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聖人リヴェルドの場合。

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 グラジオラス領内にあるとある修道院の神父、リヴェルドは、現城代の姫より前の、賢者よりも更に以前の先々代城代に育てられた。

 の城代は、面白いことが非常に大好きで、波風を立てることを好んだ。

 そんな城代の時代には、現在のグラジオラス城砦よりも非常にピーキーな人材が集められていた。

 面白そうだからという、先々代城代の趣味で、危うい個性と性格とを伸ばされた者達が・・・

 リヴェルド・グラジオラスもその一人。

 リヴェルドには、天性の声があった。聞いていると心地よくなり、もっと聞いていたくなるような、美しいカリスマ的な声が。

 説得や演説、指導者などに非常に向いた声。

 そこへ、他者を誘導するテクニックを、先々代の城代が面白がって教えた。

 そしてそれが、人心を掌握する才能へと昇華された。その才能を、先々代の城代が、悪ノリしてどんどん伸ばして行ったのだ。

 そんなある日、グラジオラス辺境伯領へ賢者が帰還し、城代が交代となった。

 先々代がいなくなった後、少年だったリヴェルドは、その人心を掌握するという才能を試したくなってしまい・・・他領にて、その地域の領民を煽動して暴動を起こした。
 その領地は領主の治世があまり良いとは言えず、暴動が起こるのは時間の問題ではあった。
 結果、領主一族の犯罪行為が諸々暴かれ、領主一族は捕らえられて爵位剥奪。
 新しい領主がその地を治めることとなった。

 その暴動へ、リヴェルドが関わったという証拠は残していない。

 しかし、リヴェルドがその時期にその土地へいたことは間違いない事実。

 拠って、リヴェルドは要注意人物としてグラジオラスから籍を抜かれ、修道院へと送られた。

「リヴェルドよ。そんなに人間遊びたいというのなら、そこへ送られて来る愚か者共遊ぶといい。話の通じない馬鹿共を更正させるのは骨が折れる。難しい遊び程、やり甲斐があるだろう? まずは、司祭の資格を取ってみろ。遊ぶのはそれからだ」

 そう賢者へ言われたリヴェルドは、賢者の対応を甘いと思いながら・・・

 難易度の高い遊び・・を、よろこんだ。

 こうしてリヴェルドは神父となり、この修道院へ送られて来る、問題のある人物達・・・・・・・・を幾人も更正させ続け、聖人とまで言われる程になった。

 グラジオラス本家から要注意危険人物として、観察対象とされながら・・・

※※※※※※※※※※※※※※※

「しっかし、リヴェルドの奴は、姫様と賢者様のことをまるでわかってないな? あのお二人のことを甘いと評しておきながら、まだ自分が殺されると思ってるだなんてな? 俺が賢者様の頃から受けている指令は、お前が不穏な動きをしたら・・・即座に、お前の喉を潰すことだってのにな? お前の人心掌握は、その声が一番の要なんだから」

 とある梟は、城へ向かいながらぼやく。
 頭が良く、人心掌握に長けている筈なのに、身近な人間の気持ちをサッパリ理解できていない、愚かな幼馴染のことを・・・

 例え、ロディウスに喉を潰されたとしても、殺さなかったこと・・・・・・・・に対して、「甘いですね。あなた方は」という風に、穏やかに微笑むであろうリヴェルドのことを、苦く思いながら。
__________

 まあ、Aは以前登場した彼ですが・・・
 リヴェルドは聖人と称されてますよ?
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