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第四章 アルティメット編開始

第720話 OLサツキのアルティメット編・譲れない想い

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 ユラが、サツキのことを愛していると言った。

 本当だろうか。どうしてだろう、まだどうしても自信が持てなくて信じ切れない自分がいた。

 ユラが、サツキを抱き寄せたまま愛おしそうにサツキの髪を耳にかける。その視線は熱っぽく、そうだ、この人はここまでわざわざサツキを追いかけてきたのだ、とようやく思い出した。

 サツキは何も言わないで一人で出て行ってしまったのに。完全な裏切り行為なのに、なのにこうして必死に追いかけてきてくれてサツキを助けてくれて、しかも愛しているとまで言ってくれて、サツキは一体ユラに何を与えてあげられているのだろうか。

 サツキの涙を親指で拭いながら、ユラが呆れた様に笑った。

「また変なこと考えてんな」
「だ、だって私、ユラに何もしてあげられなくて、なのにユラは私に与えてくれてばっかりで……!」
「は? 何言ってんだよ」

 ユラがはあ、と溜息をついた。また呆れさせてしまったらしい。ユラはサツキの腰を支えると、身体をピッタリとくっつけてきた。隙間は一切ない。

「サツキは俺のことが大好きだろ? それに俺のことを心底信頼してくれてるじゃねえか。お前な、ソウル・アイズになってから俺がどれだけそれを欲したかを分かってねえな」
「え?」

 よく意味が分からない。そしてユラの手がお尻へとどんどん伸びていく。ええと、ユラさん、ここは外ですが。

「お前の素直なところが、心が真っ直ぐなところが、あとお前の俺だけに見せる笑顔が俺は堪んなく好きなんだよ」
「ユラ……」
「だからさ、もう俺から離れていこうとするなよ。お前がいないと分かると、すっごい苦しくなるんだよ」
「ほ、本当……?」

 ユラはワンピースの裾をどんどんたくし上げている。ちょっと待って。待て待て待て。

「本当だよ。嘘言ってどうするんだよ。なあ、どうしたらもう逃げないでいてくれるか?」

 ユラの手が、とうとうサツキの背中に直に触れた。やばい、この人本気だ。サツキは焦った。

 でも、これだけは言わないと。サツキの中でずっと喉に引っかかった魚の骨の様になっていたことを。

「り、リアムにどうしても確認したいの!」
「リアムに?」

 サツキは身を捩りながら必死でうんうんと頷いた。

「いいですかって! リアムにこの身体をもらっていいですかって!」

 すると、ユラがあっさりと頷いた。

「分かった。それでカントに向かってたんだな。じゃあ俺も行く」

 そう言いながら身体をまさぐるのはやめてほしい。

「いやっユラは危険だから!」
「別にお前がメタモラを唱えてくれりゃあ済む話だろ」
「――あ」

 その手があったか。サツキが思わず口を開けると、にやついたユラの顔が近付いてきて口を塞いだ。いや、まだ話をしている最中だから。暫くして顔を離すと、ユラが言った。

「俺もリアムに謝らないとかなって思ってたから、丁度いい」
「え? 謝る?」

 一体、何を謝るのだろうか。

 すると、ユラが今度こそ心底楽しそうな笑顔になって、のたまった。

「お前の許可なくお前の身体を堪能させてもらったぜと謝るつもりだ」
「は?」

 よく分からない。え?

「つまり、次に男の姿に戻ったら、それも俺がいただくって意味だ」
「え? え?」

 くす、とユラが笑うと、サツキを横抱きにして地面へと寝かせ、自分は上にまたがった。

「サツキは全部俺のものだからな、例外はねえ」
「えっ!? ええええええ!!」

 草原にサツキの声が響き渡ったが、勿論周りには誰もいない。

「楽しみにしてろよ」

 ユラはそう言うと、サツキの胸に顔をうずめた。

 ユラのモットーは、追いかけて追い詰めて逃さないようにすること。サツキは、自分が完全にユラに捕らえられたことに気が付いた。

 そして、自分はもしかしたら決断を早まったのではないか、と思い始めていたが、時はすでに遅かった。
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