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大進行⑫
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ある静かな森の中。
木々が退くその広々とした場所には、天から眩しい太陽の光が差し込み、その光に照らされながら1人の青年が刀を振るっている。
その姿はまるで神の舞踊。
木々が退くその地はまるで祭壇のように美しい。
「壱の型 ーー虎斬波ーー 」
風が草木を揺らす音すら聞えずに、ただ刀が空を舞う音しか無かったその空間に、少し低めの透き通った声が響いた。
神の舞踊のごとく刀を振るっていた男は、少し動きを止めると、そのまま流れるように身体を横に回転させながら刀を振るう。
ーー刹那
その刀から、白銀に輝く斬撃が飛ぶ。
その斬撃は虎の如く鋭く、強靭なもので、目の前の木を数本貫通し、消えていった。
だが、それでは終わらない。
「弐の型 ーー乱刃ーー 」
男は、綺麗に着地すると、2度刀を振るう。
同じく白銀の斬撃が踊るように宙を舞った。
先程の威力よりかは数段劣るものの、その数は10を超える。
その刃は、木の葉を切り裂き、沢山の枝を切り落とす。
「参の型 ーー 天蜂ーー 」
地面を強く蹴り、刀を突き出す。
その突きは鋭い。
触れてはいない、その衝撃だけで1本の木に穴を開けた。
「伍の型 ーー乱れ桜ーー 」
男は、振り返りざまに横薙ぎ刀を振るうと、また一振、二振りと、段々と速さを上げながら刀を降って行く。
だが、その嵐は急に収まる。
ーーチャキン
刀が鞘に納まる音が静かな森に響き渡ると、男は、腰を落とし柄に手をかける。
「六の型 ーー居合三黒妖ーー 」
刹那、男は数メートル先に音も立てずに移動する。
風ひとつ生み出さない。何が起きたのだろうか。
数秒たって、改めて認識する。
何もしていない。ただ高速で移動しただけ。
そう脳が処理をした時、数メートル後ろから''ギチィ''という奇怪な音が聞こえてくる。
そこには、踊り狂う妖怪のようなものが3つ。黒い霧を纏って揺れている。
その正体は次元の歪みの修復だ。
あまりにも早い、そして強い斬撃を受けた次元が歪み、それを元に戻そうと働いた力と彼が放出した魔力がぶつかり音を出す。
そして、そこから黒い霧が溢れ出て、歪みに纏わり、あたかも妖怪が踊っているように見えるのだ。
「七の型 ーー螺旋龍水ーー 」
刀を刃を横に向けると、腰を軽く捻り、勢いよく回転する。
その回転は目で追えないほどに早く、周りには風が起こり、地面に散っていた枯れ草を浮かび上がらせる。
龍のごとく高く上がった風は、その中を水に流れる魚のように斬撃が流れている。
その龍は、草木を巻き込んで消滅した。
そこには、新たな祭壇が広がっていた。
「ふぅ……」
軽く息を吐き出すと、刀を鞘にしまいアイテムボックスに仕舞う。
「おうおう、派手にやったなぁ」
突如、何処からか現れた男がタオルを片手にやってきた。
この男は、剣聖。
幾多なる戦場を経験し、ドラゴンさえも己の肉体と剣のみで打ち倒した。
事実上、人間で最強の男である。
だが、その年齢は若々しく、赤髪にシワ1つない顔、アルトと同じ程の身長の青年である。
名を ハヴェ・レーニン と言う。
この男こそ、アルトの剣の師であり同じ国士騎士である者だ。
♢
時は遡ること2週間前
ギルドを出て引き留められたアルトは、話があると言う男について行き、近くのカフェに立ち寄った。
依頼を受けていたものの、大電鼠程度であれば、見つけて討伐するまで30分もかからない。
それ程に時間の余裕があったため、付き合った。
そこで、ハヴェに事情を説明され、この森の奥での特訓に至ったのである。
この剣聖である男が俺に師事をしたのは、陛下からの口添えによるものらしい。
アルト自身、剣の教えを受けたいとは思っていたものの、誰に教えを乞うかは定まっていなかった。
陛下にもこの話をした所、僅か数日で検討を立てたようである。
男と森に入って直ぐに陛下に手紙を書いたところ
「気にするな、戦力アップのためだ」
と返事が来たが、陛下の事であろう、恐らくは散々な状況にあるアルトの願いであればある程度は叶えてやりたいという思いからのものだろう。
だが、アルトは今の自分と同じ程度の年齢の相手。
どうも強そうには見えなかったのであろう、いきなり手合わせを願い出た。
契約前のネメスと似たようなところだろう。
自身は神の力を持っている。
その、あっては行けない慢心が彼との手合わせと繋がった。
結果は言うまでもない。
ーー惨敗。
自身のスキルを持ってしても、剣聖と謳われている彼にの足元にも及ばない。
アルトが持っているのは剣を扱う完璧な術である。
片や、ハヴェが持っているものはその隙のない剣技に加えて、長年剣を振り続けたが故の経験である。
アルトの敗因は圧倒的経験の差だ。
<hr>
絶対神の異世界チートハーレム無双!?
転移した復讐者は、チートで異世界を無双する!?
も書いてるので、この作品含め、お気に入り登録、高評価、コメント
頂けると幸いです。
木々が退くその広々とした場所には、天から眩しい太陽の光が差し込み、その光に照らされながら1人の青年が刀を振るっている。
その姿はまるで神の舞踊。
木々が退くその地はまるで祭壇のように美しい。
「壱の型 ーー虎斬波ーー 」
風が草木を揺らす音すら聞えずに、ただ刀が空を舞う音しか無かったその空間に、少し低めの透き通った声が響いた。
神の舞踊のごとく刀を振るっていた男は、少し動きを止めると、そのまま流れるように身体を横に回転させながら刀を振るう。
ーー刹那
その刀から、白銀に輝く斬撃が飛ぶ。
その斬撃は虎の如く鋭く、強靭なもので、目の前の木を数本貫通し、消えていった。
だが、それでは終わらない。
「弐の型 ーー乱刃ーー 」
男は、綺麗に着地すると、2度刀を振るう。
同じく白銀の斬撃が踊るように宙を舞った。
先程の威力よりかは数段劣るものの、その数は10を超える。
その刃は、木の葉を切り裂き、沢山の枝を切り落とす。
「参の型 ーー 天蜂ーー 」
地面を強く蹴り、刀を突き出す。
その突きは鋭い。
触れてはいない、その衝撃だけで1本の木に穴を開けた。
「伍の型 ーー乱れ桜ーー 」
男は、振り返りざまに横薙ぎ刀を振るうと、また一振、二振りと、段々と速さを上げながら刀を降って行く。
だが、その嵐は急に収まる。
ーーチャキン
刀が鞘に納まる音が静かな森に響き渡ると、男は、腰を落とし柄に手をかける。
「六の型 ーー居合三黒妖ーー 」
刹那、男は数メートル先に音も立てずに移動する。
風ひとつ生み出さない。何が起きたのだろうか。
数秒たって、改めて認識する。
何もしていない。ただ高速で移動しただけ。
そう脳が処理をした時、数メートル後ろから''ギチィ''という奇怪な音が聞こえてくる。
そこには、踊り狂う妖怪のようなものが3つ。黒い霧を纏って揺れている。
その正体は次元の歪みの修復だ。
あまりにも早い、そして強い斬撃を受けた次元が歪み、それを元に戻そうと働いた力と彼が放出した魔力がぶつかり音を出す。
そして、そこから黒い霧が溢れ出て、歪みに纏わり、あたかも妖怪が踊っているように見えるのだ。
「七の型 ーー螺旋龍水ーー 」
刀を刃を横に向けると、腰を軽く捻り、勢いよく回転する。
その回転は目で追えないほどに早く、周りには風が起こり、地面に散っていた枯れ草を浮かび上がらせる。
龍のごとく高く上がった風は、その中を水に流れる魚のように斬撃が流れている。
その龍は、草木を巻き込んで消滅した。
そこには、新たな祭壇が広がっていた。
「ふぅ……」
軽く息を吐き出すと、刀を鞘にしまいアイテムボックスに仕舞う。
「おうおう、派手にやったなぁ」
突如、何処からか現れた男がタオルを片手にやってきた。
この男は、剣聖。
幾多なる戦場を経験し、ドラゴンさえも己の肉体と剣のみで打ち倒した。
事実上、人間で最強の男である。
だが、その年齢は若々しく、赤髪にシワ1つない顔、アルトと同じ程の身長の青年である。
名を ハヴェ・レーニン と言う。
この男こそ、アルトの剣の師であり同じ国士騎士である者だ。
♢
時は遡ること2週間前
ギルドを出て引き留められたアルトは、話があると言う男について行き、近くのカフェに立ち寄った。
依頼を受けていたものの、大電鼠程度であれば、見つけて討伐するまで30分もかからない。
それ程に時間の余裕があったため、付き合った。
そこで、ハヴェに事情を説明され、この森の奥での特訓に至ったのである。
この剣聖である男が俺に師事をしたのは、陛下からの口添えによるものらしい。
アルト自身、剣の教えを受けたいとは思っていたものの、誰に教えを乞うかは定まっていなかった。
陛下にもこの話をした所、僅か数日で検討を立てたようである。
男と森に入って直ぐに陛下に手紙を書いたところ
「気にするな、戦力アップのためだ」
と返事が来たが、陛下の事であろう、恐らくは散々な状況にあるアルトの願いであればある程度は叶えてやりたいという思いからのものだろう。
だが、アルトは今の自分と同じ程度の年齢の相手。
どうも強そうには見えなかったのであろう、いきなり手合わせを願い出た。
契約前のネメスと似たようなところだろう。
自身は神の力を持っている。
その、あっては行けない慢心が彼との手合わせと繋がった。
結果は言うまでもない。
ーー惨敗。
自身のスキルを持ってしても、剣聖と謳われている彼にの足元にも及ばない。
アルトが持っているのは剣を扱う完璧な術である。
片や、ハヴェが持っているものはその隙のない剣技に加えて、長年剣を振り続けたが故の経験である。
アルトの敗因は圧倒的経験の差だ。
<hr>
絶対神の異世界チートハーレム無双!?
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