透明少女と檻の中

さねうずる

文字の大きさ
上 下
12 / 19

12 私は何が起こってるのか分かりません。

しおりを挟む

黒さんを助けた後サリーの酒場まで送って行き、私はそっと森の管理人小屋まで戻ってきた。

黒さんは無事に仲間の人と合流できたし、秘密の通路があると言っていたからきっと問題なく逃げられたと思う。

少し・・・・いや、かなり寂しいけど仕方ない。
私は透明人間だし、これからもここで一人で生きていくしかないんだから。

黒さんを送って行った時に彼に抱き着いていたのは恋人なのだろうか?
美しいブルネットの女性で、黒さんとよくお似合いだった。

・・・・・・・・。

やめよう。あれからもう1週間経っている。未練がましく考えていてもしょうがない。
寂しさだって、また時間が解決してくれる。
昔もそうだったし、今回もきっと大丈夫。

そうは言っても何もやる気が起きず、ボロいベッドでゴロゴロしていたら、グリードのところへ花を届けに行く時間になった。
別に決まってるわけじゃないけど、何となくいつもお昼過ぎのこの時間に行っている。

そろそろ準備するか・・・・。


着すぎてボロボロの継ぎはぎだらけのワンピースのポケットにココ花を突っ込む。
鞄をあげちゃったから不便だ。また運良くゴミで捨てられてるといいんだけど。
あの鞄は我ながらいい拾い物だったと思う。

宮殿に着くと、みんないつもより忙しなくしていた。
最近は街もそうだ。
どこかどんよりした空気が流れていて王都から続々と人も減っていってる。
肉屋のおばさんが「リンゼンの黒い悪魔が復讐に来る」って話してるのを聞いた。


逆に宮殿には人がいっぱいだ。
武器を持った騎士の人たちがたくさんいて、グリードの部屋に行くのも一苦労。
たまに部屋の中から怒号も聞こえるし、ピリピリと緊張感が漂っている。

何があるんだろう?
人目を盗んで厨房のゴミ箱を漁りながら、他人事のようにそう思っていた。


顕著(けんちょ)に状況が変化したのは2週間ほど経ってからだ。
森で食べ物を採っていると、街の方がやけに騒がしいことに気付く。
そこら中から叫び声が聞こえ、森に駆け込んでくる人までいた。
普段なら街の人が危険なこの森に足を踏み入れることはないのに。

何かあったかな?

興味本位で街の方へと足を運ぶと、黒い鎧を着た人達が王宮の方角へと行軍していく。
それにしてもすごい数だ。
台に乗った鎧の人が拡声器を使って声を張り上げていた。
 
「セイラ市民に告ぐ。大人しく投降すれば我々が危害を加えることは一切ない。直ちに王都中央の広場に会同せよ。もう一度言う、――――――」

中央広場に行くと、みんなが一ヶ所に集まり、身を寄せ合っていた。
その周りを黒い鎧の騎士が囲んでいる。

「あっ!!」

誰かが大声で遠くを指差す。
一斉にみんながそちらを見ると、途端にそこら中から悲鳴が上がった。

私も弾かれるようにそちらを見ると、宮殿のほうから煙が上がっているのに気付く。

あっ、グリード!!!

この時間はいつも仕事でグリードも宮殿にいるはず。
私は宮殿に向かって一目散に駆け出した。
何が起こってるかよく分からないけど、グリードの無事だけは確かめたい。
私の唯一の家族だから。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...