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第四章 アルティメット編開始

第694話 OLサツキのアルティメット編のマグノリア邸・サツキの決意

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 サツキは寝室にあるクローゼットから、いくつか服を選びだした。男物と女物両方だ。

 ユラ達の話では、もう今日あたりからダブルドラゴンスレイヤーとなったウルスラのイケメンパーティーの話は知れ渡っている可能性がある。すると、一回目はへっぽこと判断されたイケメン勢でも、今回はさすがに二回目ということで一気に周りの熱も上がるかもしれない。一回目であの騒ぎだったから、姿を見せただけで囲まれる可能性は高かった。

 となると、あまり顔の割れていない女のサツキの姿でここを出た方がいいに違いない。

 でも、旅をするとなると女の姿では少々心許ない。だから、バルバイトの街では情報集めは女で、外に出たら男の姿でいこうと考えた。

「サツキ、何してるの?」

 ラムがサツキの後を付いてきて、後ろから覗き込んできた。

「どこか行くの? ラムも行く」

 そう言って、にっこりと笑った。その屈託のない笑顔を見て、サツキの胸は鷲掴みにされる。しゃがみ込み、ラムをぎゅっと抱き寄せた。ラムはうふふ、と嬉しそうに笑うと、サツキの首にぎゅっとしがみついた。

「ラムちゃん、お願いがあるの」
「なあに? ラム、サツキのお願いなら聞く」

 サツキはラムをきつく抱き締めながら、ラムの純粋な言葉に思わず笑みを零した。サツキが挫けそうになると、この子が無償の愛を注いでくれた。それがどれだけ心の支えになったか。

 出来れば離れずに傍にいてあげたい。だけど、この子は目立ち過ぎる。だから、一緒に連れて行くことは出来ない。

「私ね、ちょっと探しに行かないといけない物があるの」
「ラムも一緒に行く」

 サツキは顔を離すと、笑顔でラムに言った。

「ラムちゃんには重要なお仕事をお願いしたいの」
「なに?」
「ユラに来られると、困っちゃうの。だからユラを引き止めておいて欲しいんだ」

 ユラは優しいから、サツキが一人で出て行ったら多分探す。放っておいてくれる可能性も考えたが、碇の役割を担っているユラには、多分それは出来ないだろう。だから。

「ユラ? なんで?」

 どうしようか。でもラムはぺらっと喋ってしまいそうだから、黙っておいた方がいいとサツキは判断した。何か適当な理由をつけよう。

「ユラは変身が出来ないから」
「うん。それで?」
「私、お風呂場からこっそり外に出るから、ユラが起きて私を探し始めたら、お風呂に入ってるってユラに言って欲しいの」
「お風呂?」
「うん。長風呂を楽しんでるからって」
「うん? 分かった」

 多分、ラムにそれ以上複雑なことは頼めない。出来るのは、時間稼ぎだけ。ユラはまだまだ寝ているだろうから、この後数時間の内に情報収集を終えて街の外に出ればきっと大丈夫だろう。

「サツキ、すぐ帰ってくる?」
「頑張る」

 だけど、いつまでかかるかは分からない。カントの街がどこにあるかも分からないので、まずはカントの街への行き方から聞いて回る必要があった。ジュリアンに聞いてみようか。口止め料を払えば、きっと黙っておいてくれる気がした。

「ラムもサツキと行きたい」

 ラムの口が尖る。可愛いな、愛おしいな。サツキは心の奥底からそう思い、ラムを再度抱き締めた。

「絶対戻るから」
「うう、分かった」
「ありがとう、ラムちゃん」
「うん。サツキ好きだから」
「ふふ」

 いい子だ。思わず涙ぐみそうになったが、サツキは必死で耐えた。

 ユラとの話は、帰ってからすればいい。だから今は後回しだ。

 サツキは荷物を抱えると、一旦風呂に入るべく風呂場へと向かった。
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