騎士団長の秘密

さねうずる

文字の大きさ
上 下
1 / 41

衝撃の告白 その壱 (第三者目線)

しおりを挟む


「俺は、ポラール殿を好いている」

「「「 なんて!?!?!?」」」

クティノス王国で四半期に一度開催される騎士団上層部会議でのことだった。

東西南北の4つの軍をそれぞれ束ねる騎士団長と副団長たちが一堂に会し行われるこの会議では、来年の春に予定している合同演習の計画がおおよそまとまったところだ。

会議も終わり、先ほどまで張りつめていた空気を無理やりほぐすかのように、それぞれが近くの席の者ととりとめのない話をし始めていた。


(どうしよう・・・)


西軍の副団長であるリシッツァ・アローペークスは今非常に困っていた。

キツネの獣人である彼は、つりあがった切れ長の目をしており、瞳孔の動きが読みづらい。
口元には常にほんの僅かな微笑がうかんでおり、その顔はとても困っているようには見えない。
しかし、実際の彼は他者からは見えづらい瞳孔を右に左にとキョロキョロ動かし、誰か助けてーと心の中で救援を要請を出していた。

(他の人の会話にあぶれて、シーナ団長しか残ってない!!!)

横に座っている東軍の団長であるリューセー・シーナをバレないようにチラッと伺い見る。

そこには、お手本のように綺麗に姿勢を正した美丈夫が、何を考えているか分からない無表情で真っ直ぐ前を見つめていた。

彼はこの国の色彩豊かな人々とは些か見た目が異なる。
柔らかそうな黒髪を後ろに撫で付け、深い藍色の瞳には、星のような金色の粒がきらきら輝いていた。
この国よりもっと東にある国の生まれだと以前誰かから聞いたことがある。

そして何よりシーナ団長はとんでもなく無口だ。
以前知らずに、
「この会議で出るお茶とお菓子いつもおいしいですよねー」
なんて呑気に話しかけたら、視線すら向けられず「そうか。」とだけ返事をされたことがある。


逆側に座る自軍の団長に助けを求めるように視線を投げるが、完全にこちらに背を向け楽しそうにバカ笑いしていた。

(あなたの支度が遅いから、会議ギリギリの到着になってこの席しか空いてなかったのに!!)

背中をひっぱたいてやりたい衝動にかられるが、グッと手を握って我慢した。
このまま黙って時が過ぎるのを待つ手もある。
あるが!気遣い屋の自分にはこの空気が息苦しくて堪らない。

(誰か!誰か頼む!
話題を、、、何か話題をくれ!!!)

「そっ、そういえば演習のあとに行われる王都のお祭りがあるじゃないですか。
その余興で市井の女性たちがこの国の好きな男性に投票する催しがあるのですが、シーナ団長は3年連続1位だそうですよ。」

「・・・」

「すっ、すごいモテモテで羨ましいなっ!
ご結婚とかされないんですか??
選びたい放題だから一人に絞るの難しいですよね!あははー・・」

(ヤバい・・・
最初の会話で返事が帰ってこないことに焦って、バカなことを口走ってしまった。どうする!?どうする!?どうしたらいい!!!?)

リシッツェが内心冷や汗をだらだらと流しながら、焦っているとシーナが静かに言葉を紡ぐ。

「...俺は、ポーラール殿を好いているから、結婚する予定はない」

「「「 なんて!?!?!?」」」



(みんな聞いてたんかーーい。)

シーナが衝撃発言をすると周りの奴らが一斉に反応した。
滅多に話さないシーナとの会話の内容が気になってどうやら聞き耳をたてていたらしい。
ならもっと序盤で助けろやーーい。と脳内ツッコミを入れるが今はそれどころではない。

シーナの口から突然名前が飛び出した白熊獣人の北軍副団長 アルク・ポーラールはちょうど円卓のシーナの真正面の席に座っていた。
驚いたように口を開け、アホ面でシーナを見ている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】君に愛を教えたい

隅枝 輝羽
BL
何もかもに疲れた自己評価低め30代社畜サラリーマンが保護した猫と幸せになる現代ファンタジーBL短編。 ◇◇◇ 2023年のお祭りに参加してみたくてなんとなく投稿。 エブリスタさんに転載するために、少し改稿したのでこちらも修正してます。 大幅改稿はしてなくて、語尾を整えるくらいですかね……。

屈強な男が借金のカタに後宮に入れられたら

信号六
BL
後宮のどの美女にも美少年にも手を出さなかった美青年王アズと、その対策にダメ元で連れてこられた屈強男性妃イルドルの短いお話です。屈強男性受け!以前Twitterで載せた作品の短編小説版です。 (ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)

完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です 酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります 攻 井之上 勇気 まだまだ若手のサラリーマン 元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい でも翌朝には完全に記憶がない 受 牧野・ハロルド・エリス 天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司 金髪ロング、勇気より背が高い 勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん ユウキにオヨメサンにしてもらいたい 同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

お前だけが俺の運命の番

水無瀬雨音
BL
孤児の俺ヴェルトリーはオメガだが、ベータのふりをして、宿屋で働かせてもらっている。それなりに充実した毎日を過ごしていたとき、狼の獣人のアルファ、リュカが現れた。いきなりキスしてきたリュカは、俺に「お前は俺の運命の番だ」と言ってきた。 オメガの集められる施設に行くか、リュカの屋敷に行くかの選択を迫られ、抜け出せる可能性の高いリュカの屋敷に行くことにした俺。新しい暮らしになれ、意外と優しいリュカにだんだんと惹かれて行く。 それなのにリュカが一向に番にしてくれないことに不満を抱いていたとき、彼に婚約者がいることを知り……? 『ロマンチックな恋ならば』とリンクしていますが、読まなくても支障ありません。頭を空っぽにして読んでください。 ふじょっしーのコンテストに応募しています。

お互い嫌っていると思っていたのは俺だけだったらしい【完】

おはぎ
BL
お互い嫌っていて、会えば憎まれ口を叩くわ喧嘩するわで犬猿の仲のルイスとディラン。そんな中、一緒に潜入捜査をすることになり……。

処理中です...