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終章 再会
第721話 OLリアムのとある一日
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祐介の腹の傷は、一部がくっついて一部が切れている状態となっており、施術にあたった医師がこれは一体どういうことだろうと首を傾げていたという。
一部内蔵に達していた傷もあった様だが、傷は浅く結果大事に至らなかったのだろうと診断された。
「ヒールライトをかけたらすぐに退院出来るのではないか?」
「いやさ、もう手術されちゃったから、急に治ったりしたら疑われるし」
「それもそうか」
リアムは、祐介が寝そべるベッドの脇の椅子に腰掛けていた。その祐介は、リアムの手を握って離そうとしない。
「それよりも、せっかく海に行こうと思ってたのに」
そんなことを言って口を尖らせていた。熱海旅行の件である。
「あ、ぎりぎり三日前だったからキャンセル料取られなかったけどね」
そしてそんなことを言って笑っている。リアムはその時の光景を思い出していた。まだ手術後で絶対安静だというのに、こやつは呑気にベッドから宿に電話をかけていたのだ。しかも刺されたから行けないが、次は絶対行くとか何とか笑いながら会話していた。勿論その後に看護師に怒られていたが、祐介はちっとも反省の色は見せてはいなかった。日頃人の顔色をよく窺う祐介の意外な一面を見た気がした。
「でも、無理やり早く帰るってごねちゃったから、夏休みの二日目からは一緒にいられるよ」
そう。手術から通常は一・二週間程かかると言われている入院を、なんとこの男は四日に短縮させてしまったのだ。リアムはその現場を目撃していないが、その後定期往診に訪れた医師の苦々しげな表情を見ると、相当やり込めたのだろうということは予想がついた。
あとから、看護師にこそっと苦笑いされた。「あなたも結婚するんだったら料理のひとつ位出来た方がいいんじゃないの」と。その言葉で、祐介が病院側をどう説得したのかが分かった。だが料理が一切できないのは事実であるので、リアムは「善処する」と短く答えるに留めた。その時の看護師の微妙な笑顔。あれはどういう意味だったのだろうか。
「サツキちゃんのお父さんには、ちゃんと挨拶しないとね」
祐介は終始ご機嫌だ。リアムが結婚を承諾して以来、もうずっとこうだ。そんなに嬉しいのかと唖然とすると同時に、こやつの素の愛情表現はここまではっきりしたものだったのか、と驚愕の思いを現在抱いている。
「うむ。名前も分からぬ御仁であるが、そこは何としてでも挨拶をせねばなるまい」
この身体はサツキのものである。となれば、そこは筋を通すべきであろう。
すると、祐介がにっこりと笑いながら言った。
「僕の怪我が治ったら、この件も含めてちゃんと説明するよ。大丈夫、僕に任せて。大事な一人娘の貞操と命を守った男を無下には出来ないだろうから、必ず結婚を承諾させてみせるよ!」
そして握って離さないリアムの手を引き寄せ、指を祐介の唇に当てている。大丈夫だろうか。大量出血した際、タガか何かが外れて流されてしまったのか、あれから毎日祐介がぐいぐいくる。いや、祐介は元々ぐいぐいきていたか。そうかもしれぬ。リアムは頭痛を覚えた。
「祐介、そう脅すようなことを言うでない。例え中身が私であろうと、これからは親類としてやっていく相手なのだからな、穏便に」
「だって結婚を反対されたくないもんね」
祐介はにべもない。
「リアムは何も心配しなくていいからね」
これ以上はないという程の笑顔を見せられたリアムは、ひく、と顔を引き攣らせて笑うしかなかった。
一部内蔵に達していた傷もあった様だが、傷は浅く結果大事に至らなかったのだろうと診断された。
「ヒールライトをかけたらすぐに退院出来るのではないか?」
「いやさ、もう手術されちゃったから、急に治ったりしたら疑われるし」
「それもそうか」
リアムは、祐介が寝そべるベッドの脇の椅子に腰掛けていた。その祐介は、リアムの手を握って離そうとしない。
「それよりも、せっかく海に行こうと思ってたのに」
そんなことを言って口を尖らせていた。熱海旅行の件である。
「あ、ぎりぎり三日前だったからキャンセル料取られなかったけどね」
そしてそんなことを言って笑っている。リアムはその時の光景を思い出していた。まだ手術後で絶対安静だというのに、こやつは呑気にベッドから宿に電話をかけていたのだ。しかも刺されたから行けないが、次は絶対行くとか何とか笑いながら会話していた。勿論その後に看護師に怒られていたが、祐介はちっとも反省の色は見せてはいなかった。日頃人の顔色をよく窺う祐介の意外な一面を見た気がした。
「でも、無理やり早く帰るってごねちゃったから、夏休みの二日目からは一緒にいられるよ」
そう。手術から通常は一・二週間程かかると言われている入院を、なんとこの男は四日に短縮させてしまったのだ。リアムはその現場を目撃していないが、その後定期往診に訪れた医師の苦々しげな表情を見ると、相当やり込めたのだろうということは予想がついた。
あとから、看護師にこそっと苦笑いされた。「あなたも結婚するんだったら料理のひとつ位出来た方がいいんじゃないの」と。その言葉で、祐介が病院側をどう説得したのかが分かった。だが料理が一切できないのは事実であるので、リアムは「善処する」と短く答えるに留めた。その時の看護師の微妙な笑顔。あれはどういう意味だったのだろうか。
「サツキちゃんのお父さんには、ちゃんと挨拶しないとね」
祐介は終始ご機嫌だ。リアムが結婚を承諾して以来、もうずっとこうだ。そんなに嬉しいのかと唖然とすると同時に、こやつの素の愛情表現はここまではっきりしたものだったのか、と驚愕の思いを現在抱いている。
「うむ。名前も分からぬ御仁であるが、そこは何としてでも挨拶をせねばなるまい」
この身体はサツキのものである。となれば、そこは筋を通すべきであろう。
すると、祐介がにっこりと笑いながら言った。
「僕の怪我が治ったら、この件も含めてちゃんと説明するよ。大丈夫、僕に任せて。大事な一人娘の貞操と命を守った男を無下には出来ないだろうから、必ず結婚を承諾させてみせるよ!」
そして握って離さないリアムの手を引き寄せ、指を祐介の唇に当てている。大丈夫だろうか。大量出血した際、タガか何かが外れて流されてしまったのか、あれから毎日祐介がぐいぐいくる。いや、祐介は元々ぐいぐいきていたか。そうかもしれぬ。リアムは頭痛を覚えた。
「祐介、そう脅すようなことを言うでない。例え中身が私であろうと、これからは親類としてやっていく相手なのだからな、穏便に」
「だって結婚を反対されたくないもんね」
祐介はにべもない。
「リアムは何も心配しなくていいからね」
これ以上はないという程の笑顔を見せられたリアムは、ひく、と顔を引き攣らせて笑うしかなかった。
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