転生貴族の異世界無双生活

guju

文字の大きさ
上 下
105 / 136

領地運営と戦争準備②

しおりを挟む
 人っ子一人居ない裏路地は、少し大通りを外れただけなのにも関わらず不自然な程に静かだ。
 
 が……。
 ボロボロになった家の窓や、無造作に置かれた木箱の裏等から、まるで野生の狼が餌となる動物を狙っているかのような視線が、ひしひしと感じられる。
 どうやら、隠れているらしい。

「主様、如何致しますか? 」
「放っておけ、さほど害もないだろう」
「分かりました。向こうが手を出してから、こちらも動きます」
「あぁ、そうしてくれ」

 まぁ、そんなことは無いのだろうがな。
 恐らく、俺がここに向かってるという情報はスラムの首領には割れていて、その監視にコイツらを配備したのだろう。

「主様、首領の潜伏地までもう少しです」
「そうか……。ネメス、武器を構えておけよ」
「分かりました」

 アイテムボックスから取り出した大鎌を、ネメスは肩にかけるようにして手に持った。

 ネメスは、色々な種類の武器を扱うが、このような場所では見た目と威圧感に特化している鎌が最善だと判断したのだろう。
 それに、室内戦闘ではこの大鎌は強い。

 他の武器と違って軍勢を一網打尽に出来る上、切れ味が鋭いため壁や天井などが阻害にならない。
 むしろ、建物ごと壊せるため相手も迂闊に手を出せないのだ。

 普通、建物の中での大振りな武器は不利になるはずなんだがな……。

 さて、そろそろか。

「貴様、名を名乗れ!」

 2人の門番は、俺に槍を突き付けながら言う。
  俺が素直に名を名乗ろうとした時、横から伸びた手によって遮られた。

「お前達、我が主に不敬であるぞ」

 門番の持つ槍を握ると、いとも簡単に握り潰し、2つに分裂させてしまった。
 
「な、なに! 」

 驚く兵士の声。
 だが、よく訓練されたものだ。片割れの兵士は驚きはしたが恐れることは無く、手にしている槍でネメスを刺そうと突き刺す。

 だが、その槍でさえもネメスに捉えられ、あっさりとへし折られてしまった。
 そして、いつの間に宙に放っていたのか、落ちてきた大鎌を手に取る。

「ふむ、ようやく相応しい姿勢になったな」

 両膝をつき、折れた槍から手を離し地面に倒れ込む兵士太刀を見下ろし、ネメスは言う。

「主様、準備が整いました」
「はぁ……。ネメス、室内での戦闘行為は俺の許可が出るまで禁止だ」
「な、何故です! 私は主様に相応しい姿勢を……」
「アホか、取引しに来たやつが暴力で支配してどうする。今後の計画に支障が出るようなら、スーリヤと変わらせるぞ」
「うっ……すみません」

 気を落胆させながらも、頭を下げて謝るネメス。
 こいつは、普段は冷静であり役に立つのだが、今回のような場面や、俺に危害を加えようとしたものに対しては手加減を知らない。
 ヤツらの槍を捌いて、静かに無力化することも出来ただろうに。
 この騒ぎで、俺への印象が悪くなったらどうするんだよ……。まぁ、殴らなかっただけマシだが。

「いつまでそうしている、早く行くぞ」

 頭を上げないネメスにそう言うと、ぱっと頭を上げて俺の元へと駆け寄ってきた。
 なんか、拗ねた猫が再び懐いてくれた時のような、なんと言うかそんな感じがする。

 部屋の中にいた別の見張りに拠点を案内して貰い、ようやくスラムの首領と俺は対面した。

「そうこそおいでくださいました、新たに領主となられたアルト・ロード・シルバー伯爵殿」

 この野郎、だいぶと舐め腐ってくれてるじゃないか。
 貴族相手に''殿''だと。 ここの領主である俺と、一悶着起こしたいとでも考えているのか?
 普通に不敬罪で、ここで首を跳ねられるぞ……。

「お前がスラムの首領か、名前は……」
「シュプリーズです」
「シュプリーズ、今日はお前達に提案があってきた」

 先に吹っかけてきたのはそちら側だ。
 俺は、本来なら''取引き''と、双方メリットがあること前提の話ではなく、一方的な提案と明言した。

 この意味は、十分なまでに相手につたわっているようで、薄気味悪い笑顔を絶やさなかったシュプリーズの顔が、本の僅かに歪んだのを俺は見逃さなかった。
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

処理中です...