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第四章 アルティメット編開始
第692話 魔術師リアムのアルティメット編・祐介との距離の続き
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リアムは、祐介に抱き抱えられたまま帰宅した。
折角努力して動揺を見せることなく離別を宣言したというのに、この体たらく。魔術師の格がどんどんと落ちていっている気がした。
祐介がリアムを祐介宅のベッドにそっと座らせると、
「ストッキング脱いで。傷のところ、洗おう」
と言った。確かにこれは洗わねば化膿しかねない。ヒールライトで治すにしても、まずは処置は必要だろう。だが。
リアムの表情に気付いたのか、祐介は頭にぽんと手を乗せると笑って言った。
「向こうを向いてます」
「うむ、そうしてくれ」
折角今後は離れると決めたのに、いきなりストッキングの生着替えを見せる訳にもいかぬ。リアムがいかに男とはいえ、サツキの身体は女そのものである。しかもかなり出るところが出ている種類の。
祐介が後ろを向いたのを確認したリアムは、スカートをさっと捲り上げるとストッキングを一気に引き下ろした。
「……つっ」
膝の部分まで来たが、擦ってストッキングが破けて肌に張り付いてしまっており、剥がそうとしたが痛い。とりあえず反対側の軽傷の方を脱いでスカートの裾を整えてから、ベッドに腰掛けると慎重に剥がし始めた。
見ると、剥がれた皮膚にストッキングの布が縮れて巻き込まれており、固まりかけている血に埋もれてしまっている。
血はふくらはぎの半ばまで伝い落ちており、明るい場所で改めて見ると、そこそこな傷なのが分かった。
やるしかない。この程度の怪我など、これまで散々してきたのだ。
リアムは奥歯にぐっと力を込めると、ストッキングを一気に脱いだ。すると、固まりかけていた血も一緒に剥がれてしまい、血が再び滴り始めてしまった。ソファーの布につきそうになってしまい、リアムは慌てて手で堰き止めた。
「ゆ……!」
助けを呼ぼうとして、また自己嫌悪に陥りかけた。リアムはこちらの世界に来てから、何かあれば祐介祐介だ。リアムがこんなだから、だから祐介はリアムを放っておけなかったのだろう。
リアムは背中を向けて台所の方で支度を始めている祐介を盗み見て、また泣きたくなった。
祐介の名を呼ばないだけで、こんなに辛いと感じてしまうとは。
だがしかし、リアムの名を呼ばぬのは祐介も同様だ。でも、きっと祐介はリアムの名を呼ばぬところで今のリアムと同じ様な狂おしさは感じないのだろう。
リアムは、祐介を愛している。愛しているからこそ、苦しく思う。だが、祐介は。
祐介がリアムを振り返り、驚いた顔をして飛んできた。
「ちょっと! 大丈夫!?」
「問題ない」
口を突いて出るのは、素っ気ない言葉ばかりだ。
「またそんなこと言って。ほら」
そう言うと、祐介はまたひょいとリアムを抱え、風呂場に向かった。
「こ、こら! 大丈夫だと……!」
「そんな訳ないでしょ、そんな泣きそうな顔してて」
祐介が呆れた様な顔をした。そして有無を言わさずに風呂釜のヘリにリアムを触らせると、シャワーを捻って洗い出した。
「……!」
「意地っ張り」
祐介の表情は柔らかいものではあったが、でもリアムにそれ以上何も言わせない雰囲気もあった。
祐介は無言のまま血を洗い流すと、タオルでポンポンとリアムの膝を拭き、リアムの手のひらを見てそこも拭き始めた。
「ヒールライトだっけ? 唱えてよ」
血が再び滴り落ちてくる膝を見つつ、祐介が言った。
折角努力して動揺を見せることなく離別を宣言したというのに、この体たらく。魔術師の格がどんどんと落ちていっている気がした。
祐介がリアムを祐介宅のベッドにそっと座らせると、
「ストッキング脱いで。傷のところ、洗おう」
と言った。確かにこれは洗わねば化膿しかねない。ヒールライトで治すにしても、まずは処置は必要だろう。だが。
リアムの表情に気付いたのか、祐介は頭にぽんと手を乗せると笑って言った。
「向こうを向いてます」
「うむ、そうしてくれ」
折角今後は離れると決めたのに、いきなりストッキングの生着替えを見せる訳にもいかぬ。リアムがいかに男とはいえ、サツキの身体は女そのものである。しかもかなり出るところが出ている種類の。
祐介が後ろを向いたのを確認したリアムは、スカートをさっと捲り上げるとストッキングを一気に引き下ろした。
「……つっ」
膝の部分まで来たが、擦ってストッキングが破けて肌に張り付いてしまっており、剥がそうとしたが痛い。とりあえず反対側の軽傷の方を脱いでスカートの裾を整えてから、ベッドに腰掛けると慎重に剥がし始めた。
見ると、剥がれた皮膚にストッキングの布が縮れて巻き込まれており、固まりかけている血に埋もれてしまっている。
血はふくらはぎの半ばまで伝い落ちており、明るい場所で改めて見ると、そこそこな傷なのが分かった。
やるしかない。この程度の怪我など、これまで散々してきたのだ。
リアムは奥歯にぐっと力を込めると、ストッキングを一気に脱いだ。すると、固まりかけていた血も一緒に剥がれてしまい、血が再び滴り始めてしまった。ソファーの布につきそうになってしまい、リアムは慌てて手で堰き止めた。
「ゆ……!」
助けを呼ぼうとして、また自己嫌悪に陥りかけた。リアムはこちらの世界に来てから、何かあれば祐介祐介だ。リアムがこんなだから、だから祐介はリアムを放っておけなかったのだろう。
リアムは背中を向けて台所の方で支度を始めている祐介を盗み見て、また泣きたくなった。
祐介の名を呼ばないだけで、こんなに辛いと感じてしまうとは。
だがしかし、リアムの名を呼ばぬのは祐介も同様だ。でも、きっと祐介はリアムの名を呼ばぬところで今のリアムと同じ様な狂おしさは感じないのだろう。
リアムは、祐介を愛している。愛しているからこそ、苦しく思う。だが、祐介は。
祐介がリアムを振り返り、驚いた顔をして飛んできた。
「ちょっと! 大丈夫!?」
「問題ない」
口を突いて出るのは、素っ気ない言葉ばかりだ。
「またそんなこと言って。ほら」
そう言うと、祐介はまたひょいとリアムを抱え、風呂場に向かった。
「こ、こら! 大丈夫だと……!」
「そんな訳ないでしょ、そんな泣きそうな顔してて」
祐介が呆れた様な顔をした。そして有無を言わさずに風呂釜のヘリにリアムを触らせると、シャワーを捻って洗い出した。
「……!」
「意地っ張り」
祐介の表情は柔らかいものではあったが、でもリアムにそれ以上何も言わせない雰囲気もあった。
祐介は無言のまま血を洗い流すと、タオルでポンポンとリアムの膝を拭き、リアムの手のひらを見てそこも拭き始めた。
「ヒールライトだっけ? 唱えてよ」
血が再び滴り落ちてくる膝を見つつ、祐介が言った。
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