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第四章 アルティメット編開始
第711話 魔術師リアムのアルティメット編・プロジェクト解散飲み会の後の涙
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祐介とナイフを持った羽田が揉み合っている中、リアムは頭を殴られた所為か酒の所為かは分からないが、よたつく身体で必死に祐介の背後に回った。
「くっ……!」
「余計な時に来やがって!!」
「なんでこんなことするんだよ!」
祐介が、歯を食いしばりながら羽田に向かって叫んだ。
「俺はもうどうだっていいんだ! 全部終わっちまった! でもどうしてもこいつのことだけは許せねえんだよ……!」
羽田の血走った目が、リアムを捉える。
「弱っちかった癖に急に偉そうに説教しやがってよ! だからそいつを泣かせてやってからじゃねえと、俺は次に進めねえんだよ!」
「どんだけ……どんだけ勝手なんだよ!」
上背のある祐介が、上からぐぐぐっと全身を使ってナイフを持つ腕を捻ろうとするが、羽田はそんな祐介の足をゲシゲシ蹴って抵抗する。
祐介が離れてくれれば、フルミネを唱えられる。リアムは、人差し指を羽田に向けてその機会が訪れるのをまだかまだかと待った。すると、羽田の蹴りが祐介のスネに当たり、祐介の身体が一瞬ガクン! と揺れた。
「祐介!」
「うぜえんだよ、山岸!」
羽田はそう叫ぶと、ナイフを持った腕を振り払い、祐介に飛びかかった。
「あああああっ!!」
「ゆ、祐介!?」
「ははっははははっ! ざまあみろ!」
何と、羽田が持っていたナイフが祐介の腹に刺さってしまっているではないか! 祐介は痛そうに顔を歪め、ナイフの刺さった腹を支えている。
リアムの頭が、真っ白になった。祐介が、祐介が死んでしまう。
「ゆ……祐介えええっ!!」
「に、逃げて……!」
「何を言っているのだ! 出来るか!」
地面に転がって呻く祐介。急いで助けなければならない。こんな時までリアムの心配をしてどうするのだ! リアムは泣きそうになったが、奥歯をぐっと噛み締めて耐えた。今は泣いている場合ではない!
リアムはこちらにくるりと向き直って狂人の様な笑みを浮かべている羽田に向かって、人差し指をピンと向け、全集中して唱えた。
「フルミネ!!」
「ぐあっ!!」
バチッ! と電気音がしたかと思うと、羽田がドサッと地面に膝を着いた。だが、それでも立ち上がろうとしている。これでは駄目だ、効き目が足りんのだ。
リアムは羽田の元に駆け寄ると、羽田の頭に手を置き唱えた。
「スネイル!!」
「うえぇっ!?」
それまでしっかりと形のあった羽田の輪郭が、でろりとスライムの様に歪み、羽田の皮膚を被った物体がその場にべしょっと潰れた。
「死にはせん! いずれ戻ろう!」
それがどの位かは分からんが。リアムはぶにょぶにょになった羽田の身体を蹴ってベンチの下に転がすと、急ぎ地面に倒れている祐介の元へと走り寄った。
「祐介!」
「う……ぶ、無事……?」
祐介の顔面は真っ青になっており、痛いのだろう、脂汗が浮いている。とうとうリアムの瞳から、涙が溢れてきてしまった。
「私は大丈夫だ! 羽田さんは今は動けなくなっている!」
リアムが必死でそう言うと、祐介が手を伸ばして笑った。
「よ、よかった……」
その手は、血まみれになっていた。
「祐介! 傷を見せろ!」
倒れた時の衝撃でだろうか、ナイフは抜け落ち近くに転がっている。祐介が押さえている腹は、白いシャツが真っ赤に染まっていた。リアムがシャツをたくし上げると、腹の傷からどくどくと血が溢れ続けている。
「祐介、今……!」
祐介を見ると、静かに目を閉じようとしているところだった。
「くっ……!」
「余計な時に来やがって!!」
「なんでこんなことするんだよ!」
祐介が、歯を食いしばりながら羽田に向かって叫んだ。
「俺はもうどうだっていいんだ! 全部終わっちまった! でもどうしてもこいつのことだけは許せねえんだよ……!」
羽田の血走った目が、リアムを捉える。
「弱っちかった癖に急に偉そうに説教しやがってよ! だからそいつを泣かせてやってからじゃねえと、俺は次に進めねえんだよ!」
「どんだけ……どんだけ勝手なんだよ!」
上背のある祐介が、上からぐぐぐっと全身を使ってナイフを持つ腕を捻ろうとするが、羽田はそんな祐介の足をゲシゲシ蹴って抵抗する。
祐介が離れてくれれば、フルミネを唱えられる。リアムは、人差し指を羽田に向けてその機会が訪れるのをまだかまだかと待った。すると、羽田の蹴りが祐介のスネに当たり、祐介の身体が一瞬ガクン! と揺れた。
「祐介!」
「うぜえんだよ、山岸!」
羽田はそう叫ぶと、ナイフを持った腕を振り払い、祐介に飛びかかった。
「あああああっ!!」
「ゆ、祐介!?」
「ははっははははっ! ざまあみろ!」
何と、羽田が持っていたナイフが祐介の腹に刺さってしまっているではないか! 祐介は痛そうに顔を歪め、ナイフの刺さった腹を支えている。
リアムの頭が、真っ白になった。祐介が、祐介が死んでしまう。
「ゆ……祐介えええっ!!」
「に、逃げて……!」
「何を言っているのだ! 出来るか!」
地面に転がって呻く祐介。急いで助けなければならない。こんな時までリアムの心配をしてどうするのだ! リアムは泣きそうになったが、奥歯をぐっと噛み締めて耐えた。今は泣いている場合ではない!
リアムはこちらにくるりと向き直って狂人の様な笑みを浮かべている羽田に向かって、人差し指をピンと向け、全集中して唱えた。
「フルミネ!!」
「ぐあっ!!」
バチッ! と電気音がしたかと思うと、羽田がドサッと地面に膝を着いた。だが、それでも立ち上がろうとしている。これでは駄目だ、効き目が足りんのだ。
リアムは羽田の元に駆け寄ると、羽田の頭に手を置き唱えた。
「スネイル!!」
「うえぇっ!?」
それまでしっかりと形のあった羽田の輪郭が、でろりとスライムの様に歪み、羽田の皮膚を被った物体がその場にべしょっと潰れた。
「死にはせん! いずれ戻ろう!」
それがどの位かは分からんが。リアムはぶにょぶにょになった羽田の身体を蹴ってベンチの下に転がすと、急ぎ地面に倒れている祐介の元へと走り寄った。
「祐介!」
「う……ぶ、無事……?」
祐介の顔面は真っ青になっており、痛いのだろう、脂汗が浮いている。とうとうリアムの瞳から、涙が溢れてきてしまった。
「私は大丈夫だ! 羽田さんは今は動けなくなっている!」
リアムが必死でそう言うと、祐介が手を伸ばして笑った。
「よ、よかった……」
その手は、血まみれになっていた。
「祐介! 傷を見せろ!」
倒れた時の衝撃でだろうか、ナイフは抜け落ち近くに転がっている。祐介が押さえている腹は、白いシャツが真っ赤に染まっていた。リアムがシャツをたくし上げると、腹の傷からどくどくと血が溢れ続けている。
「祐介、今……!」
祐介を見ると、静かに目を閉じようとしているところだった。
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