58 / 59
ハラルトの教訓 その一
しおりを挟む「国王様ってほんと素敵だよね。」
「穏やかで優しくて大人の男性って感じ。」
「あーん、王妃様羨ましすぎる。」
「ハラルト様、国王って普段はどんな方なんですかぁ?」
キャピキャピと周りを囲んでくる同級生たちをハラルトは鼻で笑って一蹴した。
こいつらは何も分かっていない。
レオとハルの息子のハラルトは現在10歳。
ハラルトの知っているレオは同級生が想像しているような凛としてシャンとして常に穏やかに微笑んでいるような完成された人間ではない。
父上が素敵だって?
見た目は大陸一の美丈夫と言われるほど整ってはいるがそれは見た目だけだ。
普段の父上の姿なんて知ったら、こいつらはさぞや驚くことになるだろう・・・・・・・・。
「ハルー、執務疲れたよ。マッサージして?」
「ハルー、オリバーが隣国への視察の予定入れたんだ。行きたくないよ。」
「ハルー、今日も一緒にお風呂入っていい?」
普段の父上は基本、ハルハルハルと父様の名前を連呼している。
ベタベタと子供みたいに甘えている姿は素敵とは程遠い。
国民に見せる姿とのギャップが子供ながら居た堪れない。
父様もそんな父上のことを怒るでもなく、「はいはい」と甘やかすから助長するのだ。
ゼノウさんもオリバーさんもなんだかんだ父上に甘いし、国王だから他に怒れる人もいない。
僕がしっかりしなくては。とハラルトは10歳ながら使命感に駆られていた。
そんなハラルトだが父であるレオではなく、ゼノウに対し強い憧れを抱いていた。
強くてかっこよくて豪胆で快活、そんなゼノウに憧れて来年からは騎士学校に行くことも決めている。
騎士学校に行けば親元を離れ、寮生活だ。
父様は心配していたけど、憧れのゼノウにまた一歩近づけるとあってハラルトは興奮していた。
「父上、父様、僕は将来国王ではなく、ゼノウさんのような立派な騎士団長になりたいのです。」
「ハラルトはゼノウに憧れているの?」
レオは豪奢な椅子の肘掛けに片肘をつき、目を細めてこちらを見ている。
笑っているようで笑っていない。
レオの圧にハラルトは少しだけ身じろいだ。
「そ、そうです。
僕は勇敢な騎士になりたいんです。
父上みたいに父様にベタベタ甘えるような男ではなく、ゼノウさんみたいに強くて漢らしくありたいのです。」
「レオ様だって本当はとっても強いんですよ。腕相撲ならゼノウ様より強いですし。」
ハルがすかさずレオのフォローをするが、少々的外れである。
「父様、僕が言っているのはそういうことではありません。
とにかく!僕はゼノウさんみたいな漢の中の漢になりたいんです!」
「ふーん。ハラルトはゼノウのことそんな漢らしい奴だと思ってるんだね。」
レオは何やら含み笑いをすると、指を口に当て考える素振りをした。
ハラルトはそれをじっと見ている。
「じゃあ、ゼノウが普段からどれだけ漢らしいか、こっそり見に行ってみようか。」
10
お気に入りに追加
2,977
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
既成事実さえあれば大丈夫
ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。
薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。
【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
ルピナスの花束
キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。
ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。
想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる