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第四章 アルティメット編開始

第717話 魔術師リアムのアルティメット編・祐介の場合その2

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 これは、もしかしたらリアムの中身が男だったからかもしれない。

 女らしさなど皆無なのに、これまで興味などちっともなかった野原サツキの身体に入っているのに、祐介はリアムを振り向かせたくて堪らなくなった。

 だけどリアムはやたらと自分は男だと拘っていたから、リアムのその抵抗感をなくす為にあくまで女性として接した。中身が男なんて関係ないと分からせたくて。だから自分のことを好きになっていいのだと、分かってもらいたくて。

 だからリアムの名も呼ばなかった。リアムは、男の時の姿を連想させる名前だ。男が男を好きになることは、リアムにとって不名誉なことだと思ったからだ。だがこうなったらもう意地だ、好きと言わせるまでは絶対に呼ぶものか。そう思っていたが、時折無償にその名を呼びたくなり、寝ている時を狙ってその名を呼んだ。

 リアムの名を呼ぶと、祐介に巻き付いた鎖で振り回して欲しい、そういう想いが祐介の心を占めた。

 この世界に縛り付けられているのは祐介の方だ。祐介はこの世界に縛られ、そしてリアムにも絡め取られどこにも逃げられない。

 だから、リアムが警戒して逃げない様、ひたすら優しく慈しむ様に接した。人畜無害を装って。少しでも捕まえようとすると、途端にこの手の中から逃げてしまう気がしたから。そうして祐介の元から離れたくても離れられないように絡め取って、それでもすぐに飛んで行ってしまいそうなリアムを絶対に逃さないようにしなければ、一度籠の外へ出たリアムはもう戻ってはこない。実際、こうして逃げようとしたのだから、祐介の見立ては間違っていなかったことが証明された。

 リアムを失う位なら、一生このいい人という皮を被ったまま生きていこう。そう決意した。祐介の恋路を邪魔する奴らの前に出ると、時折醜い本性が表に出てしまう時もあったが。

 リアムがいなくなったら、もう二度とこんな人には出会えない、それだけは分かっていた。リアムがいなくなったら、あとは嘘で塗り固められた空っぽの祐介だけが残る。一度光で満たされた中身は、もう光なしには生きられないだろう。そしてそれは絶対に嫌だから。

 だから祐介は一生嘘つきのままでいい。ただ一つ、そこに真実があるから。

「リアム、愛してる」

 そして、君の前でだけは、忠実でありたい。

 祐介はリアムを真っ直ぐ見て、言った。祐介が愛して止まない祐介の魔術士を。

「リアム、僕と結婚して下さい」

 そうしたら、もう絶対に逃さない。
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