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第十章 ハッピーエンド!

第三十七話

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 今日、レイラ王国にある教会で、一つの結婚式が執り行われる。

 私はウェディングドレスに身を包んで、ティアラ付きのベールで顔を隠すようにしながら……扉の前で、その時を静かに待っていた。

「準備はよろしいですか?」

 そばにいた王宮の従者がと尋ねてきたので、私がはいと答える。

 すると扉が開かれた。

 左右には多くの参列者がいて、私の入場を拍手で迎えてくれている……数多くの貴族・王族関係者が参列しているのであろう、席はいっぱいだ。

 座席を見ると、私の大切な友人……アルア・タリブ・シハロがいて拍手を送ってくれていた。

 そして教会の奥……神父様の前には私の夫となる人――ワハイドと、笑顔で私の入場を見守っているウェディングドレスに身を包んだアミーラと、正装をしているエスネイニがいた。

 そう……今日は私とワハイド、アミーラとエスネイニの合同結婚式だ。

 通常であれば王族同士の結婚式を同じ日に、同じ場所でやることはありえないのだけど……私とアミーラの強い要望があって、同時開催をする運びとなった。

 友人たちの顔を見ながらバージンロードを歩いていると、学生時代の思い出が蘇ってくる。

 星願いの日、ワハイドからのプロポーズを受けた私は笑顔でそれを受け入れ、別れを惜しみながらワハイドは自宅に、私は学園の寮へと戻った。

 そして翌日、アミーラからエスネイニと上手くいったという報告を受けながら、私の方も好きな人と結婚の約束ができたと打ち明けると……アミーラは最初びっくりしていたけど、すぐに泣きながら喜んで抱きしめてくれた。

 アルアたちもおめでとうと言って、今日と同じように拍手してくれていたっけ。

 エスネイニも笑って見守ってくれていたけど……これからのことを思うと、彼のことをどこか真っ直ぐに見れない私がいた。

 それから少しして……父親にワハイドのことを紹介したり婚約の了承を得たり、ワハイドの方は反王政派を説得していたりしていたら、あっという間にアミーラ・タリブ・エスネイニが卒業する日になった。

 多くの学園OBや親族が招かれている中にワハイドもいて、私は照れながらも婚約者だと彼らにワハイドを紹介した。

 最初は彼の見た目もあってか驚いていたけど、すぐに笑顔でよろしくおねがいしますと無難な挨拶を交わしていた。

 ……その後、エスネイニだけを呼び止めて、大事な話があるといつもの図書室に連れて行き、全てを話した時はさっき以上の驚いた表情を見せていた。

 ワハイドが兄であること、反王政派の人間であること、王位を奪うつもりはないこと、ただ王族として受け入れてもらいたい、エスネイニとアミーラの国政を支えたいと……包み隠さず全てを語った。

 最初、エスネイニは訝しげな表情をしていたけど……ワハイドが母親の話をしたところで、思い当たる節があったらしくバッと私の方を見てきて、私が静かに頷くと、彼は涙を流しながら話を信じてくれた。

 彼は母親から愛されていない、母親は浮気をしていると思っていたけど……そうではなかったと知れて、嬉しそうに子供のようにワンワン泣いていて、ワハイドはそんな彼の背中を優しくさすっていた。

 そして学園を卒業したエスネイニは王太子として、アミーラは王太子妃としての国のために政治・責務をこなす日々を送り始めた。

 王太子としての業務をこなすようになったエスネイニは、まず王宮内外にワハイドのことを公表……彼を改めて王子として王宮に迎え、自分の補佐とすることを発表した。

 王宮の内部も王都も……国中が驚いたけれど、王宮には彼のことを覚えている従者もまだ残っていたおかげもあってか、思っていたよりかはすんなりと受け入れられたらしい。

 そうワハイドからは聞いているけど……まだ学生の私には分からないところで、様々な苦労があったことだろう。

 タリブはエスネイニからその優秀さを買われ、王宮で働く初めての下級貴族になった。

 今まで王宮にいた上級貴族たちは良い顔をしなかったらしいが、タリブ以上に優秀な人間がここにいるか? とエスネイニが言うと、全員黙り込んだらしい。

 王女の元で働いてくれていた貴族たちは優秀なタリブを即戦力としてすぐに受け入れ、彼らの指導を受けながらエスネイニが王になる日の準備を進めていた。

 まだ学生の私・アルア・シハロはそんな彼らと手紙のやり取りをしながら、卒業して再会できる時を心待ちにしていた。
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