び退さる猫の子。相変わらず、警戒され捲りだなぁ。
「俺に逆らわず、俺の言うことをなんでも聞いて、俺を全肯定する従順なお人形達。それってさ、酷くつまらないことだと思わない?」
そういうのは全く趣味じゃない。
そして第一、俺達が生かしたいと願ったアルの在り方を踏み躙る行為になる。
そうさせない為に努力しているというのに・・・誰がそんなことするか。
「…」
更に口を開こうとしたら、硬質なアルトがした。
「なにしてんの?」
「起きたのか」
「うん。おはよ。それで?」
俺と猫の子をちらりと見やる翡翠、傾げられる首。サラリと揺れる白金の髪。
「ん~? 見解の違いってやつかな」
「ふぅん・・・ま、雪君とクラウドって、昔から仲悪かったよね? かなり」
「つか、ンな危険物と仲良くできる手前ぇがおかしいンだろうがよ? アル」
不機嫌丸出しの猫の子が言う。
「そう? オレは、オレに殺意や悪意、害意を持たないヒトには好感を持てるよ」
「・・・そうかよ」
ムッとしつつも、アルを否定できない猫の子。
この子もこの子で、結構苦労して来ているからね。悪意や害意、そして殺意には敏感だ。
まあ、それとは別のところで俺を警戒しているんだろうけど・・・例えば、本能なんかで。
「それに、体質もあるんじゃない? オレ、魅了とか支配効き難いからさ。まあ、クラウドの本気なら、わからないけど、ね?」
白皙の面が薄く笑む。ああ、怒ってるな。
「聞いてたのかよ・・・」
ばつが悪そうにアルから目を逸らす猫の子。
「雪君さ。それを言うなら、オレにだってできるんだぜ? 魅了と支配。雪君には、オレに魅了や支配されてる自覚があったりするのか?」
「・・・無ぇよ。悪かったな。お前が魅了されてンじゃねぇかってのは、取り消す」
「ならいいよ。ま、一応、雪君の心配も尤もだと思うしさ?」
渋い顔の猫の子に、アルが苦笑する。
「ヒドいな? アルまでそんなこと言うなんて」
「そう? 貴方が気にしてるなら謝るけど?」
貴方がそんなこと気にするの? と、銀の浮かぶ翡翠が俺へ問い掛ける。
「いいや? 気にしてないよ。けど」
ちょいちょいと指で招いてアルを呼ぶ。
「?」
「ふふっ」
きょとんと首を傾げながら俺へ寄るアルを、ぎゅっと抱き締める。
ほんのりと低い体温。シャワーを浴びたのか、ふんわりといい匂いが漂う。
「クラウドっ!?」
声を荒げる猫の子を無視。
腕に大人しく収まるアルの頬へ口付けを落とす。
「じゃあ、俺はそろそろお暇しようかな? 近いうちに逢いに来るよ。アル」
アルは安定させたし、俺の血の眠り薬も与えた。取り扱いへの注意も話したし・・・
次は、別のことをしようと思う。
「貴方は、来るのも突然だけど去るのも突然だね」
「まあ、俺の目的は君だからね?」
「ふぅん…」
少しだけ低い位置の翡翠が俺を覗き込むように見上げる。その頬へ手を添え、柔らかい唇にそっと触れるだけのキスを落とす。
「愛してるよ、アル」
「ありがと、クラウド」
「ふふっ、またね?」
白い頬を撫で、アルを放す。
そして、蝙蝠のような羽根を出して空へ。
さて、イリヤの動向を探りつつ、ローレルのところにでも行こうかな?
少し、聞きたいこともあるし・・・
※※※※※※※※※※※※※※※
アルが寝ている間の話をして聞かせたが、言っていないことがある。
これは、聞かせる気が無いこと。
俺と人魚ちゃんとで話したことは、アルと他の船の子達には内緒だ。
※※※※※※※※※※※※※※※
「ねぇ、人魚ちゃん。アルの追っ手のことは、できればアル本人には聞かせたくないんだ。特に、トラウマの原因、の辺りは絶対に。黙っていてくれないかな?」
険しくなったアイスブルーを見詰める。
これで人魚ちゃんが頷いてくれなければ、魅了を使ってでも頷かせるつもりだけど、ね?
「・・・わかったわ。約束する」
「ありがとう、人魚ちゃん」
この人魚ちゃんは、とても律義な子だ。
人魚に愛され、その加護を得ているアルを…アルを愛している人魚ちゃんとの約束を、守ろうとしてくれている。
この子は、余程のことがない限り、その約束を違えることは無いだろう。
そういう心をしている。
「あ、それと、俺が夢魔ってことは上の子達には言わないでほしいな」
「子って、ジンは四百くらい行ってる筈よ?」
「ふふっ、俺は君よりもず~っと年上だからね」
「・・・アンタ、一体幾つよ?」
「君よりもず~っと上、かな?」
正確な年齢なんて、俺も覚えていない。ただ、自分がこの子達よりかなり年上なことは判る。
「・・・今回の奴は、明らかに別口よね? 自我や命が危ないだなんて、普通に考えたら、小娘に結婚を迫っている家側のすることじゃないもの」
溜息を吐いた人魚ちゃんが切り出した。
「そうだね」
「なにに追われているの? アルは」
真っ直ぐに俺を見詰めるアイスブルー。
「ヴァンパイア、かな? 純血の」
「・・・それは、どういう意味で?」
「ハーフであるあの子には、敵も多いから」
と、中途半端な情報を聞かせる。
まあ、アルの実兄も、その愛が溢れ過ぎていて割と危ないんだけどねぇ?
イリヤの血ってやつかな? 全く・・・
「・・・アルが命を狙われているだなんて、そんなこと聞いてない」
硬いハスキーな声が言った。
「そう? ヴァンパイアのハーフの死因の、約八割が他者による殺害。そのうちの、六割強が幼少期や乳児期、生まれて間もなく両親や身内に殺される。血に狂うことなく無事に成長できたとしても、存在が公になれば純血至上主義共が殺しに来る。また、まともな職に就ける確率は非常に低い。犯罪を犯したくなければ、真っ当な賞金稼ぎやトレジャーハンターにならざるを得ないという背景もある。人間に比べると身体が頑丈で、身体能力も高いからね。それでなるべく目立たないように生きるか、吸血鬼憎しでハンターになるか・・・そして仕事で、事故死や行方不明になる。で、残り約二割の死因は自殺。平和的に、老衰で死んだハーフの話なんて、なかなか聞いたことが無いよ?」
人魚ちゃんに、一般論で答える。
これがヴァンパイアハーフの事実だ。
まあ、人間との間のハーフの話なんだけどね。
他種族との間のハーフはまた、事情が少し違って来るけど・・・これもまた、数が非常に少ない。
混血の子を三人も持っているローレルは、かなり特異だと言える。
一般的なヴァンパイアハーフでさえ、これだけ過酷な人生だというのに、アルはこれ以上の厄介事を抱えている・・・いや、背負わせた。
あの子の母親が、父親が、アークが、そして俺が。みんなが、それぞれの祈りと願いと思惑とで、あの子を生かした。
そしてあの子は・・・アルは、苦しみながらも足掻いて、懸命に生きている。
「・・・そんなのっ、理不尽じゃないっ!」
絞り出すようなハスキー。アイスブルーの瞳が、やり場のない怒りに燃える。
「そう。非情な程に理不尽で、不条理だ。だからあの子は、とても貴重で珍しい。あの子の周囲が、あの子を生かしたいと願って、懸命に努力した結果が『今のアル』なんだよ」
「っ・・・」
「だから俺は、そんなアルが無条件で愛おしい」
俺は、間違っていなかったのだと思いたい。
あの子・・・アルを生かしたことが、間違っていないのだと、そう思いたい。
だって、みんながアルの生を願ったのだ。
そんなアルがとても大事に、大事に育てられたことを想うと・・・胸が痛くなる程、切なくて愛おしい。
アルが生きていることが、嬉しくて歓ばしい。
・・・アルが思う通り、俺のこの愛情は、母性に近いモノかもしれないな?
まあ、アルが可愛いことに違いはない。
「・・・あたしに、なにをしろって言うの」
「できるだけでいい。アルの味方でいてほしい」
「わかったわ」
こうして、人魚ちゃんの協力を取り付けた。
これが、アルには内緒のことだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
・・・おかしい。
あの美女が来ない。
もう、一週間も経っているというのに・・・
待ち合わせ場所はメインストリートの時計台の下、だったか? 戻ってから気付いた。この街にはメインストリートに時計台が無かったことを・・・
「う~ん…聞き間違えたか?」
そうじゃないなら、あの美女がこの街に詳しくないということだ。迷っているとか・・・
「ハッ! もしかして、事故にでも遭ったか? 心配だ・・・」
美女のことは無論、アルゥラのことも心配だ。
額を押さえて苦しそうな顔をしていたアルゥラ。
大丈夫だろうか・・・
心配で胸が張り裂けそうだが・・・
だがしかしっ!?
俺には美女との逢瀬の約束がっ!?
「クッ・・・俺は一体、どうすれば・・・」
とりあえず、もう少し待ってみよう。
「・・・で、手前ぇは何時までいやがる気だ」
じろりと不機嫌な猫の目が俺を睨み付け、低くドスの利いた声が言った。
「アルが起きたら、とっとと出てけ」
「全く、ヒドいな? 猫君は」
やれやれと溜息を吐く。
「うっせぇ、危険物。つか、アルもアルだ。なんで手前ぇみたいな危険物を擦り寄らせてンだ」
「そりゃあ勿論、相思相愛だから、かな?」
冗談めかして答える。
「ハッ、どうだかな? 手前ぇの魅了じゃねぇって証拠があンのかよ? クラウド」
「さぁ? どうだろうね。まあ、俺が本気なら、アルをどうにかできるかもしれないけど・・・」
実際、あの子には魅了が効き難い。全力なら、掛けられないことはないと思うけど・・・
「ねぇ、猫君。従順な人形なんて、量産しようと思えば俺には何時でもできるんだ」
にっこりと微笑むと、バッと後ろに跳び退さる猫の子。相変わらず、警戒され捲りだなぁ。
「俺に逆らわず、俺の言うことをなんでも聞いて、俺を全肯定する従順なお人形達。それってさ、酷くつまらないことだと思わない?」
そういうのは全く趣味じゃない。
そして第一、俺達が生かしたいと願ったアルの在り方を踏み躙る行為になる。
そうさせない為に努力しているというのに・・・誰がそんなことするか。
「…」
更に口を開こうとしたら、硬質なアルトがした。
「なにしてんの?」
「起きたのか」
「うん。おはよ。それで?」
俺と猫の子をちらりと見やる翡翠、傾げられる首。サラリと揺れる白金の髪。
「ん~? 見解の違いってやつかな」
「ふぅん・・・ま、雪君とクラウドって、昔から仲悪かったよね? かなり」
「つか、ンな危険物と仲良くできる手前ぇがおかしいンだろうがよ? アル」
不機嫌丸出しの猫の子が言う。
「そう? オレは、オレに殺意や悪意、害意を持たないヒトには好感を持てるよ」
「・・・そうかよ」
ムッとしつつも、アルを否定できない猫の子。
この子もこの子で、結構苦労して来ているからね。悪意や害意、そして殺意には敏感だ。
まあ、それとは別のところで俺を警戒しているんだろうけど・・・例えば、本能なんかで。
「それに、体質もあるんじゃない? オレ、魅了とか支配効き難いからさ。まあ、クラウドの本気なら、わからないけど、ね?」
白皙の面が薄く笑む。ああ、怒ってるな。
「聞いてたのかよ・・・」
ばつが悪そうにアルから目を逸らす猫の子。
「雪君さ。それを言うなら、オレにだってできるんだぜ? 魅了と支配。雪君には、オレに魅了や支配されてる自覚があったりするのか?」
「・・・無ぇよ。悪かったな。お前が魅了されてンじゃねぇかってのは、取り消す」
「ならいいよ。ま、一応、雪君の心配も尤もだと思うしさ?」
渋い顔の猫の子に、アルが苦笑する。
「ヒドいな? アルまでそんなこと言うなんて」
「そう? 貴方が気にしてるなら謝るけど?」
貴方がそんなこと気にするの? と、銀の浮かぶ翡翠が俺へ問い掛ける。
「いいや? 気にしてないよ。けど」
ちょいちょいと指で招いてアルを呼ぶ。
「?」
「ふふっ」
きょとんと首を傾げながら俺へ寄るアルを、ぎゅっと抱き締める。
ほんのりと低い体温。シャワーを浴びたのか、ふんわりといい匂いが漂う。
「クラウドっ!?」
声を荒げる猫の子を無視。
腕に大人しく収まるアルの頬へ口付けを落とす。
「じゃあ、俺はそろそろお暇しようかな? 近いうちに逢いに来るよ。アル」
アルは安定させたし、俺の血の眠り薬も与えた。取り扱いへの注意も話したし・・・
次は、別のことをしようと思う。
「貴方は、来るのも突然だけど去るのも突然だね」
「まあ、俺の目的は君だからね?」
「ふぅん…」
少しだけ低い位置の翡翠が俺を覗き込むように見上げる。その頬へ手を添え、柔らかい唇にそっと触れるだけのキスを落とす。
「愛してるよ、アル」
「ありがと、クラウド」
「ふふっ、またね?」
白い頬を撫で、アルを放す。
そして、蝙蝠のような羽根を出して空へ。
さて、イリヤの動向を探りつつ、ローレルのところにでも行こうかな?
少し、聞きたいこともあるし・・・
※※※※※※※※※※※※※※※
アルが寝ている間の話をして聞かせたが、言っていないことがある。
これは、聞かせる気が無いこと。
俺と人魚ちゃんとで話したことは、アルと他の船の子達には内緒だ。
※※※※※※※※※※※※※※※
「ねぇ、人魚ちゃん。アルの追っ手のことは、できればアル本人には聞かせたくないんだ。特に、トラウマの原因、の辺りは絶対に。黙っていてくれないかな?」
険しくなったアイスブルーを見詰める。
これで人魚ちゃんが頷いてくれなければ、魅了を使ってでも頷かせるつもりだけど、ね?
「・・・わかったわ。約束する」
「ありがとう、人魚ちゃん」
この人魚ちゃんは、とても律義な子だ。
人魚に愛され、その加護を得ているアルを…アルを愛している人魚ちゃんとの約束を、守ろうとしてくれている。
この子は、余程のことがない限り、その約束を違えることは無いだろう。
そういう心をしている。
「あ、それと、俺が夢魔ってことは上の子達には言わないでほしいな」
「子って、ジンは四百くらい行ってる筈よ?」
「ふふっ、俺は君よりもず~っと年上だからね」
「・・・アンタ、一体幾つよ?」
「君よりもず~っと上、かな?」
正確な年齢なんて、俺も覚えていない。ただ、自分がこの子達よりかなり年上なことは判る。
「・・・今回の奴は、明らかに別口よね? 自我や命が危ないだなんて、普通に考えたら、小娘に結婚を迫っている家側のすることじゃないもの」
溜息を吐いた人魚ちゃんが切り出した。
「そうだね」
「なにに追われているの? アルは」
真っ直ぐに俺を見詰めるアイスブルー。
「ヴァンパイア、かな? 純血の」
「・・・それは、どういう意味で?」
「ハーフであるあの子には、敵も多いから」
と、中途半端な情報を聞かせる。
まあ、アルの実兄も、その愛が溢れ過ぎていて割と危ないんだけどねぇ?
イリヤの血ってやつかな? 全く・・・
「・・・アルが命を狙われているだなんて、そんなこと聞いてない」
硬いハスキーな声が言った。
「そう? ヴァンパイアのハーフの死因の、約八割が他者による殺害。そのうちの、六割強が幼少期や乳児期、生まれて間もなく両親や身内に殺される。血に狂うことなく無事に成長できたとしても、存在が公になれば純血至上主義共が殺しに来る。また、まともな職に就ける確率は非常に低い。犯罪を犯したくなければ、真っ当な賞金稼ぎやトレジャーハンターにならざるを得ないという背景もある。人間に比べると身体が頑丈で、身体能力も高いからね。それでなるべく目立たないように生きるか、吸血鬼憎しでハンターになるか・・・そして仕事で、事故死や行方不明になる。で、残り約二割の死因は自殺。平和的に、老衰で死んだハーフの話なんて、なかなか聞いたことが無いよ?」
人魚ちゃんに、一般論で答える。
これがヴァンパイアハーフの事実だ。
まあ、人間との間のハーフの話なんだけどね。
他種族との間のハーフはまた、事情が少し違って来るけど・・・これもまた、数が非常に少ない。
混血の子を三人も持っているローレルは、かなり特異だと言える。
一般的なヴァンパイアハーフでさえ、これだけ過酷な人生だというのに、アルはこれ以上の厄介事を抱えている・・・いや、背負わせた。
あの子の母親が、父親が、アークが、そして俺が。みんなが、それぞれの祈りと願いと思惑とで、あの子を生かした。
そしてあの子は・・・アルは、苦しみながらも足掻いて、懸命に生きている。
「・・・そんなのっ、理不尽じゃないっ!」
絞り出すようなハスキー。アイスブルーの瞳が、やり場のない怒りに燃える。
「そう。非情な程に理不尽で、不条理だ。だからあの子は、とても貴重で珍しい。あの子の周囲が、あの子を生かしたいと願って、懸命に努力した結果が『今のアル』なんだよ」
「っ・・・」
「だから俺は、そんなアルが無条件で愛おしい」
俺は、間違っていなかったのだと思いたい。
あの子・・・アルを生かしたことが、間違っていないのだと、そう思いたい。
だって、みんながアルの生を願ったのだ。
そんなアルがとても大事に、大事に育てられたことを想うと・・・胸が痛くなる程、切なくて愛おしい。
アルが生きていることが、嬉しくて歓ばしい。
・・・アルが思う通り、俺のこの愛情は、母性に近いモノかもしれないな?
まあ、アルが可愛いことに違いはない。
「・・・あたしに、なにをしろって言うの」
「できるだけでいい。アルの味方でいてほしい」
「わかったわ」
こうして、人魚ちゃんの協力を取り付けた。
これが、アルには内緒のことだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
・・・おかしい。
あの美女が来ない。
もう、一週間も経っているというのに・・・
待ち合わせ場所はメインストリートの時計台の下、だったか? 戻ってから気付いた。この街にはメインストリートに時計台が無かったことを・・・
「う~ん…聞き間違えたか?」
そうじゃないなら、あの美女がこの街に詳しくないということだ。迷っているとか・・・
「ハッ! もしかして、事故にでも遭ったか? 心配だ・・・」
美女のことは無論、アルゥラのことも心配だ。
額を押さえて苦しそうな顔をしていたアルゥラ。
大丈夫だろうか・・・
心配で胸が張り裂けそうだが・・・
だがしかしっ!?
俺には美女との逢瀬の約束がっ!?
「クッ・・・俺は一体、どうすれば・・・」
とりあえず、もう少し待ってみよう。
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