騎士団長の秘密

さねうずる

文字の大きさ
上 下
7 / 41

交際12日目 ツボのおさえかたが的確すぎませんか

しおりを挟む

その後も順調に動物たちを見て回り、入り口の売店まで戻ってくると、シーナに一声かけてトイレに向かう。

トイレから戻るとシーナは売店の中にいた。
何やら手に持ち、熱心に眺めているようだ。
そのうち少し目を細め、愛おしそうに親指で一撫ですると元の位置にそれを戻す。

ポーラールの姿に気付いたようで、「やはり俺も用を足してくる」とすれ違うように手洗いに向かっていった。

(何見てあんな顔してたんだ?)

本日2度目の衝撃だ。
シーナにあんな顔をさせる物体とは一体!?
先程までシーナがいた場所に向かう。
するとそこにあったのは、手のひらに収まる大きさの白熊のキーホルダーだった。

背中のボタンを押すと「ガオガオッ」と荒い音で鳴き声が流れる。

ポーラールは白熊の獣人だ。

手のなかの白熊のキーホルダーを愛しげに撫で付けていたシーナを思い出す。


(もしほんとの恋人になって、シーナ団長がもっと俺に心を許したら……
あの綺麗な目を愛しそうに細めて、俺のこと見つめたりすんのかな。)


想像しただけで、心の奥底が熱を持って落ち着かない。

(いやいや、デカい男は範疇外!俺は可愛いのが好き!)

自分に言い聞かせるように頭のなかで何度もそう唱えた。




「そろそろ腹空かないっすか?」

シーナがトイレから戻り、時計を確認するとお昼にはちょうどいい時間だ。

ここからだと店はどこがいいだろう。

ポーラールが考えていると、シーナが手に持っている籠を少し持ち上げる。

「弁当を作ってきた。」

実はシーナが持っている籠が朝からずっと気になっていたポーラールはその謎をやっと解くことができた。

(弁当だったのか。)

謎が解けてポーラールは少しすっきりした心持ちになり、動物園に併設するように大きい芝生の公園に移動することにした。

楠の木の下に二人で腰を落ち着けると、シーナが籠から、サンドウィッチやら、揚げ物やら、可愛く串に刺さったプチトマトとチーズの添え物やらと続々と美味しそうな食べ物たちを出していく。
デザートに焼き菓子まで用意してあった。


これまた可愛らしい丸みのあるフォークとお揃いのデザイン水筒、皿を並べ、ポーラールに手渡してくれる。

「どもっす。
どれもめっちゃ旨そうっすね。」

知らず知らずのうちに頬が緩んでしまう。
褒め言葉はお世辞ではなくつい口からでてしまった。

綺麗にタッパーに詰められた食材は色彩豊かで目にも楽しい。

パストラミのサンドウィッチも唐揚げもキッシュも詰められている何もかもがポーラールの好物ばかりだった。


今日の待ち合わせ時間はポーラールが朝早くに設定した。
夕方から別の恋人と予定があったから。

これだけの弁当を用意するのに一体どれほど早くに起きて準備をしてくれたのか。
それにシーナはいつもポーラールより前に来て待っていてくれる。

自分の都合で朝早くに集合時間を設定してしまったことに少しだけ罪悪感を覚えた。


(俺のためにわざわざ早起きしてこんなに用意してくれたのか。)


そう思うと、心臓がじんじんするような、むず痒いような気持ちになる。


「まじで旨かったっす。
ごちそーさまでした。」

見た目通りの美味しさでポーラールは手を止めることなくペロリと全部平らげてしまった。
シーナがコップに注いでくれたお茶を飲んで一息着くと、春先の気持ちのよい風に意識が向く。


実家にいるときは大勢の兄弟に囲まれてギャーギャー賑やかしく暮らしていたし、騎士になってからもムサい男どもに囲まれ、昼は汗と土埃にまみれ、夜は恋人と遊び回る日々。


(こんなに心が凪いでいると感じるのは久しぶり……いや、初めてかもしれない。)

二人で隣に並び、木に背を預けて
穏やかにゆったりと過ぎてゆく時間を楽しんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

屈強な男が借金のカタに後宮に入れられたら

信号六
BL
後宮のどの美女にも美少年にも手を出さなかった美青年王アズと、その対策にダメ元で連れてこられた屈強男性妃イルドルの短いお話です。屈強男性受け!以前Twitterで載せた作品の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です 酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります 攻 井之上 勇気 まだまだ若手のサラリーマン 元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい でも翌朝には完全に記憶がない 受 牧野・ハロルド・エリス 天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司 金髪ロング、勇気より背が高い 勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん ユウキにオヨメサンにしてもらいたい 同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

ルピナスの花束

キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。 ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。 想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。

馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

phyr
BL
死にかけで放り出されていたところを拾ってくれたのが、俺の師匠。今まで出会ったどんな人間よりも強くて格好良くて、綺麗で優しい人だ。だからどんなに犬扱いされても、例え師匠にその気がなくても、絶対に俺がこの人を手に入れる。 家も名前もなかった弟子が、血筋も名声も一級品の師匠に焦がれて求めて、手に入れるお話。 ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています。  第9回BL小説大賞にもエントリー済み。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...