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ルーシェ5

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八咫烏がゼロの指示を受け捜索を開始してから凡そ30分の時がたった。
未だ宿のベッドの上で体を横にしていたゼロが、不意に立ち上がる。

「ルーシェ」
「なんだ? 」

彼は、未だ響く二日酔いによる頭痛に唸りながらも返事をする。

「出てくる」
「ん? どうかしたんですかい? 」
「いや、少しな」
「そうか、俺は宿にいますわ。頭が痛くてなんにも出来んですしな」

ヘラヘラと笑いながら言うルーシェ。
ゼロは、少しは荷が楽になったのかと……自分の事を頼りにして信頼してくれているのだろうかと、そう考えて少し頬を緩ませる。

宿から出たゼロは、纏っていたローブを深く被り顔を隠し、気配を薄め建物の屋根の上へと一蹴りで登る。
そして、まるで背中から羽が生えたかの如く、軽やかな足取りで屋根を飛び移りながら走っていった。


宿から大分と離れただろう。ある小さな建物の屋根の上で、ゼロは足を止めた。
東に聳える太陽の光は、ゼロの影を作り出す。
その影から、先程飛び立ったはずの八咫烏が姿を現す。

「この家で間違いありません」
「様態は? 」
「既に死んでいます。地下牢にて、鎖に括りつけられ、吊るされたまま腐敗しています。 
見たところ、防音の結界が貼られて居ます。故に見つからなかったのでしょう」

ゼロは息を大きく吐き出す。
やっぱりそうであったかと、想定していた事だと言わんばかりに。
だが、ゼロのその目からは怒りの意が溢れ出ている。

「ゼロ様、如何しましたか? 」
「いや、何でもない。 女の死体を丁寧に保管しておけ。俺は宿に戻る」
「御意」

そう言って、また影の中へと八咫烏は消えていった。
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