697 / 731
第四章 アルティメット編開始
第694話 OLサツキのアルティメット編のマグノリア邸・サツキの決意
しおりを挟む
サツキは寝室にあるクローゼットから、いくつか服を選びだした。男物と女物両方だ。
ユラ達の話では、もう今日あたりからダブルドラゴンスレイヤーとなったウルスラのイケメンパーティーの話は知れ渡っている可能性がある。すると、一回目はへっぽこと判断されたイケメン勢でも、今回はさすがに二回目ということで一気に周りの熱も上がるかもしれない。一回目であの騒ぎだったから、姿を見せただけで囲まれる可能性は高かった。
となると、あまり顔の割れていない女のサツキの姿でここを出た方がいいに違いない。
でも、旅をするとなると女の姿では少々心許ない。だから、バルバイトの街では情報集めは女で、外に出たら男の姿でいこうと考えた。
「サツキ、何してるの?」
ラムがサツキの後を付いてきて、後ろから覗き込んできた。
「どこか行くの? ラムも行く」
そう言って、にっこりと笑った。その屈託のない笑顔を見て、サツキの胸は鷲掴みにされる。しゃがみ込み、ラムをぎゅっと抱き寄せた。ラムはうふふ、と嬉しそうに笑うと、サツキの首にぎゅっとしがみついた。
「ラムちゃん、お願いがあるの」
「なあに? ラム、サツキのお願いなら聞く」
サツキはラムをきつく抱き締めながら、ラムの純粋な言葉に思わず笑みを零した。サツキが挫けそうになると、この子が無償の愛を注いでくれた。それがどれだけ心の支えになったか。
出来れば離れずに傍にいてあげたい。だけど、この子は目立ち過ぎる。だから、一緒に連れて行くことは出来ない。
「私ね、ちょっと探しに行かないといけない物があるの」
「ラムも一緒に行く」
サツキは顔を離すと、笑顔でラムに言った。
「ラムちゃんには重要なお仕事をお願いしたいの」
「なに?」
「ユラに来られると、困っちゃうの。だからユラを引き止めておいて欲しいんだ」
ユラは優しいから、サツキが一人で出て行ったら多分探す。放っておいてくれる可能性も考えたが、碇の役割を担っているユラには、多分それは出来ないだろう。だから。
「ユラ? なんで?」
どうしようか。でもラムはぺらっと喋ってしまいそうだから、黙っておいた方がいいとサツキは判断した。何か適当な理由をつけよう。
「ユラは変身が出来ないから」
「うん。それで?」
「私、お風呂場からこっそり外に出るから、ユラが起きて私を探し始めたら、お風呂に入ってるってユラに言って欲しいの」
「お風呂?」
「うん。長風呂を楽しんでるからって」
「うん? 分かった」
多分、ラムにそれ以上複雑なことは頼めない。出来るのは、時間稼ぎだけ。ユラはまだまだ寝ているだろうから、この後数時間の内に情報収集を終えて街の外に出ればきっと大丈夫だろう。
「サツキ、すぐ帰ってくる?」
「頑張る」
だけど、いつまでかかるかは分からない。カントの街がどこにあるかも分からないので、まずはカントの街への行き方から聞いて回る必要があった。ジュリアンに聞いてみようか。口止め料を払えば、きっと黙っておいてくれる気がした。
「ラムもサツキと行きたい」
ラムの口が尖る。可愛いな、愛おしいな。サツキは心の奥底からそう思い、ラムを再度抱き締めた。
「絶対戻るから」
「うう、分かった」
「ありがとう、ラムちゃん」
「うん。サツキ好きだから」
「ふふ」
いい子だ。思わず涙ぐみそうになったが、サツキは必死で耐えた。
ユラとの話は、帰ってからすればいい。だから今は後回しだ。
サツキは荷物を抱えると、一旦風呂に入るべく風呂場へと向かった。
ユラ達の話では、もう今日あたりからダブルドラゴンスレイヤーとなったウルスラのイケメンパーティーの話は知れ渡っている可能性がある。すると、一回目はへっぽこと判断されたイケメン勢でも、今回はさすがに二回目ということで一気に周りの熱も上がるかもしれない。一回目であの騒ぎだったから、姿を見せただけで囲まれる可能性は高かった。
となると、あまり顔の割れていない女のサツキの姿でここを出た方がいいに違いない。
でも、旅をするとなると女の姿では少々心許ない。だから、バルバイトの街では情報集めは女で、外に出たら男の姿でいこうと考えた。
「サツキ、何してるの?」
ラムがサツキの後を付いてきて、後ろから覗き込んできた。
「どこか行くの? ラムも行く」
そう言って、にっこりと笑った。その屈託のない笑顔を見て、サツキの胸は鷲掴みにされる。しゃがみ込み、ラムをぎゅっと抱き寄せた。ラムはうふふ、と嬉しそうに笑うと、サツキの首にぎゅっとしがみついた。
「ラムちゃん、お願いがあるの」
「なあに? ラム、サツキのお願いなら聞く」
サツキはラムをきつく抱き締めながら、ラムの純粋な言葉に思わず笑みを零した。サツキが挫けそうになると、この子が無償の愛を注いでくれた。それがどれだけ心の支えになったか。
出来れば離れずに傍にいてあげたい。だけど、この子は目立ち過ぎる。だから、一緒に連れて行くことは出来ない。
「私ね、ちょっと探しに行かないといけない物があるの」
「ラムも一緒に行く」
サツキは顔を離すと、笑顔でラムに言った。
「ラムちゃんには重要なお仕事をお願いしたいの」
「なに?」
「ユラに来られると、困っちゃうの。だからユラを引き止めておいて欲しいんだ」
ユラは優しいから、サツキが一人で出て行ったら多分探す。放っておいてくれる可能性も考えたが、碇の役割を担っているユラには、多分それは出来ないだろう。だから。
「ユラ? なんで?」
どうしようか。でもラムはぺらっと喋ってしまいそうだから、黙っておいた方がいいとサツキは判断した。何か適当な理由をつけよう。
「ユラは変身が出来ないから」
「うん。それで?」
「私、お風呂場からこっそり外に出るから、ユラが起きて私を探し始めたら、お風呂に入ってるってユラに言って欲しいの」
「お風呂?」
「うん。長風呂を楽しんでるからって」
「うん? 分かった」
多分、ラムにそれ以上複雑なことは頼めない。出来るのは、時間稼ぎだけ。ユラはまだまだ寝ているだろうから、この後数時間の内に情報収集を終えて街の外に出ればきっと大丈夫だろう。
「サツキ、すぐ帰ってくる?」
「頑張る」
だけど、いつまでかかるかは分からない。カントの街がどこにあるかも分からないので、まずはカントの街への行き方から聞いて回る必要があった。ジュリアンに聞いてみようか。口止め料を払えば、きっと黙っておいてくれる気がした。
「ラムもサツキと行きたい」
ラムの口が尖る。可愛いな、愛おしいな。サツキは心の奥底からそう思い、ラムを再度抱き締めた。
「絶対戻るから」
「うう、分かった」
「ありがとう、ラムちゃん」
「うん。サツキ好きだから」
「ふふ」
いい子だ。思わず涙ぐみそうになったが、サツキは必死で耐えた。
ユラとの話は、帰ってからすればいい。だから今は後回しだ。
サツキは荷物を抱えると、一旦風呂に入るべく風呂場へと向かった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる