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ハラルトの教訓 その一

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「国王様ってほんと素敵だよね。」
「穏やかで優しくて大人の男性って感じ。」
「あーん、王妃様羨ましすぎる。」
「ハラルト様、国王って普段はどんな方なんですかぁ?」

キャピキャピと周りを囲んでくる同級生たちをハラルトは鼻で笑って一蹴した。

こいつらは何も分かっていない。

レオとハルの息子のハラルトは現在10歳。
ハラルトの知っているレオは同級生が想像しているような凛としてシャンとして常に穏やかに微笑んでいるような完成された人間ではない。


父上が素敵だって?
見た目は大陸一の美丈夫と言われるほど整ってはいるがそれは見た目だけだ。
普段の父上の姿なんて知ったら、こいつらはさぞや驚くことになるだろう・・・・・・・・。



「ハルー、執務疲れたよ。マッサージして?」

「ハルー、オリバーが隣国への視察の予定入れたんだ。行きたくないよ。」

「ハルー、今日も一緒にお風呂入っていい?」

普段の父上は基本、ハルハルハルと父様の名前を連呼している。

ベタベタと子供みたいに甘えている姿は素敵とは程遠い。
国民に見せる姿とのギャップが子供ながら居た堪れない。

父様もそんな父上のことを怒るでもなく、「はいはい」と甘やかすから助長するのだ。
ゼノウさんもオリバーさんもなんだかんだ父上に甘いし、国王だから他に怒れる人もいない。

僕がしっかりしなくては。とハラルトは10歳ながら使命感に駆られていた。

そんなハラルトだが父であるレオではなく、ゼノウに対し強い憧れを抱いていた。
強くてかっこよくて豪胆で快活、そんなゼノウに憧れて来年からは騎士学校に行くことも決めている。

騎士学校に行けば親元を離れ、寮生活だ。
父様は心配していたけど、憧れのゼノウにまた一歩近づけるとあってハラルトは興奮していた。


「父上、父様、僕は将来国王ではなく、ゼノウさんのような立派な騎士団長になりたいのです。」

「ハラルトはゼノウに憧れているの?」

レオは豪奢な椅子の肘掛けに片肘をつき、目を細めてこちらを見ている。
笑っているようで笑っていない。
レオの圧にハラルトは少しだけ身じろいだ。


「そ、そうです。
僕は勇敢な騎士になりたいんです。
父上みたいに父様にベタベタ甘えるような男ではなく、ゼノウさんみたいに強くて漢らしくありたいのです。」

「レオ様だって本当はとっても強いんですよ。腕相撲ならゼノウ様より強いですし。」

ハルがすかさずレオのフォローをするが、少々的外れである。


「父様、僕が言っているのはそういうことではありません。
とにかく!僕はゼノウさんみたいな漢の中の漢になりたいんです!」

「ふーん。ハラルトはゼノウのことそんな漢らしい奴だと思ってるんだね。」

レオは何やら含み笑いをすると、指を口に当て考える素振りをした。
ハラルトはそれをじっと見ている。

「じゃあ、ゼノウが普段からどれだけ漢らしいか、こっそり見に行ってみようか。」

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