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14 ドキドキのおうちデート その3

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ビールを飲みながら、
「あー、幸せ。」
なんて溢す一ノ瀬さんをこっそり見つめる。

幸せならずっと僕の恋人でいればいいのに。
心で叫んで、口では「そうですねぇ」なんて無難な返事をした。


「沖くんが運命の番の人は最高だろうな。」


一ノ瀬さんは時折こうして残酷なことを言う。
いや、本人からしたら褒めてるのかもしれないけど、僕からしたらちょっと傷つく言葉だ。
彼は僕が自分のことを好きなんてカケラも気付いていないからしょうがないのかもしれないけど。

「はは、そうですかね?可愛くないってガッカリするんじゃないかな。」

「それはない。沖くん可愛いし。」

~~このニブチン男めっ。
愛しさ余ってちょっと憎たらしくなってきたぞ。

ひとしきりお酒を飲むと、二人して床についた。
僕がベッドで、一ノ瀬さんが布団。
客用の布団を用意しておいてつくづくよかったと思う。
なぜなら一ノ瀬さんは僕に手を出す気ゼロだから。
同じ布団でカケラも意識してもらえないのは、オメガとしてちょっと悲しい。


「一ノ瀬さん、お休みなさい。」
「お休み、沖くん。」



・・・・・・・・ダメだ、眠れない。
強かに酔ってはいたが、昼寝のせいで全く眠くない。
何度も何度も寝返りを打ち、しっくりくる体勢を探るが眠れない。
薄暗い天井をボーっと眺めて眠気が訪れるのを待っていると、、、

「沖くん起きてる?」
「・・・・起きてます。」

一ノ瀬さんも起きてたようだ。
僕が何度も寝返りを打っていたため寝られないのがバレたのだろう。

「眠れそう?」「あんまり・・・・」
「ハハッ、俺も。」

真っ暗な部屋の中、ベッドの下の一ノ瀬さんの姿は見えない。
いつもはあのカッコいい顔にちょっと緊張してしまってる自分がいるけど、声だけだと落ち着いて話ができる気がした。

「聞いてもいいですか?」「おー、いいよ。」
「一ノ瀬さんの叔父さんって運命の番と結婚したんですよね?どんな人なんですか?」

一ノ瀬さんが憧れる運命の番との結婚っていうのがどんな感じなのか知りたかった。
僕は運命の番にあんまりいいイメージがないから。

「優しい人だよ。俺の両親はさ、恋愛結婚なのに俺が中学上がる前には口も聞かないほど仲悪くて、お互い愛人の家から帰って来ないから叔父さん達が俺のこと育ててくれたようなもんなんだよ。

父親なんかは俺の顔見るたび『母親に似て生意気そうな目』とか言ってくるし、母親は母親で『その偉そうな態度が父親そっくり』とか言ってくるし。
ある意味似たもの夫婦だったけどな。笑」

「・・・・そうだったんですか。」

「そう。叔父さんの番はマサフミさんつってオメガの男性なんだけど、二人が初めて会った時、嗅いだことないようないい匂いがしてすぐ運命の番って分かったらしい。叔父さんもマサフミさんも結婚して20年以上経つのに未だに愛し合ってて、すげえ憧れる。」

「素敵なご夫夫なんですね。」


・・・・そうだよな。
本来、運命の番って祝福される素晴らしいことであって、、、僕がそう思えないだけで、憧れて当然なんだよな。

「・・・・一ノ瀬さんの運命の番も早く現れるといいですね。」

「おう!沖くん、ありがとう。」

一ノ瀬さんはその後ちゃんと寝られたみたいだけど僕はほとんど寝付けなかった。
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