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聖人リヴェルドの場合。
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修道院の懺悔部屋にて。
「あ~…いつ見ても気色悪っ! 鳥肌立つわ!」
修道院へ経過観察に来た、とある梟の感想。
「全く、ヒドい仰りようですね? 彼らが更正し、真人間へ戻るのは良いことではありませんか?」
やれやれと返すのは、この修道院の神父。
スッキリとした低音で、けれど耳に残り、もっと聞いていたくなるような心地よい美声をしている。
「真人間ってか、あれ明らかに洗脳レベルだろ? 人格変わり過ぎてて無茶苦茶怖いわ!」
梟は神父へ文句を付ける。
「わたしへ言われましても・・・それが望まれて、こちらへ送られて来た方々でしょうに?」
神父は穏やかに言う。
「そうだけどな? 限度ってもんがあるだろ。ここへ収監されて数ヶ月経たずにあれとか、妙な薬でも使ってンじゃねぇかって疑うレベルだ」
梟は神父へ胡乱な眼差しを送る。
「滅多なことを言うものではありませんよ? 断じて、怪しい薬などは使用していません。彼らへ説いたのは、聖典と神の教えだけです。まあ、あの彼については、処置されていることも無関係ではないでしょうが」
神父が、邪推をする梟を窘めた。
「あー・・・まあ、無くなると、性格も結構変わるとは聞くが・・・つか、妙な薬とか、なにも使ってない方が、むしろ怖いんだっての」
「? なにを仰りたいのか、わかり兼ねます」
「いや、お前笑ってっから」
「そうですか?」
神父は穏やかに微笑みを湛え続けている。そんな神父へ、梟は・・・
「つか、先々代の城代様マジ怖っ! お前みたいな化け物育てるとか、なに考えてンの?」
「さあ? あの方のお考えになることは・・・常に、面白いか面白くないか、でしたからね。というか、そう仰るあなたこそ、あの方へ育てられたうちの一人でしょうに? なにを今更?」
やれやれと、神父は諜報員達を束ねる長となった幼馴染へと呆れたような視線を送る。
「まあなー・・・賢者様や姫様の代は、非常に穏やかなんだと実感するわ。ヤバい感じにピーキーな連中は、今はそんなにいねぇしさ?」
「まあ・・・平穏なのは良いことだと思いますよ? あの方は波風を立てるのがお好きな方でしたからね? そして、わたしはあなたの方が恐ろしいと思うのですがね? ロディウス」
「えー? 俺のどこが恐ろしいんですかね? 聖人のリヴェルド様は」
「そうですね・・・とりあえず、幼馴染のわたしを、顔色一つ変えずに殺せるところでしょうか?」
「ハッハッハ、俺はお前が怪しい動きを見せなければ、特になにもしないさ? リヴェルド」
「まあ、あなたは別に、快楽殺人者でないということは判っていますよ。梟兼、暗殺者のロディウス。姫様や賢者様は、あの方へ比べると苛烈さを見せるところはあまりお見せになられませんが・・・だからこそ、不穏の種を刈ることを躊躇しないということも判っています」
「おう。俺も、幼馴染を消すのは寝覚めが悪い。せいぜい大人しく、連中の更正を頑張ってくれ」
グラジオラスの忠実な梟は、剣呑な光を宿した瞳で神父をじっくりと窺う。
「ええ。わたしも命は惜しいですからね」
「おう。じゃあ、また来るわ」
「ええ。ではまた」
神父に笑顔で見送られた梟は、修道院預りになっている者達の経過観察を城代の姫へ伝えるべく、グラジオラス城砦へと戻った。
「あ~…いつ見ても気色悪っ! 鳥肌立つわ!」
修道院へ経過観察に来た、とある梟の感想。
「全く、ヒドい仰りようですね? 彼らが更正し、真人間へ戻るのは良いことではありませんか?」
やれやれと返すのは、この修道院の神父。
スッキリとした低音で、けれど耳に残り、もっと聞いていたくなるような心地よい美声をしている。
「真人間ってか、あれ明らかに洗脳レベルだろ? 人格変わり過ぎてて無茶苦茶怖いわ!」
梟は神父へ文句を付ける。
「わたしへ言われましても・・・それが望まれて、こちらへ送られて来た方々でしょうに?」
神父は穏やかに言う。
「そうだけどな? 限度ってもんがあるだろ。ここへ収監されて数ヶ月経たずにあれとか、妙な薬でも使ってンじゃねぇかって疑うレベルだ」
梟は神父へ胡乱な眼差しを送る。
「滅多なことを言うものではありませんよ? 断じて、怪しい薬などは使用していません。彼らへ説いたのは、聖典と神の教えだけです。まあ、あの彼については、処置されていることも無関係ではないでしょうが」
神父が、邪推をする梟を窘めた。
「あー・・・まあ、無くなると、性格も結構変わるとは聞くが・・・つか、妙な薬とか、なにも使ってない方が、むしろ怖いんだっての」
「? なにを仰りたいのか、わかり兼ねます」
「いや、お前笑ってっから」
「そうですか?」
神父は穏やかに微笑みを湛え続けている。そんな神父へ、梟は・・・
「つか、先々代の城代様マジ怖っ! お前みたいな化け物育てるとか、なに考えてンの?」
「さあ? あの方のお考えになることは・・・常に、面白いか面白くないか、でしたからね。というか、そう仰るあなたこそ、あの方へ育てられたうちの一人でしょうに? なにを今更?」
やれやれと、神父は諜報員達を束ねる長となった幼馴染へと呆れたような視線を送る。
「まあなー・・・賢者様や姫様の代は、非常に穏やかなんだと実感するわ。ヤバい感じにピーキーな連中は、今はそんなにいねぇしさ?」
「まあ・・・平穏なのは良いことだと思いますよ? あの方は波風を立てるのがお好きな方でしたからね? そして、わたしはあなたの方が恐ろしいと思うのですがね? ロディウス」
「えー? 俺のどこが恐ろしいんですかね? 聖人のリヴェルド様は」
「そうですね・・・とりあえず、幼馴染のわたしを、顔色一つ変えずに殺せるところでしょうか?」
「ハッハッハ、俺はお前が怪しい動きを見せなければ、特になにもしないさ? リヴェルド」
「まあ、あなたは別に、快楽殺人者でないということは判っていますよ。梟兼、暗殺者のロディウス。姫様や賢者様は、あの方へ比べると苛烈さを見せるところはあまりお見せになられませんが・・・だからこそ、不穏の種を刈ることを躊躇しないということも判っています」
「おう。俺も、幼馴染を消すのは寝覚めが悪い。せいぜい大人しく、連中の更正を頑張ってくれ」
グラジオラスの忠実な梟は、剣呑な光を宿した瞳で神父をじっくりと窺う。
「ええ。わたしも命は惜しいですからね」
「おう。じゃあ、また来るわ」
「ええ。ではまた」
神父に笑顔で見送られた梟は、修道院預りになっている者達の経過観察を城代の姫へ伝えるべく、グラジオラス城砦へと戻った。
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