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第四章 アルティメット編開始

第702話 OLサツキのアルティメット編・バルバイトのギルドの価格交渉

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 ジュリアンとの価格交渉は、白熱したものとなった。

 サツキは、自分の中にこんなパッションが潜んでいたなどとは思わなかった。

 少しでも価格を釣り上げようと、恐らく一般的には二束三文であろうグッズを付けるなどとどこかの世界のテレビショッピングの様なことを次々に提案してくるジュリアン。その用途が分からないものに関しては確認をせざるを得ず、するとそれが興味があるものだと思うのか一件一件交渉が始まるを繰り返した結果。

「ふう、なかなかやるなリアム……!」
「ジュリアンも、さすがギルドマスターなだけあるね……!」

 二人は固い握手を交わした。

 サツキが購入したのは、カントの街までの行き方の情報、屋外使用可能な簡易ベッド、携帯食料セットにヒールライト効果のある魔法陣だ。そこに特別サービスだとか持ってけ泥棒などと言われながら何だかんだ付けられ、鞄の中はほぼ一杯だ。

「じゃあお金は引き落としで」
「おう、ここにサインくれ」

 リアムの名は、リアム・カッセ。ユラが前に書き方も教えてくれた。カッセの名っていいよな、と羨ましそうにしていたことがあった。マグノリアと同じ名字になりたいと思う程のマグノリアファンがいると知れば、マグノリアも草葉の陰からさぞや喜ぶことだろう。

 サインを済ますと、サツキは鞄を背負い直して改めてジュリアンにお礼を言うついでに釘も刺した。

「ありがとうジュリアン。記憶があやふやだったから、凄く助かったよ。でも約束は守ってね」

 ジュリアンが軽く手を上げてにかっと笑う。

「おう、任せろ! ちゃんと金貰ってんだ、約束はたがえないよ!」
「じゃあ、行ってくる!」
「あ、待て待て」

 ジュリアンがサツキを引き留めた。

「フードは深く被っていけ。街の外は危ねえ奴らもいるからな、女の姿は狙われ易い」
「うん、分かった。夜になれば男に戻るから、それまでは隠れる様にして行く」
「おう。男が女になって男に襲われるとか、笑えねえからなあ」

 ガッハッハ、とジュリアンが笑って見送ってくれたが、その声を背中に聞いていたサツキは心の中で「昨夜男が女になって男と寝ました」と報告してみた。口には出せないが、考えただけで複雑な状況だ。

 それにしても、よくユラはそれでいいと思ったものだ、とギルドのドアを潜りながらサツキは考える。外は段々と赤みを帯びてきていた。思ったよりもギルドで時間を取られてしまった。

 陽が落ちると、外へ続く門が閉じられてしまうと聞いた。

 夜間の外の移動は正直怖かったが、昼まで寝ていたので、今日は夜通し起きて歩いておけばきっと大丈夫だろう。

 聞いたところによると、カントまでは徒歩で三日程。太陽の沈む方向へ進み続けると、右手に広大な森が現れるので、その森に沿って真っ直ぐ進めばいいらしい。

 夜間はモンスターも出現するらしいので、休憩する時は森の木陰で木に紛れて休め、とジュリアンが教えてくれた。

 きっと、なんとかなる。サツキはぎゅっと唇を噛みしめると、バルバイトの外へと続く道へと歩を進めたのだった。
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