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帰還

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「う……うわぁぁあ! 」

ソニーが鎖に縛られ、地に吸い込まれて行く工程を見ていた男達が、我先にと出口に繋がる階段へと走り出す。

この部屋は、そこそこの大きさの為で階段まではある程度の距離がある。
そして、そこに辿り着くまでの時間があればゼロがそこを閉じることは容易い。

「氷壁」

ゼロのその言葉により唯一の出口には半透明の氷の壁が現れた。

ゼロは、別段魔法が使えない訳では無いのだ。神界にいた時に暇潰しがてら、異界の魔法など様々なものを覚えた。
だが、それよりも神力の方が使い勝手がいいため魔法を使う機会はなかったが……。


ーー郷に入れば郷に従え

この世界に来たのだからこの世界に合わせるのが賢いものである。
それに、せっかくこの地に来たのだ。少しは楽しめるだろうと考えた。


「ひ……ひぇ」

突然の壁にバランスを崩した一人の男が気の抜けた情けない声を漏らす。

「き、貴様! ふざけるな……ふざけるなよ! 俺たちをここから出せ! 」
「それは出来ぬな」
「だったら……」

男は腰に携えた剣を抜き放った。
馬鹿なのか、見ていなかったのか、やけになったのか。
彼は、適うはずもないゼロに剣を向けた。

「風雨の斗牛」

ゼロの目の前に青い魔法陣が展開されると、水で構成された三本の指を持つ龍は強風を体に纏っている。

「行け」

その命に従い、龍は男に向かって行く。

「舐めるなぁ! 」

男が剣で龍を斬ろうと振るうがそれは届かない。
それよりも先に、龍が彼の身体を上下に分断させていた。

宙に舞った胴体はドスッと地面に落ちる。
そして、それと同時にその龍は静かに消え去った。

「今ここにいる者達は決して動くでない。そうすれば、危害は加えないと約束しよう」

圧倒的な力の差を見せられている男達は、素直にその場に腰を落とした。いや、腰を抜かしたという方が正しいだろう。
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