705 / 731
第四章 アルティメット編開始
第702話 OLサツキのアルティメット編・バルバイトのギルドの価格交渉
しおりを挟む
ジュリアンとの価格交渉は、白熱したものとなった。
サツキは、自分の中にこんなパッションが潜んでいたなどとは思わなかった。
少しでも価格を釣り上げようと、恐らく一般的には二束三文であろうグッズを付けるなどとどこかの世界のテレビショッピングの様なことを次々に提案してくるジュリアン。その用途が分からないものに関しては確認をせざるを得ず、するとそれが興味があるものだと思うのか一件一件交渉が始まるを繰り返した結果。
「ふう、なかなかやるなリアム……!」
「ジュリアンも、さすがギルドマスターなだけあるね……!」
二人は固い握手を交わした。
サツキが購入したのは、カントの街までの行き方の情報、屋外使用可能な簡易ベッド、携帯食料セットにヒールライト効果のある魔法陣だ。そこに特別サービスだとか持ってけ泥棒などと言われながら何だかんだ付けられ、鞄の中はほぼ一杯だ。
「じゃあお金は引き落としで」
「おう、ここにサインくれ」
リアムの名は、リアム・カッセ。ユラが前に書き方も教えてくれた。カッセの名っていいよな、と羨ましそうにしていたことがあった。マグノリアと同じ名字になりたいと思う程のマグノリアファンがいると知れば、マグノリアも草葉の陰からさぞや喜ぶことだろう。
サインを済ますと、サツキは鞄を背負い直して改めてジュリアンにお礼を言うついでに釘も刺した。
「ありがとうジュリアン。記憶があやふやだったから、凄く助かったよ。でも約束は守ってね」
ジュリアンが軽く手を上げてにかっと笑う。
「おう、任せろ! ちゃんと金貰ってんだ、約束は違えないよ!」
「じゃあ、行ってくる!」
「あ、待て待て」
ジュリアンがサツキを引き留めた。
「フードは深く被っていけ。街の外は危ねえ奴らもいるからな、女の姿は狙われ易い」
「うん、分かった。夜になれば男に戻るから、それまでは隠れる様にして行く」
「おう。男が女になって男に襲われるとか、笑えねえからなあ」
ガッハッハ、とジュリアンが笑って見送ってくれたが、その声を背中に聞いていたサツキは心の中で「昨夜男が女になって男と寝ました」と報告してみた。口には出せないが、考えただけで複雑な状況だ。
それにしても、よくユラはそれでいいと思ったものだ、とギルドのドアを潜りながらサツキは考える。外は段々と赤みを帯びてきていた。思ったよりもギルドで時間を取られてしまった。
陽が落ちると、外へ続く門が閉じられてしまうと聞いた。
夜間の外の移動は正直怖かったが、昼まで寝ていたので、今日は夜通し起きて歩いておけばきっと大丈夫だろう。
聞いたところによると、カントまでは徒歩で三日程。太陽の沈む方向へ進み続けると、右手に広大な森が現れるので、その森に沿って真っ直ぐ進めばいいらしい。
夜間はモンスターも出現するらしいので、休憩する時は森の木陰で木に紛れて休め、とジュリアンが教えてくれた。
きっと、なんとかなる。サツキはぎゅっと唇を噛みしめると、バルバイトの外へと続く道へと歩を進めたのだった。
サツキは、自分の中にこんなパッションが潜んでいたなどとは思わなかった。
少しでも価格を釣り上げようと、恐らく一般的には二束三文であろうグッズを付けるなどとどこかの世界のテレビショッピングの様なことを次々に提案してくるジュリアン。その用途が分からないものに関しては確認をせざるを得ず、するとそれが興味があるものだと思うのか一件一件交渉が始まるを繰り返した結果。
「ふう、なかなかやるなリアム……!」
「ジュリアンも、さすがギルドマスターなだけあるね……!」
二人は固い握手を交わした。
サツキが購入したのは、カントの街までの行き方の情報、屋外使用可能な簡易ベッド、携帯食料セットにヒールライト効果のある魔法陣だ。そこに特別サービスだとか持ってけ泥棒などと言われながら何だかんだ付けられ、鞄の中はほぼ一杯だ。
「じゃあお金は引き落としで」
「おう、ここにサインくれ」
リアムの名は、リアム・カッセ。ユラが前に書き方も教えてくれた。カッセの名っていいよな、と羨ましそうにしていたことがあった。マグノリアと同じ名字になりたいと思う程のマグノリアファンがいると知れば、マグノリアも草葉の陰からさぞや喜ぶことだろう。
サインを済ますと、サツキは鞄を背負い直して改めてジュリアンにお礼を言うついでに釘も刺した。
「ありがとうジュリアン。記憶があやふやだったから、凄く助かったよ。でも約束は守ってね」
ジュリアンが軽く手を上げてにかっと笑う。
「おう、任せろ! ちゃんと金貰ってんだ、約束は違えないよ!」
「じゃあ、行ってくる!」
「あ、待て待て」
ジュリアンがサツキを引き留めた。
「フードは深く被っていけ。街の外は危ねえ奴らもいるからな、女の姿は狙われ易い」
「うん、分かった。夜になれば男に戻るから、それまでは隠れる様にして行く」
「おう。男が女になって男に襲われるとか、笑えねえからなあ」
ガッハッハ、とジュリアンが笑って見送ってくれたが、その声を背中に聞いていたサツキは心の中で「昨夜男が女になって男と寝ました」と報告してみた。口には出せないが、考えただけで複雑な状況だ。
それにしても、よくユラはそれでいいと思ったものだ、とギルドのドアを潜りながらサツキは考える。外は段々と赤みを帯びてきていた。思ったよりもギルドで時間を取られてしまった。
陽が落ちると、外へ続く門が閉じられてしまうと聞いた。
夜間の外の移動は正直怖かったが、昼まで寝ていたので、今日は夜通し起きて歩いておけばきっと大丈夫だろう。
聞いたところによると、カントまでは徒歩で三日程。太陽の沈む方向へ進み続けると、右手に広大な森が現れるので、その森に沿って真っ直ぐ進めばいいらしい。
夜間はモンスターも出現するらしいので、休憩する時は森の木陰で木に紛れて休め、とジュリアンが教えてくれた。
きっと、なんとかなる。サツキはぎゅっと唇を噛みしめると、バルバイトの外へと続く道へと歩を進めたのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる