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12 私は何が起こってるのか分かりません。
しおりを挟む黒さんを助けた後サリーの酒場まで送って行き、私はそっと森の管理人小屋まで戻ってきた。
黒さんは無事に仲間の人と合流できたし、秘密の通路があると言っていたからきっと問題なく逃げられたと思う。
少し・・・・いや、かなり寂しいけど仕方ない。
私は透明人間だし、これからもここで一人で生きていくしかないんだから。
黒さんを送って行った時に彼に抱き着いていたのは恋人なのだろうか?
美しいブルネットの女性で、黒さんとよくお似合いだった。
・・・・・・・・。
やめよう。あれからもう1週間経っている。未練がましく考えていてもしょうがない。
寂しさだって、また時間が解決してくれる。
昔もそうだったし、今回もきっと大丈夫。
そうは言っても何もやる気が起きず、ボロいベッドでゴロゴロしていたら、グリードのところへ花を届けに行く時間になった。
別に決まってるわけじゃないけど、何となくいつもお昼過ぎのこの時間に行っている。
そろそろ準備するか・・・・。
着すぎてボロボロの継ぎはぎだらけのワンピースのポケットにココ花を突っ込む。
鞄をあげちゃったから不便だ。また運良くゴミで捨てられてるといいんだけど。
あの鞄は我ながらいい拾い物だったと思う。
宮殿に着くと、みんないつもより忙しなくしていた。
最近は街もそうだ。
どこかどんよりした空気が流れていて王都から続々と人も減っていってる。
肉屋のおばさんが「リンゼンの黒い悪魔が復讐に来る」って話してるのを聞いた。
逆に宮殿には人がいっぱいだ。
武器を持った騎士の人たちがたくさんいて、グリードの部屋に行くのも一苦労。
たまに部屋の中から怒号も聞こえるし、ピリピリと緊張感が漂っている。
何があるんだろう?
人目を盗んで厨房のゴミ箱を漁りながら、他人事のようにそう思っていた。
顕著(けんちょ)に状況が変化したのは2週間ほど経ってからだ。
森で食べ物を採っていると、街の方がやけに騒がしいことに気付く。
そこら中から叫び声が聞こえ、森に駆け込んでくる人までいた。
普段なら街の人が危険なこの森に足を踏み入れることはないのに。
何かあったかな?
興味本位で街の方へと足を運ぶと、黒い鎧を着た人達が王宮の方角へと行軍していく。
それにしてもすごい数だ。
台に乗った鎧の人が拡声器を使って声を張り上げていた。
「セイラ市民に告ぐ。大人しく投降すれば我々が危害を加えることは一切ない。直ちに王都中央の広場に会同せよ。もう一度言う、――――――」
中央広場に行くと、みんなが一ヶ所に集まり、身を寄せ合っていた。
その周りを黒い鎧の騎士が囲んでいる。
「あっ!!」
誰かが大声で遠くを指差す。
一斉にみんながそちらを見ると、途端にそこら中から悲鳴が上がった。
私も弾かれるようにそちらを見ると、宮殿のほうから煙が上がっているのに気付く。
あっ、グリード!!!
この時間はいつも仕事でグリードも宮殿にいるはず。
私は宮殿に向かって一目散に駆け出した。
何が起こってるかよく分からないけど、グリードの無事だけは確かめたい。
私の唯一の家族だから。
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