16 / 33
ルーシェ5
しおりを挟む
八咫烏がゼロの指示を受け捜索を開始してから凡そ30分の時がたった。
未だ宿のベッドの上で体を横にしていたゼロが、不意に立ち上がる。
「ルーシェ」
「なんだ? 」
彼は、未だ響く二日酔いによる頭痛に唸りながらも返事をする。
「出てくる」
「ん? どうかしたんですかい? 」
「いや、少しな」
「そうか、俺は宿にいますわ。頭が痛くてなんにも出来んですしな」
ヘラヘラと笑いながら言うルーシェ。
ゼロは、少しは荷が楽になったのかと……自分の事を頼りにして信頼してくれているのだろうかと、そう考えて少し頬を緩ませる。
宿から出たゼロは、纏っていたローブを深く被り顔を隠し、気配を薄め建物の屋根の上へと一蹴りで登る。
そして、まるで背中から羽が生えたかの如く、軽やかな足取りで屋根を飛び移りながら走っていった。
宿から大分と離れただろう。ある小さな建物の屋根の上で、ゼロは足を止めた。
東に聳える太陽の光は、ゼロの影を作り出す。
その影から、先程飛び立ったはずの八咫烏が姿を現す。
「この家で間違いありません」
「様態は? 」
「既に死んでいます。地下牢にて、鎖に括りつけられ、吊るされたまま腐敗しています。
見たところ、防音の結界が貼られて居ます。故に見つからなかったのでしょう」
ゼロは息を大きく吐き出す。
やっぱりそうであったかと、想定していた事だと言わんばかりに。
だが、ゼロのその目からは怒りの意が溢れ出ている。
「ゼロ様、如何しましたか? 」
「いや、何でもない。 女の死体を丁寧に保管しておけ。俺は宿に戻る」
「御意」
そう言って、また影の中へと八咫烏は消えていった。
未だ宿のベッドの上で体を横にしていたゼロが、不意に立ち上がる。
「ルーシェ」
「なんだ? 」
彼は、未だ響く二日酔いによる頭痛に唸りながらも返事をする。
「出てくる」
「ん? どうかしたんですかい? 」
「いや、少しな」
「そうか、俺は宿にいますわ。頭が痛くてなんにも出来んですしな」
ヘラヘラと笑いながら言うルーシェ。
ゼロは、少しは荷が楽になったのかと……自分の事を頼りにして信頼してくれているのだろうかと、そう考えて少し頬を緩ませる。
宿から出たゼロは、纏っていたローブを深く被り顔を隠し、気配を薄め建物の屋根の上へと一蹴りで登る。
そして、まるで背中から羽が生えたかの如く、軽やかな足取りで屋根を飛び移りながら走っていった。
宿から大分と離れただろう。ある小さな建物の屋根の上で、ゼロは足を止めた。
東に聳える太陽の光は、ゼロの影を作り出す。
その影から、先程飛び立ったはずの八咫烏が姿を現す。
「この家で間違いありません」
「様態は? 」
「既に死んでいます。地下牢にて、鎖に括りつけられ、吊るされたまま腐敗しています。
見たところ、防音の結界が貼られて居ます。故に見つからなかったのでしょう」
ゼロは息を大きく吐き出す。
やっぱりそうであったかと、想定していた事だと言わんばかりに。
だが、ゼロのその目からは怒りの意が溢れ出ている。
「ゼロ様、如何しましたか? 」
「いや、何でもない。 女の死体を丁寧に保管しておけ。俺は宿に戻る」
「御意」
そう言って、また影の中へと八咫烏は消えていった。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる