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13 私はこうして射抜かれました。
しおりを挟む王宮に着くと、そこら中黒い鎧の騎士だらけだった。
グリードの部屋の前にも騎士が待機しており、入れない。
でもこの時間はグリードはこの部屋にはいないはず。
王女の部屋の前にも騎士がいるが、中に人がいる気配はない。
王女はいつも喚いているからよく部屋の外まで声が聞こえてるけど、今日はそれがない。
宮殿中駆け回ると、謁見の間の前に黒い鎧の騎士が集まっているのが見えた。
きっとあそこにグリードはいる。
よく分からないけど、絶対的な確信があった。
体に触れないよう気をつけながら、騎士の間を縫うように抜ける。
謁見の広間には、王様、王妃様、王子、王女、それに何人かの人たちが縛られて並ばされていた。
その中にはグリードもいる。
「我が国に喧嘩を売るとはいい度胸だが、喧嘩相手はよく見極めることだな。まぁ、もう遅いが。」
黒い鎧の騎士の中から一際絢爛(けんらん)な鎧を纏(まと)った壮年の男性が、縛られた王族たちに向かって話し掛ける。
縛られた側の人たちは憎々しげにその男性を睨みつけたり、諦めたように項垂れたりしていた。
王族たちはプルプルと子犬のように震えているだけだったけど。あとグリードも。
「君たちにはうちの将軍がよく世話になったようだし、取り敢えず同じ目に遭ってもらおうかな。
あぁ、王族とバレット将軍以外はいらないから今すぐ処分しろ。」
男性はちょっとそこまでお使いを頼むかのような軽い口調で指示を出すと、縛られた人たちが壁際に連れていかれる。
何人かの黒い騎士が機械のように正確な動きで一歩前に進み出ると、並ばされた人たちの前にそれぞれ立った。
「構え。」
抑揚のない機械的な声で号令が掛かる。
黒い騎士たちが的当てゲームでもするかのように弓を構えた。
体の厚い武人たちは相手を睨みつけ、体の細い文官たちは震えながらギュッと目を瞑る。
泣き虫のくせに人前では絶対に泣かないグリードの目からは涙が一粒零れた。
グリードが殺される・・・・。
助けなきゃ・・・・助けなきゃ!!
黒い騎士の間をすり抜け、グリードの元へと走る。
早くっ、もっと早く動け足っ!!
グリードにぶつかる勢いで抱き着き、体に覆いかぶさった瞬間、
「はっし・・『待て!!』」
号令に被せるように誰かが叫ぶが、急に自分の射るはずの相手が消えてしまった黒い騎士が、混乱から一瞬早く手を離してしまった。
・・・・・・・・
広間が水を打ったように静まり返る・・・・。
確かに射られたはずの矢がどこにも見当たらない。
落ちた音もしなければ、壁に刺さった様子もない。
誰も何が起きたのか分からなかった。
一番最初に異変に気づいたのは、グリードの横に並ばされていた文官だ。
悲鳴を上げると横に飛び退き、腰を抜かしたように這いずさる。
何もないところの床から急に血が広がったのだ。
驚くのも当然だろう。
かと思いきや、消えたはずのグリードが呆然とした様子で急に姿を表し、何もない一点をずっと見つめている。
「透明っ!!」
誰もが事態を飲み込めない中、一人だけ素早く動き出した人物がいた。
・・・・ロー将軍だ。
血溜まりに駆け寄ると、汚れることも構わず膝をつく。
グリードの視線の先に手を伸ばしたかと思うと、ロー将軍まで消えてしまう。
突然消えたロー将軍にリンゼンの黒い騎士たちは困惑した様にざわついた。
誰も何が起きているのか分からない。
グリードだけは瞬き一つしないまま一点を見つめ、茫然とただひたすら涙を流していた・・・・・・・・。
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