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8.魔王を倒した男

前編下

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 今度こそ面接者のようです。出迎えたリリーが両扉から迎え入れました。
 なぜかリリーは、二本角のついたカチューシャをつけて魔王に仮装しています。
 それを見てどう感じているかはわかりかねますが、面接者は気にすることもなくゆっくりと椅子に腰掛けました。

 この日のために新調したのでしょうか、その絹のジャケットですら、鍛え抜かれた筋骨にとっては地味にも見えます。ともすればまだ鍛錬の途中のような体つきです。据えられた腰がしっかりと、面接者用の椅子は、その手応えを感じているでしょう。
 黒々とした短髪が重い一礼を開くのを見計らいます。

「私は勇者面接室室長勇者面接官、スター・ゲイザーです。今回の勇者採用面接を担当させていただきます」
 噛まずに言えました。
 褒めてくれるひとはいませんが、私の後ろから秘書のリリー・ユリーが魔王まんじゅうの箱を開ける音が聞こえます。飽きたのではなかったのでしょうか。そのほかの動きとしては妙に静かなので、また面接者の似顔絵を描き始めたのかもしれません。
 それはさておき。

「ゲイリー・カットーさん。ここでは最終面接としていくつかの質問をします。緊張していませんか? お名前の発音はこちらでよかったでしょうか?」
「はい、今までで一番緊張しているかもしれません。名前もそのアクセントでよく呼ばれていますので構いません。両親の代で王国へ移住してきたのですが、僕は王国生まれの王国育ちですから」
 ゲイリーさんはわずかにほおを緩ませながら答えました。

 面接に緊張や不安はつきものであると認識しています。どれだけ屈強な冒険者であってもそうなのでしょう。
 勇者を目指す者であるならなおさらのはずです。勇者試験の面接は人生でそう何度もあるチャンスではありませんから。
 ちらりとだけですが、ゲイリーさんは私の背後へ目を向けました。
 リリーの事務机にあふれ返る魔王討伐記念グッズが気になったのでしょうか。
 それとも勤務中に二本角のついたカチューシャで魔王に仮装し魔王まんじゅうを食べながら面接者の似顔絵を描いている職員が気になったのでしょうか。
 ゲイリーさんが気にした様子はないので面接への影響はないものと判断します。もしも気が散るなどの申し出があればリリー共々撤去します。

「それでは経歴から伺います。バトルマスターの称号を得られたのはハーケフェルテ地方での冒険のすぐ後ですが、この称号獲得に向けてのきっかけなどはありますか?」
 ゲイリーさんはAダイヤランクで戦士レベルは七十七という高い実力を持った冒険者です。
 バトルマスターの称号も有し、こちらのレベルは二十なのですが、これは戦士と武闘家の両能力が必要条件の上級称号職ですので、他の職業に対してのレベルの遅れは必然といえます。
 現時点での実力に疑念は起きません。そして実力に見合うだけの実績が多く並んでいます。
 技量や実績成果よりも、動機や精神面へ質疑を据えたほうが効率がよさそうです。経歴順に同じような質疑を繰り返しても、才幹や自己理念まではわかりませんから。

「はい、その冒険は前衛職がようやく板についたと思えたころでした。ハーケフェルテではモンスター討伐を中心に活動し、戦士でドラゴン・獅子竜ベルーダ種を、武闘家で狼人ライカンスロープの群れの討伐に成功しました。王都へ帰還し、次の冒険先を探していたときにちょうどバトルマスター称号試験があったので、今後の実力を伸ばすため、試すためにも受験しました」
「その冒険から固定のパーティーを組んでの経歴が続きますが、それらの討伐の際に出会われたのですか?」
「はい、運良く気の合う仲間ができ、順調に討伐を重ねることができました。実力も相性も申し分なく……僕にはもったいないくらいです。その後の冒険も彼らといっしょであることが多く……いつの間にか切り離せない仲になっていました」

 ハーケフェルテ地方は強力なモンスターが多く生息し、冒険者にとってはひとつの腕試しの場でもあります。
 そこで自信をつけるか、その冒険が最後になるか、どうあれ多くの冒険者にとって転機が訪れる地域として有名です。
 ゲイリーさんの冒険もそこでひとつの転機が訪れたのでしょう。板についたという謙遜はともかく、竜退治の成功は一流の冒険者の証ですし、ましてやその中でもベルーダ種の討伐は尊敬すらされるものです。

「ハーケフェルテ地方での一連の討伐における報酬についてお伺いします。合計の貨幣換算額と、パーティー内ではそれをどのように報酬を分けましたか?」
「はい、そのときも、それからもですが、拠点の町でギルド商人に見積もってもらい、次の冒険資金やギルドの手数料と運搬などの経費を差し引いて、残りをメンバー四人で均等に分けています。ハーケフェルテでは合計額面で金貨三百枚ほどでした」
「では報酬以外で、固定や臨時を問わずパーティーを組んでの冒険において、どのようなことを気をつけていますか?」
「はい、ええと、やはり役割を果たすことと、互いを信頼することだと思います。その仲間内には僕と、もうひとりの戦士がいるんですが、同じ役割でも臨機応変に入れ替わって行動しています。息が合う、というんですかね、瞬時の判断でも互いにフォローし合える仲なんですよ……」

 ゲイリーさんの眉が曇りました。仲間の戦士がそこにいるかのように視線が止まりました。
 突然の雨に打たれたように、曇天を眺めるように、そのまま一点をまっすぐに見つめています。
 焦点はわかりませんが目の方向は私の後ろ、リリーのほうです。
 やはり二本角のついたカチューシャで魔王に仮装して魔王まんじゅうを食べながら面接者の似顔絵を描いている勤務中とは思えない職員が気になるのでしょうか。
 おおよその面接者は勇者への風格を考えてか、おそらく普段以上に気丈にふるまう傾向があるものと認識しています。
 しかし今のゲイリーさんは、その気の合う仲間から見ても信頼されうるものでしょうか。
 隠そうとしていないのか、隠しきれないのか、とても勇者には似つかわしくない重い表情の中で移ろっています。哀愁や憂いよりももっと暗い、悲壮や弔いや、孤独といったものです。
 もちろん私の感じる印象ですし、質疑応答における表情を含む表現や所作についての明確な評価基準はありませんので、面接が進行できるのであれば構いません。
 勇者の風格という点ではわずかに減点ですが、これも面接時間内で総合的あるいは再現性を考慮して判断しますので、この時点での評価は軽率といえます。もともとそういう顔かもしれませんし、たとえば顔の作りが凛々しいかどうかでの評価基準もありません。
 仮に面談中ずっと故意に白目をむいていたとしても質疑応答が可能であれば面接への影響はありません。前例はありませんが。

「勇者への志望動機についてお伺いします。具体的に勇者試験に臨むきっかけとなったできごとはありますか? その時期についても教えてください」
 ゲイリーさんははっとしたように虚ろな目を戻しました。数回のまばたきを整えて、表情を新しく引き締めます。
「……あ、はい、志望動機……勇者を目指したのは、つい最近です。具体的には魔王討伐の後になります」
 事務机の魔王グッズには興味がないようにゲイリーさんは応答の目を据えました。
 この有象無象の魔王討伐記念商品を生み出したきっかけ本人です。
 面接に魔王グッズは関係ありませんが、もしかしたらリリーの買い込んだ品が事務机にあふれ返る様をゲイリーさんは気になって面談に集中できないのかもしれません。
 こちらの意図はないのですが、ゲイリーさんからすると魔王討伐者の前で魔王グッズをあふれさせ二本角のついたカチューシャで魔王に仮装し魔王まんじゅうを食べる職員の様子をわざわざ見せつけているように思われるかもしれません。
 やはり申し出があればリリー共々魔王グッズは撤去しますが、あえてこちらからその旨を告げると面接とは無関係な発言の誘導になってしまいますので本旨である質疑応答のみを行います。

「後というと、その討伐と関係がありますか?」
 ゲイリーさんは「はい」と短くうなずきました。
 やはりというか、この実績について質疑は避けられそうもありません。
 経歴について先入観や偏見があってはいけないのですが、だからこそ成果内容からすると魔王討伐は大変な偉業です。
 魔王討伐の功績者だからといって、それがそのまま勇者試験への合格になってはいけませんが、評価基準として魔王討伐は、竜退治以上に勇者に近づく実績のひとつです。

「では、魔王討伐の経緯を伺います。質問の、勇者試験へ臨むきっかけを中心にお願いします」
「はい。……少し長くなるかもしれませんが……」
 ゲイリーさんは一度、大きく息を吸って吐き出しました。

 魔王討伐については、このひと月の間で数え切れないほどの質問を受けたでしょう。
 対策室の聞き取り調書であったり、記者の取材であったり、街を歩くにもそれまで通りにはいかないはずです。ましてやゲイリーさんは魔王討伐の功績者、その筆頭ですから。

 しばらく沈黙が続きます。応答の意思はあるようなので待ちます。

 勇者を目指すものにとって、魔王とは特別な存在です。
 そして冒険者としても、魔王討伐というのは最高の名誉です。
 近年での意味具合が変化しているのは否めませんが、概念、これだけは普遍のものです。
 腕に自信のある者は機会を狙い、駆け出しの者は追いかけるようにそれを目指しています。すでに勇者称号を授与されている方も討伐に臨み、そして特に勝利を期待されています。

 かつて魔王を倒した者には、そのまま王命で勇者称号が与えられていました。
 勇者こそ魔王を倒せる唯一の存在と考えられていた時代です。
 世界を救う希望と、世界を滅ぼす絶望。両者は相反する正義と悪の象徴そのものですから。
 古典的ではあっても、その概念に変化はありません。

 ただ、現代ではこの魔王討伐特例称号制度は廃止されています。
 魔王は多いときは毎年のように現れますので、そのたびに現実的な問題として勇者とその報奨金の支払いが増え過ぎてしまったのが原因です。
 その後においても毎年の慰労金名目の支払いやご家族への特別功労金もありますし、パーティー内の誰が勇者か、あるいは全員が勇者なのかと揉めたケースもあるようです。
 これがもし現代であれば、大規模チームによる討伐で大量の勇者が生まれ、王国の財政はひっ迫してしまいます。
 それで近年では王国からの魔王討伐の報奨は一人あたり一律金貨百枚のみと定められ、年間の国家予算があてられています。
 世界の救世主への報酬としてはかなり少ないのですが、討伐参加人数が大規模であったり、その年の魔王の出現が多かったりすれば王国は財政負担で滅びてしまいます。
 時代がどれだけ変わろうと、魔王の存在は国家の脅威です。

 もはや魔王討伐における歳出は一般会計に移り、魔王出現を年あたり一度とその討伐者を十名と仮想定して予算が割かれますが、足りなければ追加予算獲得に債権をあてることもありますので、この項目の決算不足補てん繰戻は年々増加しています。
 しかし報奨金を減らすと討伐に挑む冒険者は減ってしまいますので、魔王が現れるたびに財務局は恐怖の悲鳴を上げています。
 倒したはずの魔王が復活でもすれば、会計令により報奨金の取りやめはできませんので、国家予算は火の車です。
 魔王の絶命確認は魔法局医師薬学会の検死のもと何重にも行われていますが、それでも復活の際に当局に責任を押し付けると国家医師会の反発が予想されますので、復活責任は曖昧なまま行政は、魔王復活という混乱の渦に飲まれます。
 おそらく、ほかの周辺国も同様ではないでしょうか。魔王討伐には国家の威信がかかっているのですが、現実面からすると、本音としては他の国の者に倒してほしいという議員の声さえあります。
 魔王の出現やその居城がどの国かもその時の魔王次第ですから、自国に現れて他国が倒すというのも今後の外交上で不利へとつながります。
 どの国も魔王の出現には恐怖とジレンマを抱えています。ちなみに今回前回ともにこの王国の領地内でした。
 魔王の出現は、世界中が忌み嫌う恐怖の対象なのです。

 ゲイリーさんが口を重そうに開きました。
「質問と離れることがあるかもしれませんが、順を追って話します」

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